戯曲(性的、残酷表現あり)

性的、残酷表現あります。







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「戦争戯曲」

(字幕)三十人の大臣がいる。彼らは皆戦争大臣だ。三十人が殺し合う。ねぇ、まだ俺たちに出来るかな? この世界を破壊することがさ。

   小さな家に家族が住む。家族はテレビを見ている。

ママ お父さんのエサを替えないと、最近発情してうざいのよ。

娘 ねぇ、まま、去勢の季節よ、早くちょん切りましょうよ。

ママ 駄目よ、ママにだって性欲はあるんだから。

弟 この野郎。男の純情を何だと思ってんだ。こっちに来い、お前をレイプしてやる。

娘 まぁなんてこと。あたしたち人間なのよ、近親相姦なんていけないことだわ。 

弟 いいんだよ、純情だから。テレビをつけてみろよ。奇形児ばっかじゃないか。芸能人は皆近親相姦しているんだよ。世の○○とか王様とか大臣とかは皆近親相姦なんだよ。

娘 何を言ってるの? 王様がいたのなんて、昔のことだわ。民主主義の世の中よ?

弟 そうか、お前って馬鹿なんだな。

   メザマシ。つーか、パンクロック? どかどかどかどかずんずんずん。

娘 まぁなんてクラシカルな音楽。

弟 おれ、クラシックは嫌いなんだよな。穏やかすぎてさ。

   チャンネルを変える。銃声を100倍にして、擂り粉木で骨がはみ出るまで全身を削り散らかされるような音。拷問、悲鳴。舞台に血しぶきが垂れてくる。

弟 ママ、何つっ立ってんの? 早くセリフを言えよ。お得意のさ。

ママ あ、そうだわ、さあ皆、買い物の時間よ。支えましょうよね、もうこの国をね。断乎。

娘 ママったら全くお買い物中毒なんだから。

全員 資本主義社会万歳! 

   朗らか。金をバラまく。

兄 ぎゃーーーーー!

   全身が襤褸切れで、頭脳に電極が突き刺さり、大きなねじが飛び出している、兄が出てくる。出てきて、そのまま、落ちて死ぬ。

娘 お兄さんが一人死んだわ。

弟 またどっかで拾ってくればいいよ。あれじゃん、この辺に芸大とかなかった? そこらの穀潰しどもは金に目がないから、適当に連れてきてねじ巻いちゃえよ。(手を叩く)

   芸大生現わる。一目でソレとわかるナリをしている。

弟 ほらよ、この骨やるからさ、やってくれよ、なんだっけ? 演劇だっけ? 演劇って奴をよ。

芸大生 ははぁ。おありがとうございまーす。演劇やりまーす。

テロップ「素晴らしいドラマ」

芸大生 おーい。女芸大生ーっ。

  妹が女芸大生に扮して現われる。一目でソレとわかる……

女芸大 繊細。

芸大生 僕ら、

女芸大 情熱。

芸大生 夢。

女芸大 リアリズム。

男(もうめんどくさい) あ、

女 なに?

男 いや、

女 そう。

男 つめがのびたね。

女 そうね。

男 髪も伸びたね。

女 そうね。

男 結婚しようか。

女 そうね。

男 ぼく、本当は、

女 そうね。

男 ごめんね、隠してて。

女 そうね。

   男、泣く。

男 優しさ。

女 そうね。

男 ねぇ。

女 そうね。

男 明日この町は爆撃されるんだって。

女 そうね。

男 逃げよう。

女 そうね。

男 最後のときまでここにいよう。

女 そうね。

男 君はどうしたい?

女 そうね。

男 ぼくは君を尊重するよ。

女 そうね。

男 ねぇ、ぼくたち、支配されてるよね。

女 そうね。

男 ねぇ、おれは役者なんだよ。

女 そうね。

男 無学なんだ。

女 そうね。

男 でも愛は知ってる。

女 そうね。

男 愛はセックスさ。

女 そうね。

男 君のセリフが、僕にはわかる。

女 そうね。

男 君の心はさっきから悲鳴を上げてるぜ。

女 そうね。

男 なーんてね。

女 そうね。

男 そんな君が好き。

   知らない間に人々が集まり芝居に見入っている。

   男は女の手をとり、ゆっくりと、掲げる。

男 チャンピオンベルトは君にあげる。

   取り囲んだ人たちは拍手しながら、蹴り殺す。じつにテンポよく。

   クラシックでも流れる。

   弟は、死んだ役者の身体を、操って芝居の続きをする。

弟 僕ら、無害な役者だから。セックスしよう。へへへ、セックス。

女 間接なら近親相姦にならないね。

弟 セックスを自分でやるなんて時代遅れだよ。

   女、弟の頭を鈍器で殴る。

女 そうね。

弟 (血を流しながら、崩れ落ちる)ママ、なに置物になってるのさ? あんた、鈍器みたいだぜ?

ママ ねぇ、お父さんのエサを替えないと。性欲が大変なことになっているわ。

娘 心はさっきから悲鳴を上げてる。

弟 こいつ、芝居にハマって、ハメラレちまってんだ。

娘 お前は馬鹿だ。

弟 お前に言われたくないなぁー。

ママ ママは置物よ。

娘 セリフの意味があたしにはわかる。

パパ あおーーーん。

娘 あたしたちは支配されてるのよ。

兄2 ぎゃーーーーー。

   兄2が出てくる、全身を釘で貫かれている。首が半分もがれて垂れ下がっている。落ちて死ぬ。その瞬間猛烈にカッコいいロック(この世界ではクラシック)。弟、血塗れのまま、ゆっくり起き上がる。

弟 芸大生を連れて来い。奴らに芝居をさせよう、とびきりピースフルな奴をさ。例えばこんな芝居。100年前のクラシックさ!

弟 俺たちは無害な役者だ!

  俺たちを哀れんでくれ!

  皆が銃を持って、弟を取り囲む。

弟 あれ、これ、クライマックス? 暗いぞーみんな? どうしたー?(めげずに)はい! 泣きまーす。(泣く)はい! 笑いまーす。(笑う、弟の周りにいる役者たちもテレビを見て、同じ顔する感覚で、感情をトレースする感じで真似してもいいけど、それはもはや演出の管轄でせう。)

弟 僕らは哀れな役者だ。俺たちを無害にしてくれ!

  はい……怖がりまーす。(怖がる)こわーい。……笑いまーす。暗い時代だけど、なんとかやっていけるさ。(笑ふ)僕らは無害な役者だ、哀れんでくれ。

父 父親、起きて、ひとりずつ殴り殺す。それが役割だから。

父 ハッピーエンド! ハッピーになれ。

全員 僕らは無害な役者だ。哀れんでくれ(リフレイン)

   父親、声が止むまで、執拗に殴り殺す。

父 ハッピーエンド。(殴る)ハッピーになれ。(殴る)俺は職人(殴る)、ハッピー職人(殴る)。職人不器用だから(殴る)、言葉とか使いませーん(殴る)性欲!(殴る)暴力!(殴る)じゃ、死にまーす。(殴る)僕らは無害な役者だ、どうか、僕らを哀れんでくれ。(死ぬ)ハッピー。

   そこには死しかない。

                           世界が終わります

ました。