株分けする訳
ハオルチアの株分けをしている最中に、せっかくなんやから元の状態の写真を撮っておけばよかったと後悔した。ビフォーアフターということで、あんなにもっさりしていたハオルチアのオブツーサが、こんなに小振りでかわいくなりましたよ、といった具合に紹介できたほうがよかった。でもすでにその時には株分けは終わっていて、元はひとつだったオブツーサはバラバラになっていた。時すでにお寿司。お寿司は鯛。時間を巻き戻し鯛。手遅れなことはわかっているけど写真を撮った。
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オブツーサは硬めのグミみたいな感触がする。触り心地がいい。ほどよくひんやり。
ハオルチアには窓がある。水分を貯めていて、レンズの要領で日光を集めるためのものらしい。原生地ではハオルチアは地中に深く潜っている。その体のほとんどを地中に沈めて動物から隠れている、らしい。俳優の滝藤賢一がアフリカに行く番組でやっていた。
80円のミルクポットを買った。中古の調理器具を売っている場所があって、料理をしない私はなんとなくぶらぶら棚の間を行ったり来たりした。喫茶店のアイスを載せるガラス皿やら銀色のニンニクを潰すやつ、スプーンを差し込む穴があいたソース入れ。それらは全部「植木鉢の候補」に見えた。これにあれを植え付けたら面白いかもしれない。頭の中の宇宙でそんな理屈の銀河が広がる。植え付けのアイデアは子供の無暗なイタズラみたいなもの。取っ掛かりもなく思いついて、やらずにはいられない。そうして私はミルクポットを手にとった。
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すんごい満足!ってわけでもない。すんごいオシャレ!ってわけでもない。でも私は満たされる。私はまた少しだけ私の植物と仲良くなれた。
大きくてギュウギュウだったハオルチアは小さくなっていくつにも分かれた。他にわけたハオルチアもいつかでかくなって株分けするのかもしれない。しないのかもしれない。また次に株分けするときも、私はビフォーの写真を撮り損ねて、手遅れ寿司の写真をあげるのだろう。どうにかし鯛。おわり。
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