あを乃みそら

文筆家

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「周辺」のど真ん中

経験と共に、成長と共に、見える景色は確かに変わる。そしてその景色の奥には、さらに深く美しい景色が延々と続いているってことを疑いさえしなければ、何の怖れなく生きていける。 煩悩から解放されると、木々の緑は数百種類に見えるし、夕陽のグラデーションが一秒ごとに変化するのにも気づく。風にはそれぞれ香りもあるし、空や海もただの青ではない。駆け回る幼子はみな美しく、しわくちゃな年よりの笑顔も素敵だ。 煩悩を渡り歩いているうちは、おおらかさも潔さも穏やかさも遠ざかるばかり。いつまでも同

    • タコの捕り方(月夜編)

      タコはやっかいだ。 港でイカをねらって釣りをしていると、たまにタコを釣ることがある。イカは釣り上げたらほぼ安心してよいが、タコはそうはいかない。 釣り上げると、すぐ餌木(えぎ…擬似餌)を外して、そのぬめりをバケツで洗い流す。「まあいいや、タコもうまいし…。」なんて思いながらふと振り向くと、時すでに遅し…。後ろに置いたはずのタコは、すでにスタコラサッサと岸壁を降りてる最中なんてこともある。「こらこらっ!」慌てて追っても彼らの動きは速い。 イカは逃げない。タコは逃げる。そも

    「周辺」のど真ん中