クリープハイプ歌詞考察20日め

7月になるまでクリープハイプの歌詞を1日ひと歌詞まで独自に考察していく。
本日は「鬼」を考察する。

考察条件として以下の縛りを設ける。
・歌詞以外の情報を検索しない

なお、とくに前提となるクリープハイプの情報は持っていない。苦渋100%を読んだことがある、のみである。
それでは自由にスタート。

この歌詞を読んで、これはかくれんぼに擬えて女性を待っているという話だと思った。題の「鬼」はかくれんぼの鬼なのである。鬼を君として、「俺」は見つかるのを待っている。
この歌詞の特徴として、リズミカルに単語を繰り返すことで混乱を描いたり感情を強調したりしていることが挙げられる。

歌詞を順に見ていく。最初は状況説明から始まる。

・あぁもう疲れ切って玄関開けたら
束の間の休息
津田沼の六畳間で
愛しいあの子
つまりは未来の妻
キスからのお帰りって言って
優しく微笑んでご飯にする?
お風呂にする?それともアレ?あれ?あなたは誰?ってお前馬鹿か

→語り手は、仕事から帰ってきたという設定だ。「疲れ切って」と「束の間の」「津田沼の」「六畳間」と音を掛けている。津田沼は千葉の地名。六畳間は一人暮らしか。
「あの子」が語り手の帰りを待っていたようだ。ご飯にする?お風呂にする?それともアタシ?とは、新婚のやり取りとして定番とされるフレーズである。しかし、「あれ?あなたは誰?」という部分から、そのやりとりが幻想であったと聴き手に伝えられる。「お前馬鹿か」は語り手の一人ツッコミであろうか。
語り手「俺」の独り言はカオスだ。

・俺だよ あれ、コレ誰?それならコレ、誰?俺?誰?
駄目だよ それ、コレ 駄目
それならコレ、誰?駄目?誰?

→「俺」「あれ」「これ」「それ」「駄目」の音を掛けており、その繰り返しの組み合わせでリズムが生まれている。
内容としては、前出の「あなたは誰?」に対しての「俺だよ」であるが、「あれ、コレ誰?」ということは、その場にもう一人がいるということか。「それならコレ、誰?」という状況から、「俺」と思しき人物が、二人いるのだ。「駄目だよ」は、そのもう一人のセリフか。それとも、「お前馬鹿か」と言ったがそれは「あの子」ではなく「俺」の方だという意味であり、「あの子」が幻であることに気づき慌てている様子を表しているのか。
語り手が隠れるかくれんぼが始まる。

・もういいかい もういいよ ここだよ
もうずっと ここにいるよ
もういいかい もういいよ ここだよ
もうずっと ここにいるよ
ねぇねぇ早く見つけてよ 
ねぇねぇ早く捕まえて
ねぇねぇずっと離さないで
ねぇ手の鳴る方へ

→「もういいかい」「もういいよ」はかくれんぼの掛け声である。見つけられないように隠れるルールだが、語り手は見つかりたがっている。
聴き手は、なぜだろうと思う。

・ああもう疲れたよ疲れたよ疲れたよ
わかってないわかってないわかってない
わかってないわかってないわかってない

俺だよ あれ、コレ誰?
それならコレ、誰?俺?誰?
駄目だよ それ、コレ駄目
それならコレ、誰?駄目?誰?

→わかってない、とは「ここだよ」と言っているのに捕まえに来ないことを指しているのか。だとすれば「疲れたよ」はその鬼を待っている状況にということだろう。
鬼は、「俺」以外の人を見つけているのかもしれない。だから「駄目」なのだろうか。
「俺」はついに「君」に語りかける。

・だから触ってよ
ちゃんと君が確かめてよ
大事な所に触れた時だけにするあの顔を

覚えてる?

→触る、触れるとは、つまり鬼が隠れている人を見つけてつかまえた!することだ。「あの顔を 覚えてる?」とあることから、「君」とは「俺」の顔見知りである。「あの子」と「君」は同一人物か。
「だから」というのは、「あれ、コレ誰?」と「わかってない」「君」に向けて、ヒントを送っているのだろう。
鬼さんこちら、手のなる方へ。その掛け声が用いられるのは、かくれんぼの中でも目隠し鬼だ。
なるほど、だから目の前の人が誰かわからずに、鬼は「コレ誰?」と言っていたのだろうか。
語り手「俺」はさらにもう一度繰り返す。

・もういいかい
もういいよ ここだよ
もうずっとここにいるよ
もういいかい
もういいよ ここだよ
もうずっとここにいるよ
ねぇねぇ早く見つけてよ
ねぇねぇ早く捕まえて
ねぇねぇずっと離さないで
ねぇ手のなる方

→目隠し鬼には、音でこちらの場所を知らせる必要がある。「鬼」は、「あの子」であり、場所は、津田沼の六畳間だ。仕事帰りの語り手は、目隠し鬼をする子供の年齢ではないのに、必死に鬼に見つかろうとしている。つまりこれは比喩だ。
ここにいる「俺」の存在を知覚せよというメッセージをずっと送り続けても気がつかない「君」とのゲームのような…恋愛?やはり最初に「未来の妻」とあるからには、鬼嫁と目隠し鬼を掛けているのか。「ずっと離さないで」はプロポーズのようにも聞こえる。
最後は、「俺」は「君」(鬼)にとうとう見つかるか。

・鬼が来る
鬼が近づいてくる
見つけたって 
声がして
君の手が
優しく肩に触れる

→つまり「鬼」は「君」であったと最後の文でネタバラシされるわけだが、それでやっとゲームは終わったのだ。「優しく」というところからも、捕まった安心感が表れているようだ。

さて、この歌詞は目隠し鬼の歌詞というより、目隠し鬼に擬えたすれ違いを描いているのか。それならばこの歌詞は語り手に実際に起きたことではなく語り手の心象ということになる。

「あぁもう疲れ切って玄関開けたら〜」という始まりからは、現実感や生活感が伺えたが、次第に題である「鬼」との世界にすり替わっていく。
ダブルミーニングや比喩を用いる上で、仕事帰りの玄関と鬼ごっこという一見遠い物を「俺」と「君」の関係性というテーマを持って結び付けたことで、意外性や新たな視点を生み出している。(2359)

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