記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

いまおかしんじ「あいたくて あいたくて あいたくて」

横浜シネマリンで、いまおかしんじ「あいたくて あいたくて あいたくて」

タイ料理店を切盛りする未亡人(丸純子)の悩みは、亡き夫(松浦祐也)の味が再現できないこと。家具のオマケ押売りして来た気の良い男(浜田学)とメールやり取りから、心通い合う宮沢賢治「ツェねずみ」の話。過去を忘れたい男女の人生再生、感動号泣恋愛ドラマの佳品。

女優をお好みに合わせて三者三様取り揃えました。肝っ玉母さん的な丸純子さん、妖艶で自由奔放な女川上なな実ちゃん、そしてロリテイストが堪らん美少女山本愛香たん!しかも全員脱いでますからね!(←ここ強調)でも内容はヒューマンドラマです。

ヒロインの丸純子はタイ料理屋を営む未亡人で、店の家具を新調しようと注文したら親切押し売りのオマケの人形の首が取れてて「送り直します」「もう結構です」の顔を合わせずメールで喧嘩する最悪な状況から彼女は家具職人の浜田学とメル友になる。

純子は最愛の夫(松浦祐也)に死なれ、彼の親友とセックスフレンドになり結婚まで申し込まれるが、夫のことを吹っ切れない。一方、浜田の方はセックスに奔放な妻(川上なな実)について行けず離婚しヤモメ。そんな二人はメール交換し始めた。

ホンもいまおか監督自身が書いているので、一見するとエロスと繋がりにくい宮沢賢治の童話が恋愛感情を結び付けるピースとして見事にハマっており、純子の愛読する絵本版と浜田が愛読し始めた文庫版との違いごと、最後の劇的な出会いに泣ける。

お笑いコンビ「ネルソンズ」の青山フォール勝ちが、ピン芸人として(笑)なな実に振り回される新恋人のダメ男を好演!元夫だった浜田の家に転がり込み、二人して共同生活を始めるくだりにはダメ男同士の友情みたいなものを感じるいまおかワールドw

川上なな実ちゃんがエロいのはピンク映画を通じて知りすぎる程に知っている。丸純子もレジェンドピクチャーズ作品ではすっかりお馴染みの美熟女で、そう言った意味では本作での最大の発見は山本愛香たん!丸純子お母さんの一人娘役で登場だ!

愛香たんの彼氏って言うのがヘラヘラしててとんでもないダメンズで純子も毛嫌いしてたんだけど同棲を始めちゃう。で、男なら誰でも見たい、カワイイ愛香ちゃんが全裸になってアンアン抱かれる、ここヌキ所です。まさか彼女脱ぐと思わなかったしw

浜田学は若い頃の宇崎竜童のようなちょっととっぽい所もある色男で、熱帯魚を飼おうと向かった先の店主が我らが川瀬陽太!彼も20年前に奥さんを亡くしてて、浜田の純子とのメール文通を通じた恋路をフレー!フレー!とエールを送って見守ります。

と言うことで、モチーフとなっているのは宮沢賢治の童話「ツェねずみ」と「オツベルと象」の2編。純子は子供を寝かしつける時に宮沢賢治だとすぐ寝るからwという理由で絵本の内容を鮮明に記憶していて、家具のオマケの親切押し売りの家具職人浜田に警告した。

ツェねずみは金平糖が落ちていると親切情報を聞き貰い損ねると「償うてください」と愚痴て仲間外れになり、可哀想に思ったねずみ取りに良くしてもらうが恩をあだで返し最後は人間に捕らえられ「意地の悪そうなねずみだ」強烈過ぎる因果応報の話。

純子は家具のオマケで人形を送り付け、その首が取れていたら送り直すという家具職人浜田がツェねずみなのではなく、それを強制したような気持ち悪い感じが自分こそツェねずみに感じて浜田の申し出を拒否した「あんた、ツェねずみを作っちゃうよ」

浜田の身近には、実際にツェねずみの候補者がたくさんいる。中でも離婚した妻のなな実は、新恋人フォール勝ちがいるにも関わらず自宅を訪れセックスする。それを拒めない浜田はねずみ取りでなな実はツェねずみ、そんなことだろうと警告したのだ。

フォール勝ちは図々しくも元夫の浜田に「なな実とやっていく自信がない」と泣きつき泥酔して浜田の部屋に厄介になるが、淡々と励ます浜田。今度は浜田がねずみ取りでフォール勝ちがツェねずみではないか(笑)浜田はとにかくお人よしすぎるのだ。

浜田は工業高校を出て就職して親方の下で修業して一本立ちした家具職人。まともに本なんか読んだことが無かった。それが純子から「頼むからオマケの代わりなんて弁償しないでよ」とメールをもらい、お勧めの宮沢賢治「オツベルと象」の読書へと繋がる。

腹黒い地主オツベルに飼われ、理不尽な重労働を課される白象。月の助言で象の仲間に手紙を書き、押し寄せた象の大群でオツベルはくしゃくしゃに潰される。そのストーリーを読んで「これだ!」憑き物が落ちたように純子とのメールに熱心になる浜田「本を読むって面白いなあ」

純子と浜田は家具の製作者と顧客の関係で、販売会社が間に入ってるからお互いに素性を全然知らない。ホントは近所のスーパーで、行きつけの熱帯魚屋さんで狭い店内を踊るように擦れ違っていたのに、二人の関係はメール交換でのみ、発展していく。

一方、純子にも強烈なツェねずみがいた。一人娘の愛香と交際してるお調子者の足立英だ。彼は愛香と同棲を始めるが生活力が無く実際に二人きりになると馬脚を現しワガママ放題。純子は「それ見たことか」リアルツェねずみを前に罵声を浴びせた(当たり前w)

純子のマンションの前で自棄酒飲んで泥酔してゲロゲロしてる足立に「大丈夫ですか?」浜田が声をかけた時点で悪い予感しかしないんだけど(笑)浜田の家にはフォール勝ちと足立、なな実と愛香に愛想尽かされたダメンズが浜田に面倒見てもらってるw

純子には亡き夫松浦祐也の親友だった男(柴田明良)がセックスフレンドとしてガッチリ恋人の座をキープしていて、濃厚なFUCKは性欲盛りの純子の方から求めてる感がエロい!んだけど、純子は柴田と交際してる限りにおいて亡き夫を忘れられない。

転機が来るのは、愛香がダメンズ足立と同棲を解消した理由としてエロDVD千本持ってた(←これじゃ俺もアウトだよwって言うか持ちすぎw)ことが判明。男なら誰でもそんなもんと熱帯魚屋の主人川瀬は言うけれど、純子は念のために「DVD等」と書かれた遺品の段ボールを開けてみた。

純子は「わあ、懐かしい(*'▽')」元気だった頃の夫松浦の姿に見とれるが、同時にカオマンガイを調理する彼が手に取った醤油を見て「まさか?」タイ料理だからニンニクとか試行錯誤してきたけど、夫の隠し味って日本の醤油だったの!目からウロコ。

純子は、真っ先に娘の愛香に味見してもらって味が本物と確信したら、あいたくて、あいたくて、あいたくて仕方なかった家具職人の彼。名前も顔も知らないけど、遠距離でお互いに「ツェねずみ」を読んで共感し合ったこと、これだけは確かなこと。

純子はタイ料理店の住所と、目印はツェねずみの本にした。川瀬に激励され店を訪れた浜田は、手に文庫本のツェねずみを持ってる。そしてカオマンガイを出す純子の手には絵本のツェねずみ。ここでもう、どうにも私の涙腺がやばい。決壊寸前だ。

浜田がパクッとカオマンガイを口に入れ「どうですか?」覗き込む純子に「美味しいです」仲良くなった二人は、隅田川にかかる橋の上、実は純子のマンションと浜田の自宅兼工房が川を挟んで目と鼻の先であることを知り「こんなに、ご近所さんだったの!」

初めて浜田の家具工房兼自宅を訪れた純子。会いに来た前妻のなな実も、彼女に振り回され悩みを打ち明けたフォール勝ちも、偶然道で拾った足立も、もう立ち直ってこの部屋には居ない。一人もツェねずみなんていなかった。純子と浜田は熱く口づけした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?