恐れ、知恵、戦い。弱小明治日本の見たもの ー日本海海戦ー
明治三十八年五月二十七日
四時三十分 対馬沖
哨戒艦『信濃丸』艦上
月明かりに照らされたその光景を見た成川艦長は、「おおっ……」と言ったきり絶句した。
感動はすぐ、恐怖に変わる。
戦艦八隻を中心としたロシアの大艦隊が2列縦隊で航行する姿は、迫力、威圧などという言葉を越えて”神秘的”にさえ見えた。当時の日本海軍全力でも戦艦は四隻しかない。
「神が宿っているとでもいうのか……」
しかし、その神は日本を滅ぼすために、ロシアのリバウ軍港から1万8千海里を航行してやって来