『繚乱コスモス』(2)☆ファンタジー小説
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「おはよう」
美奈子が教室に入ると、その場は一瞬静まり返り、次いでクラスメイトたちの声は囁き声に変化する。
「おはようございます」
徳子は思わず、教師に挨拶するかのように丁寧に返してしまう。徳子のほかに挨拶を返す生徒はいない。
美奈子は静かに席に着いて一限目の数学の教科書を用意すると、もう一冊、文庫本を取り出した。そして、本の中ほどに挟んだしおりを開いて読み始める。
徳子の耳に、一人の友人が顔を近づけて言った。その声には侮蔑のトーンが含まれている。
「徳