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平井真美子さんのピアノを聴いた

昨日、平井真美子さんの演奏会「いはひ」に行ってきた。インスタのおすすめ記事でこの演奏会のことを知ったのは、7月中頃だっただろうか。これまでに平井真美子さんの曲をじっくりと聴いたことはなかったが、ドラマや映画の音楽を担当されていることは知っていて、『過保護のカホコ』『35歳の少女』『満点のゴール』など、気に入って見ていたドラマの音楽もそうだった。

もちろんそうやって聴いていた数々の曲が好きだったことはもちろんだが、この演奏会に行ってみようと思ったのには訳がある。私の好きな森山直太朗さんと結婚されているということも理由のひとつだが、本当の大きな理由は、3年前に引っ越すまで30年ほど住んでいた地域が、真美子さんの出身地であるということだ。真美子さんのお父さまは自治体の役員をされていたので地域の行事などではよくお見かけしていたが、真美子さん本人と出会ったこともなければ、有名な方だということすら知らなかった。結婚されたあとになってから、その事実を知ったのだ。けれど、なんだか私は勝手に縁を感じていた。おまけに会場が京都文化博物館の別館ホールだという。そして5年ぶりとのこと。このホールは重要文化財にもなっている、旧日本銀行京都支店だった建物にあり、レトロで趣のある空間だ。この中で演奏が聴けるのならと、すぐにチケットを予約した。

そして昨日、グランドピアノ、足踏みオルガン、ミニピアノが並ぶ会場へ足を踏み入れた。

上から ミニピアノ グランドピアノ 足踏みオルガン

平井真美子さんの姿を具体的にイメージしていた訳ではなかったが、ステージに出てこられた真美子さんは思った通りの人だった。自然体で、おだやかで、あたたかくて、真っ直ぐだった。そしてグランピアノの前に座って弾き始められたとき、私は驚いた。背筋の伸びた美しい姿勢から生み出されるのは、なんともやさしい音だったのだ。このピアノは会場に常設されているもので、ここでこのピアノの演奏を何度も聴いたことがあるのだが、このような音を聴いたことはなかった。どんなに強い音でも、速いフレーズでも、激しいリズムでも、その音色にはとがったところがどこにもなかった。

配られたプログラムにある 『とあるひ』のモチーフ

中盤で演奏された『とあるひ』は、日記のように綴られたモチーフを曲にしてまとめた組曲のようなもので、グランドピアノだけでなく、足踏みオルガンやミニピアノも使って演奏された。その一曲一曲を聴くたび、私は木漏れ日の中を歩いていたり、走る自転車を遠くから目で追っていたり、上を向いて雪が降るのを見ていたり、誰もいない部屋にひとり座っていたりした。映像が浮かんでは消えて、浮かんでは消えて、を繰り返した。

少し微笑んで、やさしく、ていねいに、そして真っ直ぐピアノに向かわれているその姿は、音を愛する人の姿だと思った。


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