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日本の長寿アニメの物語構造

上京して28年。当時NHKしか映らなかった宮古島で育った環境の反動から、いろいろアニメを観ています。そして一番好きで、リアルタイムで観られる時は欠かさず観ているのが、長寿アニメの「ちびまる子ちゃん」と「サザエさん」。

アニメファンにはあまり見向きされない長寿アニメですが、28年も観続けていると、ある程度共通項が見えてきたので、他の長寿コンテンツも絡めて、備忘としてまとめてみます。(はてなからの転載)


1:主人公は「大人っぽい子供」か「子供っぽい大人」

主人公はほぼこの2パターンに分類できます。

大人びた物言いするちびまる子ちゃんや、母親を下の名前で呼ぶクレヨンしんちゃん。警察官ながら遊び呆ける「こち亀」の両津。男はつらいよの寅さんも子供っぽい自由さがあります。コナンはモロ大人が子供になってしまった。

特に「サザエさん」はサザエ(子供っぽい大人)とカツオ(大人っぽい子供)のツートップが配置されているのが磐石ポイントでしょう。

これらはそれぞれ置かれた立場からの「自由」や「憧れ」の象徴なのかもしれません。


2:主人公がトラブルメーカー

事件を引き起こすのは決まって主人公です。

のび太は小さな事件の解決策にドラえもんのひみつ道具を使いますが、その道具でよからぬことを企んだり、偶然で事件をさらに悪い方向に向かわせます。

まるちゃんは友蔵の年金で欲しいものをねだります。

両津は転がり込んだ話で儲けを企み、カツオは悪い成績のテストや宿題を隠します。

「サザエさん」に関しては、ほぼカツオが主人公と言っていいくらいのトラブルメーカーです。これは専業主婦で家から出る機会が少ないサザエさんよりも、小学生で行動範囲が広いカツオの方が、トラブルの「きっかけ」を作りやすいからだと思います。


3:主人公に「無垢な共犯」がいる

トラブルを起こした主人公には、そのトラブルに巻き込まれる、または片棒を担がされる「無垢な」共犯キャラが存在します。

まる子には友蔵とたまちゃん。のび太にはドラえもん。しんちゃんにはかすかべ防衛隊。両津には中川や本田。カツオには中島。寅さんには源公。

このキャラの特徴は「いい人」という事です。主人公を信じ(だまされ)、主人公の企みに参画します。そこに打算的な思惑はありません。


4:主人公に「恐怖の存在」がいる。 

自由の象徴である主人公と対になる、為政者、権力者、「罰を与える」存在がいます。主人公の企みの障害になる存在です。

主人公の企みのために権力者の目を盗み、出し抜くか、もストーリーの根幹になってきます。

両津には所長、カツオとサザエには波平。のび太にはジャイアン、ママ、先生。まる子にはお母さん。


5:主人公の企みは必ず失敗する。そして反省はするが成長はしない。 

話の最後に、主人公の企みは必ず失敗します。そして権力者に戒められ、反省します。

長寿アニメはほぼ1話完結形式で、1話ごとに一旦リセットする必要があるためなのでまぁしょうがないところではありますが、別の話で同じことがあっても、前の話で得た教訓を生かすことはありません。同じ過ちを繰り返します。

カツオは毎年、夏休みの宿題を最後までやらずに波平とマスオさんにやらせます。 


6:1〜5全てを網羅しているわけではない

ここまで書いてきてなんですが、長寿コンテンツがこれら全てを網羅しているわけではありません。

両津は失敗はしますが、反省せず「逃亡」します(両津はどこだー!)。

コナンはトラブルを解決する役割です(大人の現場を引っ掻き回してはいますが)。

のび太は失敗せず、ジャイアンたちが失敗して終わるパターンや、さらに大ごとになった時点で終わってしまう事もあります。

しんちゃんでは大体周りの大人が反省します。

パターンを堅実に守るだけではなくイレギュラー な部分があることが、長寿になるポイントなのかもしれません。


総括すると 

長寿コンテンツのメインのストーリーラインはほぼ 

「自由である主人公が、ハメを外し他人を巻き込み事を大きくしてしまい、権力者に戒められて反省する。でも成長はしない。」

というパターンだったりします。

昔「BSマンガ夜話」で、『「たるルートくん」ではドラえもんのキャラクターフォーマットをなぞってはいたが、本質的な部分でドラえもんではなかった。ドラえもんであったのは「こち亀」の方だった』という評論があって、それがずっと頭に残っていました。

では長寿番組の共通項はなんだろう、と考え続け、28年観てきてやっとまと少しめられた感じです。長かったなぁハハハ。

海外はどうなんだろう。シンプソンズは似て非なる感じがする。


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