定位反射や本能的反応を利用されないように
Orienting reflex、定位反射という用語がありますが、これは、動物がサバイバルする上で、周囲の状況を把握するために予め組み込まれた適応反応の一つです。例えば、ふいにボールが飛んできたら、視線を向け首をその方向にまず向けて、対象を視野で捉えようとする反射的な動きです。自然界で生き抜くためには、危険かそうでないかをいち早く察知するためには不可欠な動きです。視覚だけに限定された反射ではなく、聴覚でも嗅覚でも、自分を対象に対して方向付けて把握しようと身体は常に反応します。
これは、反射反応なので、意志と関係なく自動的に行ってしまう動作になります。この動物学的な反射は、宣伝や広告にも広く利用されています。
動きのみならず、心の動きにも応用できます。定位反射は、なんだそれ?反応とも呼ばれるらしいですが、見当識(Orientation)とも深く関わっています。周囲で何が起きていて、自分がどこにいてどこに向かっているのかをよく把握できれていれば、人間は安定感が得られ、安心できます。つまり、今の状況に見当がついている状態です。 だから、次どうなるのかわからないような状況は不安に感じ、とりあえず見当をつけたいのが動物の本能といえます。
例えば、番組のCM前に、次どうなるのか答えを出さずにじらしてCMが映ると、どんなつまらないことでもなぜか気になるわけで、チャンネルを変えたり、TVを消すという行為がしにくくなります。SNSを見ていて、画面をスクロールしていくと、動きがあって次どうなるか気になってしまうため、スクロールし続けて、動画があれば動きがあるので大した興味はなくてもつい、目が追いかけてしまうこと、ありませんか?
これは反射が絡んでいるため、なかなか止めにくいわけです。「動いている対象を眼で追ってしまう」のは、身体に組み込まれたプログラムです。タクシーの後部座席前のディスプレイがついていると、動きがあるためつい見てしまいますよね。だから、意識して途中で止めたり、休むことをしないと、どんどん目と指先だけで、その先を追ってしまい、時間をつい浪費してしまうことになります。
そうすると、結局なにも生産的なことをしないまま時間だけが過ぎていって、気がつくととても虚しいことになります。
だから、そのループに入らないように意識する必要があります。
宣伝・広告は、こうした動物としての反射を利用して、注意を引きようにそして結果的に消費に向かわせます。マーケティング戦略は巧妙です。
でも、必要とするモノが必要とするヒトに上手く出会えるように促すために本来宣伝広告はあるべきだと思いますが、実際はこうした動物的反射を悪用した宣伝太郎や広告花子が幅を利かせている業界はしっかりと存在します。
戦略的に必要のないモノを必要のないヒトに消費させることも可能です。定位反射、見当識の上にさらに恐怖をトッピングすると、生き残り戦略として本能的に組み込まれた防衛反応が刺激されます。"これをしない"と"これを買わないと"大変なこと"になる、つまり生命が脅かされることにつながりそうだと紐付けされているため、冷静な判断が困難になります。なぜなら、サバイバルのための反射や反応は行動する上で、最優先課題だからです。
社会的な動物である人間は、生存本能にも増して帰属本能も強固に働きます。つまり、自分が帰属している集団から除け者になって外れてしまうことに大きな怖れを感じます。その個人にサポートしてくれるリソースがあまりない場合、その所属集団から外れることは、生命をまるで脅かされてしまうような大きなストレスに感じられます。したがって、主な収入源が勤務する会社や家庭である場合、その方針から外れるような行動や考えは、非常に儚く脆弱で、同調圧力や自分の中の勝手な想像によって簡単に曲げられてしまいます。例えば、予防接種がいくら任意で、余計なことをからだにしたくなくても、個人が何を選択するかを尊重されべきなのに、どこかに属している限り、それに従うようにに方向付けられてしまう根底には、動物の本能的な欲求や反射を巧妙に利用している意図が存在します。
これは、消費者側の冷静な判断を阻害する操作 (manipulation)であって、目的のためなら手段を選ばない悪質なやり方です。モラルのない製造業とそれを横流しして上がりをもらう小売り、命よりカネ優先の亡者との見事なタッグによく見られる販売消費促進戦略です。
とにかく、生物としての本能的反射を利用するなんて、まともな人間のやることではない、とりあえず、それに気づいておく必要があると思っています。
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