【お勧め】合唱 岬洋介の帰還

うちは電子書籍/オーディオブックに関する記事、アメリカドラマ(現在はビッグバンセオリー)に関するアメコミベースのサブカルネタを取り上げた記事が二本柱なのですが、今日読んだ本で、もう一つ投稿しても良いかなと思ったのがこちら。

岬洋介シリーズ 第1作「さよならドビュッシー」

中山七里氏のデビュー作「さよならドビュッシー」を目にしたのは、映画化が発表される少し前でした。たまたま手に取った本がほどなくして映画化されるとニュースになって、おお!と思ったのをはっきりと覚えています。

Amazonプライムの対象作品にもなっていますね。

音楽関係の映画・ドラマでは演奏シーンがどうしてもぎこちなくなってしまうものなのですが、この映画「さよならドビュッシー」は主人公の岬洋介に本物のピアニスト清塚信也を当ててきました。

作品としての評価は、原作の重みと深みを描くには尺が短かったのではないかと思うところ。同じようなレビューを書いている人もいますし、その後なんとドラマ化されたのも、同じように感じた人が多かったとも言えるかと思います。

こちらは残念なことに未見なので、レビューは差し控えます。

岬洋介が登場する作品は現時点まで長編としては全5作が出ていますが、作者の中山七里氏は多作な作家で、他にも複数のシリーズを発表しています。

特に岬洋介第6作などは、作家デビュー10周年記念ということで、中山氏の各シリーズの登場人物が勢ぞろいする豪華作品。中山七里氏の著作の他のシリーズは見ていなかったにも関わらず、雰囲気はつかめたので「豪華さ」は堪能できていないものの、別の観点から衝撃を受けた作品となりました。

岬洋介 第6作「合唱 岬洋介の帰還」

岬洋介シリーズは、ウィキペディアのこの説明に尽きるのですが、第1作の「さよならドビュッシー」から始まって、以下に挙げておくようにすべて作曲家の名前が入り、それらの作曲家の書いた曲が文字通りに作品の通奏低音を形成する贅沢な造りになっています。

ピアニストの岬洋介が、周りで起きる音楽関連の事件を解決する推理小説のシリーズ。
Wikipedia 「岬洋介シリーズ」より

第6作「合唱 岬洋介の帰還」がベートーヴェンの第九を念頭に置いていることは説明の要がありませんが、オーケストラと合唱がより集うように、中山氏の作品の各主人公が、まるで「兄弟たちよ」とでも言わんばかりに集まってくるのは、作者の腕の見せ所。

岬洋介 第5作「もういちどベートーヴェン」

前作、第5作で司法修習生として同期となった天生高春氏が音楽の道をあきらめようと司法試験にトップ合格した岬洋介の心に音楽の火を再度ともしてしまったことが描かれます。

岬洋介 第3作「いつまでもショパン」

天生高春氏が音楽に火を点けた結果、ショパンコンクールに挑むのが第3作「いつまでもショパン」。

第6作「合唱」は、第5作の天生高春氏が10年後に検事として活躍する一方、岬洋介はショパンコンクールで奇跡の演奏をして世界的に有名になり、コンサートツアーの真っ最中という舞台設定。

そこでなんと、天生高春検事が事件の容疑者として逮捕されるという事件が発生。証拠はすべて天生検事であることを示しており、検事がほぼ100%加害者という証拠が出る中で、弁護を受ける人間もない絶対絶命の状況で「友人」として岬洋介が駆けつける。

ここでは事件の具体的なあらましや展開などは割愛いたします。

それでもどうしても記事を書きたくなったのは、主人公・岬洋介が「友人だから」といって、自らのピアニストとしての評判、経済的なダメージを顧みずに駆け付けた姿。

こんなに純粋に友人のためにすべてを投げ捨てて、こんなセリフが言えるだろうか?

たとえ世界中を敵に回しても、僕は彼を護ります。(岬洋介)

最近テレビで放映されて人気が再燃した「スタンドバイミー」の大人版をやってのけるか!といった感想を持ちました。

岬洋介シリーズの他の作品についても、細かく調べると本作「合唱」につながるネタがあるかもしれません。

しかし、それらを私が「書評」として書くなどと言うのは、畏れ多い上におこがましいことこの上ないので、リストを上げておくだけといたします。

岬洋介 第2作「おやすみラフマニノフ」

岬洋介 第4作「どこかでベートーヴェン」

第6作 合唱に引き続き、今後も継続して作品が出版される様子なので、ぜひとも楽しみに待ちたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?