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薩摩琵琶のご紹介

 僕に音楽の楽しさを教えてくれた楽器、薩摩琵琶をご紹介します。

 薩摩琵琶は雅楽の琵琶と系統を異にしており、原型は盲僧琵琶といって盲目のお坊さんが荒神祓い、地神祭などで経を読誦する際の伴奏として使用していたものです。

 木魚、鈴などと同じ法具だったのですね。それが芸能化してゆき、物語を語る伴奏として使われるようになります。古くは、御伽草子、義経物、奥浄瑠璃などを演奏していました。
 その頃の琵琶法師は宗教と芸能を兼ねていたわけです。

 時代が下ると、薩摩藩が武士のたしなみとして琵琶を奨励するようになり、薩摩琵琶が誕生。また、盲僧琵琶から音楽性の高めた筑前琵琶も成立します。それが現在の2大琵琶流派になっています。

 平家物語を語る平家琵琶、元来の盲僧琵琶も現代に伝わっていますが、小さな規模です。琵琶を演奏している人は薩摩、筑前、平家など、全部合わせても全国で千人ほどと言われており、他の楽器と比較すると微々たるものです。

 僕が琵琶をやりたいと思い始めたのは子供の頃。物心ついて読書として始めて読んだのが、忘れもしない『平家物語』、『怪談』、『玉砕の島』の三冊なのですが(どーゆー組み合わせなのだろう? 母に聞いても忘れてしまって今では不明である)、『怪談』には、ご存知、耳なし芳一の話があって、芳一が安徳天皇の墓前で語っていたのが『平家物語』なのですね。

 そのように、子供の頃からの憧れの楽器で、成長してやっと習うことができたのです。今でもその感激、感動が忘れられません。

 まず、ビぃぃーンという、倍音豊かな音で参ってしまいした。西洋の楽器には無い、ノイズを含んだ音色の迫力に心奪われて今に至ります。

 当時は薩摩、筑前、平家などの流派も知らず師匠を探し、たまたま最初に薩摩に当たったので薩摩をやっていますが、今はネットで色々聞き比べることができます。これからやろうという方は、比較検討して自分に一番あったのはどの琵琶か選べるのでいいなぁ~と思います。

 ちなみに、僕は筑前琵琶が良かったなぁ。次稽古するときは、筑前か三味線にしようと思っています。

 余談ですが、三味線の原型になった沖縄の蛇皮線はツメで弾きますが、三味線は撥で弾きます。その理由は、琵琶法師が琵琶から三味線に移行する際、三味線をツメではなく使い慣れた撥で弾いたから、ということです。

 さて、冒頭の画像は、僕の琵琶です。左はいつも弾いている琵琶で、裏、表とも桑の木でできて、『総桑』といわれるものです。しっとりと重厚な音色。右は少し小型で、欅を使っています。筑前琵琶のような、明るく、華やかな音が出るので、気分を変えたいときに演奏しています。

 撥はツゲが一枚、欅が二枚です。ちなみに、撥だけでもお高いものなので、撥先をガードする棒が画像手前に転がっています。地味ではありますが必需品です。

 琵琶の月とか第一フレット(柱と言います)などに使われている白い部分は全て象牙。現在、象牙はご禁制だと思いますので、今琵琶を新しく作ろうと思うと、その部分は樹脂とか金属などの材質になるのかと思います。

 ちなみに、琵琶が作れるほどの桑の大木は、日本では御蔵島にしか無い、と聞いていますので、作るのに時間がかかるのかも知れませんね。でも、欅の琵琶は結構早く出来たように記憶しています。しかし、桑の琵琶とは”別の楽器”というくらい音が違うので、”初心者向け”という表現はできないように思います。音色が気に入ったらどうぞって感じですね。

 音楽性ですが、琵琶の語り(琵琶の場合、曲は”語り”と言います)の他、現代の曲もちゃんと弾けますよ。ただし、音域は狭いので、琵琶の音域に収まるよう、調を変えて弾くことが必要になることもしばしば。現代曲を弾くと雰囲気の変わった曲になって楽しいですよ。

 琵琶を演奏する人が一人でも増えたらいいなぁ、なんて思いつつ、楽器の紹介をしてみました。

 

 最後に、つたない演奏のわりには、まるで手前味噌のようで申し訳ないのですが、薩摩琵琶の音を確認することはできますので、お聞きいただけると幸いです。


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