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2021年9月23日、古楽コンサートに向けての雑記

 ルネサンス時代、レオナルド・ダ・ヴィンチが生きていたこの頃、ポリフォニーの教会音楽が隆盛する一方で、シンプルな伴奏と歌による宮廷歌曲フロットラがもてはやされた。
 今回そのなかで演奏する曲のひとつ、B.トロンボンチーノ「Ostinato vo’ seguire」、これは一度聴いたら耳に残るキャッチーな曲です。(詳しくは坂本龍右氏が解説
 B.トロンボンチーノはおそらく通称で、その名の通りトロンボーン吹きであったらしく、またフロットラの佳作を多く残した作曲家である一方、「妻を殺した人」としても名が残ってしまった人(C.ジェズアルドもそうですね)。なんでも、嫁さんが浮気相手とお取込み中のところに出くわして逆上したとか。

サクバット

【chacona a la vida bonbona(素敵な人生)】J.アラニェス
バロックではお馴染みの「チャコーナ」ですが、この曲は奏者泣かせ。チャコーナのバッソ・オスティナートを8小節とすると、変則的に7小節になったり6小節になったり…このレコードの針が一瞬飛んだような感じが楽しいのでしょうけど、奏者にとっては油断ならぬ曲です。
 歌詞は「人生万歳!人生、チャコーナで行こうぜ!」というとびきり愉しい曲。
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【サン・ファンの朝】D.ピサドール
 サン・ファンとは「聖ヨハネ祭」のこと。町のお祭りで、10代の若い男女も集い、既に恋人がいる人は胸に印。互いに恋人を探してワクワクするひと時です。
 偶然にも「白いうた青いうた」(詞:谷川雁×曲:新実徳英)にも「火の粉」というスペインの囃子歌を基にした曲があって、これもキャンプファイヤーに集う10代の若者らが、幻想的な炎越しにお目当ての相手に胸をときめかせている、といった曲があります。
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【騎士の歌による変奏曲、イタリアのパヴァーヌによる変奏曲】A.de カベソン(1510-66)
 カベソンは幼くして盲目になりましたが、音楽的才能を高め18歳でスペイン宮廷に仕え、フェリペ2世の外交に同行し国際的に名が知られた人ですが、カベソンの肖像画は焼失したようです。
 「騎士の歌」はスペインに古くから伝わる俗謡。騎士の恋人に「あの人に伝えて、私はあなたを見捨てません、どうか人知れず嘆かないで、と」と伝言を頼んでいる歌です。当時流行し、デ・セルマやN.ゴンベールも編曲しています。
 「パヴァーヌ」は荘重に行進するようなダンスですが、変奏曲を得意としたカベソン、ここではかなり華やかな変奏曲になっています。
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【パッサメッツォ・アンティコ&パッサメッツォ・モデルノ】D.オルティス
 Pass'a mezzoについて、昔「古楽」と言うものを知り始めた時、ルネサンス舞曲集のCDにあったり、本でも「”一歩と半歩”の意」というのも見たので「舞曲」という概念から離れられなかったのだが、これはバッソ・オスティナートの名のひとつ、というふうに捉えたほうがよさそうです。いつか東京のルネサンス・ダンスの先生にもお訊ねしてみた所、パッサメッツォの源については不明とのこと。「一歩と半歩」という名称も謎です。
 アンティコ(古いの意)のほうは、第1旋法によるバス旋律のくりかし。
コードネームでは、◆Gm—FーGmーDーGmーFーGm―C―DーGm
有名な「グリーンスリーヴス」の出だしの部分がこのパッサメッツォ・アンティコの進行になっています。
 モデルノ(新しいの意)は、第5旋法によるバス旋律。
◆GーFーGーDーGーFーG―C―D―G

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【あの蔑みの眼差し】C.モンテヴェルディ
 モンテヴェルディのマドリガーレ「Scherzi musicali(音楽の諧謔)」の中でも人気の曲。これもチャッコーナ。モンテヴェルディは感情を音でお絵描きするのが得意で、恋人のまなざしが矢のように飛んでくるというのをアジリタで、武装せよ!をラッパのファンファーレのように、嘆息を半音下降で表現しています。今回はサクバットアンサンブルの編曲で。

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♫コンサート詳細♫
◆古楽アンサンブル【ブルーライノ】
アーリーミュージックお好きなだけvol.4
2021年9月23日(木祝)14時~@スタジオ・フィオリーレ 2,500円

 ルネサンス時代~バロック初期のイタリアとスペインの世俗曲を。
今回はサクバット4本と歌、ポジティフオルガン、ルネサンスリコーダー、ほかにカホン、タンバリン、マラカス、ウインドチャイムetc.打楽器多数。自分のパートがない時はだいたい何か叩いています。アンサンブルというよりバンドですね。
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プログラム(順不同)
◆スペイン
サン・ファン(聖ヨハネ祭)の朝/D.ピサドール
チャコーナ「素敵な人生」/J.アラニェス
パッサメッツォ・アンティコ、パッサメッツォ・モデルノ/D.オルティス
美しさをほめる必要はない/Anon.
ディ・ペラ・モーラ/P.ゲレーロ
騎士の歌による変奏曲/A.de カベソン
イタリアのパヴァーヌによる変奏曲/A.de カベソン
◆イタリア
私は愚直に続ける/B.トロンボンチーノ
どうしたらいいの/B.トロンボンチーノ
スペインの騎士ひとり/F.パタヴィーノ
あの蔑みの眼差し/C.モンテヴェルディ
◆演奏
古楽アンサンブル「ブルーライノ」
https://www.facebook.com/bluerhino1992

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