見出し画像

[西洋の古い物語]「スノードロップ」

こんにちは。
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
今回は、まだ寒い中、雪の下から芽吹いて可憐な花をつけるスノードロップのお話です。原作はアンデルセンです。
ご一緒にお読みくださいましたら幸いです。
※画像はフォトギャラリーからお借りしました。ありがとうございました。

「スノードロップ」

雪が深く積もっておりました。だって、冬なのですから。冷たい冬の風が吹いていましたが、おうちの中は何もかもが気持ちよく、暖かでした。このおうちの中には小さなお花が横になっておりました。雪と土の下、球根の中でお花は横たわっていたのでした。

ある日のこと、雨が降り、雫が氷と雪の間を地中へと滴り落ちました。そうするうちにお日様の、先が尖ってほっそりとした光が地中へと付き通り、球根をトントンと叩いたのです。
「お入りくださいな」とお花は言いました。
「できません」と日光は言いました。「私はかんぬきを上げるほど強くないのです。春が来ればもっと強くなれるのですが。」

日光の子供たちがドアをトントン叩きます。
「いつになったら春になりますの?」
お花は一人一人に尋ねました。
でも、冬は長い間続きました。地面はまだ雪に覆われ、毎夜池には氷が張りました。お花はもうすっかり待ちくたびれてしまいました。

「なんて長いのかしら!」とお花は言いました。「すっかり縮こまってしまいそうだわ。身体を伸ばして、ちょっと起き上がらないとダメね。そして、ドアのかんぬきを上げて外を見てみなくっちゃ。春さんに『おはよう』って言わなくてはね。」
そこでお花は一生懸命押し続けました。雨のおかげで壁は柔らかくなっていましたし、日光の子供たちのおかげで暖められていましたので、お花は雪の下から芽吹くことができました。茎の上には薄緑色の蕾が、その両側には何枚かの長細い葉がありました。外は身を切るような寒さでした。

「ちょっと早すぎたね」と寒風と荒天が言いました。でも、日光の子供たちは皆「ようこそ」と歌いました。お花は雪の中から頭をもたげ、花びらを開きました。それは、緑色の縞模様に飾られた清らかな白い花でした。

ひどいお天気でした。こんなに華奢な小さなお花ですから、凍って砕けてしまいそうでした。でも、お花は思いがけず強かったのです。白いドレスをまとい、白い雪の中で、お花は立っておりました。雪のかけらが降ってきたら頭を下げますが、また身を起こして日光に向かって微笑み、日一日とお花は美しくなっていきました。

「わぁ!」と庭に駆け出してきた子供たちは叫びました。「ほら、スノードロップだよ!あそこに、あんなに可愛らしく、きれいに咲いているよ!今年の一番乗りだね!」

「スノードロップ」はこれでお終いです。

スノードロップは、待雪草(まつゆきそう)とも呼ばれ、ヒガンバナ科の多年草です。原産はヨーロッパで、明治の初めに日本にやってきたそうです。高さは10~20㎝ぐらい、花は下向きにつき大きさは2㎝ほど、花びらは6枚で、外側に長いのが3枚、内側に短いのが3枚あり、内側の花びらに緑色の斑点がついている種もあるそうです。

冷たい雪の下から芽吹いて、可憐な花を咲かせるスノードロップは、物語の中で子供達が言うように、「春の一番乗り」ですね。その気品ある控えめな姿と寒さに負けない強さに心惹かれます。この春先は、厳しい寒の戻りもあったせいかまだ鶯の声が聞こえないのをよいことに、つい巣ごもってしまい、スノードロップを探しに行けませんでした。さすがにスノードロップの季節はもう過ぎてしまいましたね。来年は寒さに負けず探しに行きたいと思います。

今回もお読み下さり、ありがとうございました。
次回をどうぞお楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?