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『レジェンド・オブ・エンブレム』第2話 【#創作大賞2024】【#漫画原作部門】

《第二話 第一の覚醒と紋章》

覚醒は個人それぞれに特定の条件があると言われている。覚醒の光は覚醒している者だけが見ることができ、第一の覚醒から第三の覚醒まであると言われている。第一の覚醒は大陸全土の全体の5%、第ニの覚醒は3%、第三の覚醒は1%にも満たないと言われており、かつて第三の覚醒まで辿り着いた者は伝説の英雄とその仲間たちだけだと言われている。
覚醒は突然起こり、覚醒者の身体の一部が激しく光輝く。光輝いている間は覚醒者の攻撃は無効化される。
ただし、未覚醒者は覚醒の光が見えず、攻撃も無効化されないため、かつて未覚醒者が覚醒者を狩る『覚醒者狩り』が行われていたことがあった。覚醒者が初めての覚醒に驚いている間に殺すというなんとも残酷なやり方だ。未覚醒グループのリーダーを『英雄』が抹殺したことによりこの件は忘れられようとしていたが、今でも一部で語り継がれている。

リアムはレッドアイベアーと戦った時と合わせて二回目の覚醒の光が出現したが、これはまだ第一の覚醒の光だった。覚醒者は光が出現した後に『覚醒した』と自身で気がつかなければいけない。しかし、ずっと奴隷だったリアムにとって自分が覚醒しているなど知る由もなかった。毎年の大陸全土で覚醒者は出現し続けているが、その光がなんなのかを知ることもなく生涯を迎える人も少なくない。覚醒の光を知らない土地を探し、覚醒者を集めてチームを結成しているという話もあるが、それはまた遠い話である。

ギール「くそっ…!眩しすぎる…!覚醒の光がある時は攻撃ができない。ただこいつの能力がわからない以上戦いを長引かせるのは危険すぎる…!この奥義で一瞬で終わらせる!」
リアム「レッドアイベアーを倒す時に出た光…!あの時は確か剣に纏っていた火が伸びたんだ…!身に危険が迫っている時に一回一回光るのか…?よくわからないがこの勢いで第三王子を倒す!」

ギール「お前…覚醒したか。」
リアム「覚醒?覚醒ってなんだ?」
ギール「お前覚醒も知らないのか?ふん。まあ奴隷だから知らないことのほうが多いか。俺が言ったから気付くだろうし言っといてやろう。その光は覚醒の光だ。覚醒者は能力に目覚める。しかし、自分が覚醒していると気付かなければ覚醒者は能力は使えず、覚醒のタイミングがあれば何度も光ることがある。ま、その光がなんなのか気付かん愚か者はそれがなんなのかを知らずに死んでいく者もいるがな。」
リアム「この光は…そういうことだったのか…俺はこの光は二回目だ。今王子に言われたことによって知ることができた。ありがとう。ただ戦いは戦いだ。俺は優勝して、この優勝を夢を叶える希望にする!」
ギール「夢?お前の夢ってなんだ?」
リアム「俺の夢は英雄のように国の統一を目指すことだ!奴隷をなくし、誰も悲しむことがない国をつくる!」
ギール「くくっ…ハッハッハー!国を統一!?奴隷をなくす!?英雄がいなくなった今、そんなことできるわけないだろ!統一するためにどれだけ人が死ぬと思ってる?考えたことがあるか?人を殺したことがないお前にそんなことできるわけないだろ!馬鹿が!まあ、もう戯言は聞く気はない。終わりにしてやる。」
リアム「奴隷の気持ちなんかわからないお前にわかってもらうつもりもない!」
ギール「うるせえ!これで最後だ。奥義!雷炎陣!」
ギールとリアムがいる地面に円陣が出現する。その円陣の中にいるものは雷炎を浴びせられ続ける。リアムに雷炎が襲いかかる。
リアム「ぐ、ぐわーっ!!!焼ける…!痺れる…!」
ギールは雷炎を操ることができるため、反対に雷炎を身に纏っている。雷の力でギール自身のスピードは上がり、炎の力で剣の威力は増している。
ギール「楽にしてやる。雷炎剣ンンンー!!!」
ギールがリアムに凄まじいスピードで襲いかかる。
リアム(心の声)「これはまずい。俺も最後の力を振り絞ってこの一撃にかける…!」
リアム「火剣!火炎龍星!うおー!くらえー!!!」
リアムの髪の毛が火炎の闘気で逆立ち、刀身が4倍の大きさになり、剣に無数の火龍を纏いギールに斬りかかる。
ギャギン!剣と剣がぶつかる音とともに激しい爆風が広がる。闘技場は煙で包まれる。
司会者「おおーっと!何も見えなくなった!果たして勝負の行方は…!」
観客は固唾を飲んで、2人が戦っていた場所を見ている。
司会者「煙が引いていきます…!立っているのは第三王子ギール様!おっと…奴隷の新星リアムは片膝を地面につけている!立ち上がれないか!どちらもボロボロだ!」
リアムが立ちあがろうとする。
ギール(心の声)「こいつまだ立ち上がろうとするか…!まあ無駄だがな、雷炎陣は俺が倒されていなければ残り続ける。そのまま地に伏せとけ!」
司会者「リアム選手!立ちあがろうとするが立ち上がれない!」
リアム「立ち上がろうとしても雷で身体が痺れるせいで立ち上がれない…!この陣は第三王子を倒さない限り残り続けるのか…!ぐはっ…!」
リアムは雷を喰らい続け、白目をむいた状態でうつ伏せで地に伏せた。
司会者「これは決まりですね…!勝者!第三王子!ギール=アームグレットぉぉぉ!!!」
闘技場は今までにない歓声で盛り上がる。
観客C「良い戦いだったぞー!さすが王国最強の三剣士!奴隷では歯が立たないか!」
観客D「奴隷を応援してたけど、やはり勝つのは難しいか…」
ジルバ王「さすが我が息子。火ノ国三剣士の1人よ。ギールよ。お前は何を望む。なんでも言ってみろ。」
ギール「まずはあいつを殺すことだが、あの出血量だ。いずれ死ぬだろう。父上…俺はあんたの考えを知っている!この大会の優勝者に紋章を出現させること!さあ!出でよ火の紋章!」
ジルバ王「あいつ…!なぜそれを…!」
闘技場の空から日の光に照らされると同時に闘技場の中心に火の紋章が突如出現する。
観客全体「すごい光だ…そして熱い…!目が開けられない!」
ジルバ王「やっと…我が目の前に紋章が…!使える者は眼をつかえ!火眼!」
火眼は覚醒している、尚且つ火ノ国出身者のみ使える特別な眼である。この眼を使っている限り、眩しさや熱さなどは感じず視界が阻害されにくくなる。
ジルバ王の側近やギールも火眼をつかう。
ギール「さあ…!火の紋章よ!俺が優勝者だ!俺に宿れ!この国を支配してやるよ…!」
ジルバ王(心の声)「他の王子なら良いが、ギール…あいつに紋章を渡しちゃいかん!何をしでかすかわからんぞ!紋章め…考えろよ…」
火の紋章は闘技場全体を照らしながら、ゆっくりと下りていく。
ギール「さあ…こい…!」
ギールは自身に紋章を宿ると思っていたが、紋章はギールの側にはいかず、まるで意思があるかのように、リアムの右手の甲に宿るのであった。
ギール「なに…!あいつに宿るだと…!まずい!ここで殺せば紋章は消え、また出現する時が来る!殺す!」
ジルバ王「紋章はあの奴隷に宿ったのか!あやつは気を失っている!あの奴隷を捕えろ!火の紋章は我が手に!」
側近たちがリアムを捕らえようと闘技場上階から広場へ下りようとしたその時。
フードをかぶる謎の男が突然リアムとギールの目の前に現れる。
謎の男「やはりか…」
ギール「誰だお前は?おい!こいつをここから引きずり出せ!」
謎の男「この子は紋章に選ばれし者。私が連れて行く。」
ギール「ああ?1人でか?そんな冗談が通じると思うなよ!これだけの火ノ国の戦士がいるんだぞ?何者かもわからないやつがこの国から簡単に生きて出られると思うな!」
火ノ国は他の国と比べて、異常に戦闘意欲が高く、血の気が盛んな者も多い。その国から異国の者が1人で脱出するなど不可能である。
謎の男「確かにこの国には勇敢な戦士が多い。私も簡単に逃げられるとは考えていない。」
ギール「そうか。なら大人しく殺されろ!雷炎剣!」
ギールは謎の男に斬りかかろうと走り出す。その時。
謎の男「そう急くな。私は殺されん。」
闘技場は火眼でも見ることができない謎の眩い光に包まれた。
ギール「なんだこの光!火眼でも見えねーぞ…!」
ジルバ王「この眼でも見えんとは…なんじゃこの光は…!」
眩い光が消えたあと、闘技場にリアムと謎の男の姿はなかった。
ジルバ王「やられた…!わしの紋章が…!まだ近くにいるはずだ!全戦力で探し出せ!」
ジルバ王のかけ声とともに、全戦力が火ノ国の周囲の国まで探したが、リアムと謎の男は見つからなかった。
それもそのはず、リアムはその頃、龍の背中に乗り空を飛んでいた。
龍はステルス状態だったのにも関わらず、戦地からの帰りの火ノ国の第一王子は空を見上げ、はっきりとその姿を見ていた。

数時間後…

火ノ国からは遥か遠い地、風の谷にリアムと謎の男はいた。
謎の男「火の紋章に選ばれしリアムよ。そなたなら必ず成し遂げよう。君の心の中にある無限の光を見れた。私は行く末を見守る役目。だが今は時間がない。しばしのお別れだ。ここなら大丈夫だろう。さらばだ。」
謎の男は静かな風が吹く森の中にリアムを置いて去っていった。

しばらくして、1人の少女がリアムを見つける。
少女「え、あれは、人!?大変!」
少女は急いでリアムの元へ走り出す。
少女「人がこんなところに!おまけに傷だらけ!適切な処置はされているけど、早く手当てしてあげないと!エンジェル!」
少女の『エンジェル』というかけ声とともに、リアムの背中に突然翼が生える。
少女「いそげ、いそげぇ〜!!!」

第3話へ続く…

第一話
https://note.com/rom4603/n/nb622a8c918e8?sub_rt=share_b

第三話
https://note.com/rom4603/n/nddd71d814aaf?sub_rt=share_b

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