「働くこと」に関わる議論

「働くこと」に関わる議論は様々あります。「働かないおっさん」「女性活躍」「不活性中高年」「非正規雇用」「転勤拒否者の増大」等々、他にもありそうです。

最近、これら「働かないおっさん」「女性活躍」「不活性中高年」「非正規雇用」「転勤拒否者の増大」等々の問題のかなりの部分を解決する策として「ジョブ型雇用」が議論されることがあるようです。そこでこの問題を議論する際のポジショニングについてまず整理したいと思います。

 みていると表立って「ジョブ型雇用」を議論する人の大半は、人事の専門家や人事のコンサルタント等です。この人たちは、制度をデザインし、導入する際の工程上の課題やゴール設定を語っています。したがって当然ですが中立的な立場ではなく、推進者ポジションということになります。言い換えると「商売」です。「商売」は悪いことではありませんが、ポジションは明確にしておく必要がありそうです。中立と勘違いしそうな商売は不健全といえそうです。


別のポジションもあり得ます。例えば私のように、「不活性中高年」と書いてあると、「ひょっとしてこれって俺のことか」と、心配になったりする人の立場です。この場合、自分の利害得失が重要な問題です。この立場では、ジョブ型雇用の議論に反応し「体のいい賃金引き下げか」とか「人減らしだ」とかという議論になりやすいといえます。これはつまり現状維持バイアス(変化したくない)がかかり保守的になりやすい立場といえます。


 更に別のポジションでの議論もできるはずです。すなわち自分のポジション(推進者でも心配する人でも)を認識しつつも、一定程度俯瞰的に問題を取り上げる立場です。これは自分の立場をいったん相対化することで、そのポジションを含めて今後どのように変化していくのかを見極める立場といえそうです。


 以上のことから、少し俯瞰的に最近話題になることが多い「ジョブ型雇用」とか「メンバーシップ型雇用」について整理しようと思います。こういう整理はなぜ必要なのでしょうか。言い換えると私にとって「ある課題を整理する=正しく認識する」ために時間をかけるのは、なぜでしょうか? これに対する答えとして、私が良く確認する記述があります。以下です。

川口大司(2017)『日本の労働市場』有斐閣 (2頁)

「社会は個人から構成されるものだが、一人ひとりは社会全体から見てみると無視できるほど小さな存在で、個人が社会から押しつぶされそうな圧力を感じることがある。そんなときに、個人が自分らしくあるためにどのように社会と折り合いをつけながら、対処していけばよいかを考えるヒントを与えてくれるのが社会科学である」

 

ということで「雇用」に関して少しでも役に立つ整理を(何回かに分けて)目指そうと思います。


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