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いまおかしんじ「オレとアイツの集金旅行」

ユーロライブで、いまおかしんじ「オレとアイツの集金旅行」 脚本は羽坂学と佐藤稔との共同。

ウリ専バーのオーナーがパーティー中に突然死。マネージャーの櫻井拓也とナンバーワンのうっちぃは、ツケを取り立てるため、小旅行に出る。二人は変な客たちに翻弄され続けるが、辿り着いた先はオーナーの昔の恋人「死んじゃったらもう会えないんだよね」心に染みるロードムービーの良作。

2017年にオーピーが配給したゲイポルノで、いまおか監督はこの分野では唯一の作品。通常ゲイ映画館で上映されるフォーマットから大幅にスピンアウトした自由さを感じ、エロさはほとんど無い。SMやハッテンの場面に、そこはかとなくw面白みが感じられるw

櫻井拓也もゲイポルノの出演はこの一作品のみ。一応、ウリ専バーのマネージャーでオーナーと肉体関係も持ったという設定だが、ビジネスゲイでは?と思うほどキャラはノンケそのもの、実に等身大で自然に演技ができていて観ているこっちも幸せな気分になるw

櫻井がビジネスゲイのwノンケなのに対して、それ以外の登場人物はガッチガチのゲイである(笑)この中には、ホンモノのゲイビジネス界隈の人と、役者としてゲイを演じる人(性癖までは知らない)が混在していると思うのだが、出演者の印象を挙げて行きたい。

まず、主演の櫻井拓也。ウリ専バー「ファインボーイ」でマネージャーを任されていた彼はオーナーの死後、無責任な経理担当者(今泉浩一)に仕事を押し付けられ、店のナンバーワン(うっちぃ)とツケの取り立て、観客目線で渡り鳥のように旅を続ける人である。

櫻井とコンビを組んで、千葉県在住の3人の客からツケを取り立てに回る、うっちぃ。彼はヒゲをたくわえたオラオラ系の筋肉質ウリボーイで少しひ弱な感じがする櫻井とは好対照。彼にはミュージシャンの元恋人(るう、うっちぃと同系のガチムチオラオラ系)がいた。

冒頭でオーナー(福島光生)が急死するウリ専バー「ファインボーイ」マネージャーが櫻井拓也で、ナンバーワンボーイがうっちぃで、経理担当が今泉浩一。福島オーナーからマンションまでプレゼントされ葬儀も全て取り仕切る今泉にはうさん臭さしかない(笑)

新宿二丁目にある「ファインボーイ」の店先でカッコよく三味線を弾く路上ミュージシャンの北村貴寿。彼の実家は千葉県富津市。この富津という千葉の田舎町(←横浜の人がそういうと怒られるかなw)は複数の男と男の恋愛譚を紡ぐ、重要な場所になっていく。

櫻井&うっちぃが最初に訪れた佐倉市の病院の副院長(佐藤宏)彼は勢いよく「はいはーい」と声を出すのが特徴で、重度の脚フェチである。ツケは32マン。医師ならどうってことないだろ?な額。ついでに、うっちぃをトイレの個室に連れ込み、脚フェチプレイだw

次に成田市で会うのは市議会議員の麻木貴仁。これが抱腹絶倒で、お笑いの部分はここですよ!麻木は重度のマゾ。秘書兼緊縛師(鵺神蓮)に鞭でケツをしばかれ悶える。40万のツケはヤクザを使って踏み倒そうとするが、そのヤクザもゲイでややこしいことになるw

麻木が手配したヤクザ(二ノ宮隆太郎)は小柄な体で「オイ!オイ!」と叫びながら櫻井を延々と殴り続ける随分とコミカルなヤクザでw男色なので櫻井を緊縛し鞭で「オイ!オイ!」とシバく。でも所詮はヤクザなので金だけもらえれば、後は用は無く去って行く。

佐倉と成田という、富津と変わらないぐらい地味な街で、32万と40万、金額こそ大きいものの、病院の副院長と市会議員が登場した割には唖然とするほどちんけな話しか起きず、「ああ、どうなってしまうんだ、このお話は」と思ったところから、一気に物語が起動!

うっちぃはヤクザにボコられる櫻井を見て怖くなり、卑怯にも一人だけ逃げ出した。置いてきぼりになり、その後はSMプレイの真似事程度で事なきを得た櫻井だったが「うっちぃの奴、どこ行った?」瞬時に「富津だ!」と閃き、近くにあった自転車を拝借。

集金旅行の開始は車で、途中でガス欠、今度は櫻井の乗った自転車はパンク。ああ、困難の連続だ。その頃、うっちぃはミュージシャンのショウちゃんことるうと会っていた。うっちぃがウリ専した金でショウちゃんの生活を支え、メジャーデビューを夢見ていた。

ショウちゃんとうっちぃは結ばれる。ここだけガチムチアニキ系のド迫力FUCK(←最近のゲイポルノにはこの成分がもっと多いのです)ショウちゃんが新宿二丁目から郷里の富津に帰った理由は、うっちぃがウリ専した金で養ってもらっている自分が嫌になったのだ。

櫻井はまだうっちぃに会えぬまま、帳簿にある「富津市富津・・・」の住所を確認、ここ酒屋だったとおもんですけど。田中さんですか?に「ええ、私よ」と急にカマっぽく答えるのは田中さんを演じる青山吉良。彼のツケはたった3万円。でも思い出のこもったツケだった。

若い頃、オーナーの福島は、青山と恋人同士だった。でも、ある日青山がウリ専バーに行くと「俺、結婚する」怒って店を飛び出した青山は、この一度切り、金を払うのを忘れた。この時福島に言われた言葉「お前も結婚すれば一人前」今では結婚し息子もいる青山。

櫻井は「青山が一人前になったこと」に生意気にも祝福の握手。青山は「あんた、よく似てるなあ」てっきり福島の息子と勘違い。思いっきり抱きしめられ「違うよ!」と叫ぶ櫻井。でも、青山には息子がいた。ショウちゃん、即ちうっちぃの別れた元恋人だ。

元酒屋だったという青山の店は野菜直売所に変わっており、ガタイのいい青年が二人、働いていた。一人は青山の息子のショウちゃん、もう一人は明らかにショウちゃんとデキているナオト(Syo)ショウちゃんとナオトはイチャイチャ。結局、この店は全員がゲイw

青山が櫻井に尋ねる「で、福島は元気?」「亡くなったんです」青山は「そうかあ、死んじゃったら、もう会うこともできないよね」と寂しそうに呟く。うっちぃが店に入るとショウちゃんとナオトはラブラブ、買い物して帰るうっちぃにショウちゃんは声をかける「さようなら」

青山は福島を失い、うっちぃはショウちゃんを失った。富津に来て、二つの命が、関係性として失われた。これまで渡り鳥の鳴き声を聞きながらカモメの真似をしてパタパタ飛んでいた櫻井。うっちぃは店に戻るというが、櫻井は「もうちょっと、旅を続けたい」

櫻井は、ショウちゃんがオーナーの福島から30万円の借金をしていることを知っていた。一方、櫻井はオーナーに30万円を貸していた。櫻井は、当座の資金として30万円が必要だが、うっちぃは「ちょっと待ってね」遠くから、聞き覚えのある三味線の音が聞こえる。

新宿二丁目の路上で三味線を弾いていた北村が、富津の漁港で同じように三味線を弾いている。うっちぃを見かけると「あ、この前のイケメンの人!」したたかなうっちぃは当分、北村の実家に厄介になることにした。さて櫻井はどうしよう。彼はまだ旅を続けたい。

脚フェチど変態の佐藤副院長がいた佐倉、SM大好き変態マゾ市会議員の麻木がいた成田。福島オーナーの恋人だった青山と、彼の息子でうっちぃの元カレだったショウちゃん。二組のステキ?な出会いと別れの連続を目にした櫻井。亡きオーナーの思い出を辿り、この集金旅行をずっと続けてみたいのだ。

登場人物が多岐にわたり、個性的なキャラが多いので、一人ずつ紹介の上で物語を紹介と思ってたら、登場人物の紹介=ほとんど物語の紹介になってしまった(^^;櫻井君はうっちぃなどゲイの人による価値観や恋愛観に、翻弄というよりむしろ生きる刺激を得るのだ。

新宿二丁目の売り専バー「ファインボーイ」30周年記念パーティはオーナーの死という事件で店を飛び出し、ツケの集金旅行というロードムービー化してしまう。パーティ場面では、うっちぃのセクシーダンス、これを熱い眼差しで見つめる客の羽坂学が見どころだ。

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