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城定秀夫「デコトラギャル奈美 爆走!薔薇愛怒編」

城定秀夫「デコトラギャル奈美 爆走!薔薇愛怒編」 脚本は貝原クリス亮との共同。

吉沢明歩を主演に頂いた、人気シリーズの第三弾。過去2作の登場人物を回顧しながら、気がつけば明歩の父親(稲葉凌一)が主役をかっさらい本家トラック野郎オマージュに結局はスピンアウトしてしまう(笑)ベッタベタに泣かせるという点で王道的な秀作。

本作はヒロインのデコトラギャル吉沢明歩を始め、吉岡睦雄、松浦祐也、中村英児などレギュラー出演者は引き続き顔を揃えるが、一人だけ登場しない。いや、できなかった。制作年は2011年。ラストで走り去るデコトラを背景に、右下に「野上正義に捧ぐ」

すごく不思議な構成でw冒頭で明歩が、デコトラ野郎だった亡き父の墓参りに来て、そのまま運転席で眠ってしまい、75分間でいろいろあった過去を回想し、吉岡に起こされてΣ(゚Д゚)と夢から覚めて映画が終わる。父との思い出の感傷に浸る映画なのだ。

稲葉凌一は、荒くれもののデコトラ野郎だが、娘・明歩への愛情は人一倍、でも不器用で最後まで正直にはなれず、お人好しで連帯保証人になって明歩のために貯めた結婚資金まで無くして死んでいく。もう、稲葉の熱演はガミさんが乗り移ったようなド迫力!

前2作はいずれも母の物語だったが、今回は父の物語。またしても明歩は主役の座を張れたとは言えず、明歩の父親役の稲葉凌一が絶対主役となる。彼の役名は「虎一郎」で愛称は「寅さん」いや「虎さん」トラック野郎なのか男はつらいよなのか混同するw

ピンク映画の雰囲気が色濃く出る場面があり、鏡麗子と小林節彦がシリーズに初登場する。夫に死なれ借金を抱えたバーのママと、常連客で軽トラ野郎なので稼ぎが少ないヤモメのコバさん。二人は駆け落ちし寅さん、いや、虎さんの運命に影響を及ぼす。

非常に細かいことだが、由愛可奈が出演している。目立たないが明歩が卒業したw麗尾根(レオーネw)西高校の応援団員の一人、恐らくAVデビューする直前だったと思われ、当然ながら脱ぎは全くない。でも、熱狂的ファンなら一見の価値はあるかも。

冒頭、麗尾根西高校の卒業式で一人だけ冷めた目でジャムパンをかじっているブレザー姿の明歩(←このジャムパンが重要なネタ振り)ここに応援団たち(←全員女子なので、麗尾根西高校は女子高なのだろうw)が吉本輝海(眼鏡っ子w)をひっとらえて明歩の目の前に立たせる。

輝海は応援団の三禁、即ち、酒、たばこ、男のうちの一つ、男と付き合い、ホテルに入ってしまったのだ。制裁を加える明歩は校舎の裏に輝海を連れて行くと「てことは、セックスしたのか?」「はい」それだけ聞くと、ジャムを輝海の顔に塗りたくり血だらけのふりw

と、ここにタイミング悪く(笑)ヤリチンで長髪チャラ男の中務一友が登場。バツが悪そうに「兄貴だよ」と言い訳しホテルで痛いだけの処女喪失をした明歩は第二次反抗期の真っただ中で、稲葉はせっかく明歩のために買った「卒業おめでとう」ケーキが渡せない。

稲葉は行きつけのバーでママの鏡麗子と話しながら、ヤモメの小林節彦さんと飲む。鏡麗子は10年ほど前の世界三大痴女時代の面影はなく、すっかり落ち着いた女性に変貌。おっさん臭さが強い小林節彦とのコンビは、新東宝かエクセスの往年のピンク映画みたいだw

稲葉に珍客現る!沖縄から来た自称「沖縄の暴れん坊シーサー」吉岡睦雄だ。トラック専門誌で稲葉の取材記事を見て沖縄から弟子入りのためやって来た彼は「十九の春」といつも口ずさんでいるが、やがて師匠である稲葉の愛娘である明歩に惚れてしまう。

亜紗美は明歩にとって「他校のスケバン」ブレザーの明歩とセーラー服の亜紗美の殴り合い。元々身体能力的に亜紗美の圧勝と思うが、ここは「明歩が処女を喪ったばかりでガニ股」理由で、亜紗美がボコボコに明歩を殴る。「ほら、来いよ!」挑発する亜紗美の憎々し気な表情はすっかりお馴染みだが、やはり誰にも真似できない一級品!ここに吉岡が助太刀に入るが、逆に亜紗美にぶちのめされた。

ここで、ふと気づく。いつもはトラック野郎御用達の食堂で、松浦祐也と中村英児のバカ兄弟がいて、それをガミさんが温かく見守る。そんな風景は、もう本作では実現しなかった。舞台は鏡麗子がママをするバーに移ってしまった。もう、ガミさんはこの世にいないのだ。

明歩の父親、稲葉は娘のために結婚資金をせっせと銀行に貯金していた。荒くれもののようで実は繊細なトラさん。稲葉が異常なまでに仕事に張り切る理由、それはガンに冒され、余命いくばくもなかったからだ。血を吐いても、デコトラを転がして荷物を運ぶ。

明歩は、デコトラ命の稲葉に反発する。そのせいで、母親は夜逃げしてしまった。今は父娘の二人暮らし。ここに吉岡が稲葉の弟子として住み込む。ご飯は三合たいらげる。明歩が脱衣所で「あいつ、オバQかよ」と生着替えでおっぱいを出すと吉岡が「タオルです」吉岡はオバQじゃないよ、しずかちゃんの裸を覗く、のび太君です(笑)吉岡は稲葉のアシスタントで仕事中、トイレ(大)がしたくなり、ラブホに駆け込むと、明歩が長髪チャラ男と出て来るのを見てしまう!

吉岡は稲葉には弟子にしてもらったものの、今度は明歩への熱烈な片想いに落ちる。麗子ママのバーで愚痴ってると、松浦祐也が持ち前の絶叫キャラで「落ち込んでんじゃねーぞ!ほら、行くぞ!」ママが「ソープでも行ったのかしらね」でも、せこい松浦は夜の駐車場にカーセックスを覗きに行ったwでも、ここで吉岡は例の長髪チャラ男が亜紗美とセックスしているのを見てしまう!

明歩と亜紗美のチャラ男に対する制裁は、ヤンキーらしいむごさで、全裸で木に縛り付けた中務に対して血の海を降らせた。ここで亜紗美は退場。段々、稲葉の本家トラック野郎の桃次郎に寅さん的な人情も乗っけた、すごく魅力的なキャラがはじけ始める。

麗子ママはオバQのようにwお腹をすかせた吉岡に、小林いわく「絶品のナポリタン」を食べさせた。そして若い衆がみんな出て行った後、麗子は小林に呟く「ナポリタン、食べてかない?」そして二人は、バーの二階の部屋、布団の中で初めて結ばれた。

麗子は借金を抱え、夜逃げするつもりだったが、純情な小林は愛を告白。そして金策のために稲葉を訪れ、連帯保証人に判を押させる。そして案の定、小林は麗子と夜逃げ。お人好しの稲葉は小林、というか麗子の借金を全て背負い、明歩のために貯めた貯金を失ってしまった。

肺がんで余命いくばくもない稲葉は、必死でデコトラ野郎を続ける。でも、無理がたたって倒れてしまう。それは疲労によるものだったが、看病に来た明歩と吉岡は医者から肺がんの事実を聞き、言葉を失う。稲葉が引き受けた仕事にも穴が空いてしまった。でも、みんなが困っている瞬間、誰も乗っていないはずのデコトラの電飾がピカっと光った!

明歩は幼い頃、可愛らしく「私、お嫁さんのデコトラ野郎になるの」とデコトラのミニカーを転がしながら遊んでいた。それが脳裏にはっきりと残っている稲葉。そして今、明歩はデコトラギャルとして、荷物を届け始めた。でも、ドジな吉岡の整備不足でタイヤがパンクしてしまう!

カンカンに怒っている顧客の森羅万象。それを横で聞いていた森羅の娘が、まるで少女漫画のように朝食のジャムトーストをかじりながら家をでようとしたところで「お父さん!これは私にも関係があることなの!」麗尾根西高校応援団(由愛可奈ちゃんもいる!)の力で、スペアタイヤは無事に届いた。そして、駐車していたトラックを見て「俺の、トラックの、タイヤが、ねえー!」と絶叫する松浦www

病院のベッドで寝ている稲葉に、医師が「娘さんは、立派にトラックを乗りこなしました」幼かったころの明歩を思い出し涙する稲葉。そして、窓の外が騒がしく、覗いてみるとデコトラが停まっている。そして荷台から登場したのは、タキシードを着た吉岡にエスコートされる、純白のウェディングドレス姿の、明歩であった。

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