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ナガホリ(8139)/支配権争い相場

 近時、東京機械、三ツ星、オーバル、ナガホリ等、支配権争いの発生した銘柄が上昇することが多い。
 まず、支配権争いの基本的な流れと株価の上昇要因は、以下の記事を参照されたい。

 さて、ナガホリについては、2022年2月から対露問題でダイヤモンドを絡めたマネゲ的な上昇があり、4月からはリ・ジェネレーションの大量保有報告を契機に支配権争い相場が始まり、既に上昇トレンドが継続しているが、11/22に、遂にリ・ジェネレーションが役員交代の臨時株主総会の招集請求を行ったため、状況が大きく進展した。
 東京機械、三ツ星の場合は、大規模買付行為等への対応方針に基づく対抗措置である新株予約権無償割当に関する承認の株主総会の基準日や、割当の基準日の設定があったことで、(それまでに既に株価は上昇していたものの)更に急激な株価上昇が始まったことから、ナガホリの今後の会社対応にも注目したいという意味で、本記事を作成する。

●ナガホリの支配権争いの概要
 ナガホリの支配権争いは会社からの開示も多く登場人物の相関関係も複雑であるので、まずは概要を記載する。
(1)買い集め行為の発覚
 ざっくりであるが、まずは、4月の大量保有報告書で、布山高士氏と、リ・ジェネレーション(代表:尾端友成氏)が大株主として判明。このうち、リ・ジェネレーションの保有目的は、「重要提案行為等を行うこと」であった。
(2)大規模買付行為等への対応方針の導入
 これを受けて、ナガホリが6月に「大規模買付行為等への対応方針」(対抗措置として新株予約権無償割当)を導入。これは(個別の設計は異なるが)概ね東京機械、三ツ星、オーバルでも導入されたものである。
(3)新たな第三者からの大規模買付の表明
 更に、8月に、マイルストーンマネジメント(代表:島﨑紀子氏)が新たに大規模買付を行うことを表明した。
(4)ナガホリと買収者側のやり取り(ウルフパック戦術への対応)
 ナガホリは、①リ・ジェネレーション、②布山氏、③マイルストーンマネジメント、更に④尾端氏や布山氏に関係する複数の個人が協調して株集めを行う、いわゆる「ウルフパック戦術」を仕掛けていると疑っており、グループの合計保有割合が30%を超えることから、①~③に対して、質問状等を送付して、その関連性を調査。一方で、①~③は、お互いに無関係であると主張
 ※ウルフパック戦術では、買収者側の個々人の関連性は、特に新株予約権無償割当において重要な争点となるため、会社と買収者側で激しく争われる。詳細は以下の記事参照。

 ナガホリと①~③の質問状・回答のやり取りが多く行われ、ナガホリは買収者側と反社会的勢力を結びつけるような質問も行い、これに関係して特定個人から名誉棄損による損害賠償請求訴訟まで提起されている。
(5)マイルストーンマネジメントと布山氏の対応
 これらの経緯を受けて、10月17日に、同時に、マイルストーンマネジメントが大規模買付を撤回し、布山氏が「ナガホリから実名公表をされて風評被害を受けており投資の継続が困難」との理由で保有株の売却意向を表明。布山氏は実際に株式の一部を売却した(※なお、これらの行動はウルフパック戦術において買収者側の関連性を否定するためのものである可能性も有り)。
(6)ナガホリに関する不正報道
 一方、10月に、ナガホリの子会社で横領が発生し穴埋めをするために毎期多額の貸倒引当金を計上しこれを隠蔽しているという報道がされ、ナガホリの現経営陣に対する疑義が発生した。
(7)リ・ジェネレーションによる役員交代の要求
 これを受けて、11月22日、遂にリ・ジェレネーションが役員交代の臨時株主総会の招集を請求した、という流れである。

●考えられる今後の展開
(1)役員交代の臨時株主総会の基準日の設定
 リ・ジェネレーションが役員交代の臨時株主総会の招集を請求したことから、ナガホリは、この臨時株主総会の基準日を設定する必要がある。
 そして、ナガホリの6月の開示によれば、買収者側はグループと疑われる者全体で32%を超えているとのことであった。
 それから布山氏が株式の一部を売却しており、現在の買収者側全体の保有割合は不明であるが、役員交代の承認を得るためには50%を超える議決権が必要となる。
 リ・ジェネレーションは、現在、ナガホリに株主名簿の閲覧を請求しているが、議決権が足りなければ、基準日の権利確定日までに株式の取得に動く可能性がある。
(2)対抗措置である新株予約権無償割当の発動
 これに対して、ナガホリ側としては、子会社絡みの不正報道により現経営陣への疑義が生じており、おそらく買収グループの株数の正確な特定も困難であろうことから、既に導入済みの大規模買付行為等への対応方針に基づき、対抗措置として、新株予約権無償割当を発動させる可能性がある。
 仮にこれを発動する場合、その承認を求める株主総会の基準日を設定し、かつ、(承認されたことを前提として)実際の割当日に係る基準日を設定する必要がある。

●登場人物の整理
 以下では、ナガホリの支配権争いに関する主要な登場人物を整理する。
(1)リ・ジェネレーション
 ・167万株保有(9.96%)
 ・代表の尾端氏は、昨年、アサヒ衛陶に対して、星野和也氏とともに、役員交代を求め、役員交代を実現させた(アサヒ衛陶の現代表者は星野氏)

 ・ナガホリ株の取得資金(7億以上)は、合同会社STAND UP GROUP(代表社員:中山勇介氏/笹澤知夫氏)からの貸付によるもの
 ・尾端氏が代表のプラスワンHDは、後述のとおり、中山氏・笹澤氏と同時に、アジアゲートHDの株式譲渡を受けた過去あり
(2)布山氏
・1,327,300株(7.91%)
・リジェネレーションと同時期に株集め
・代表のNC MAX WORLD株式会社の株式をアジアゲートHDに譲渡
・アジアゲートHDは、NC株の譲渡代金の支払いのため、エムクレドとアクセスアジアを割当先とする第三者割当増資を行い、エムクレドは払込日直後に割当を受けたアジアゲート株をプラスワン・中山氏・笹澤氏に合計12億円以上で譲渡(要するに、究極的には、布山氏のNC株の代金支払の一部は尾端氏のプラスワン・中山氏・笹澤氏が負担)
(3)マイルストーンマネジメント
・2022年に設立されたばかりの会社
・代表の島﨑氏は、太洋物産の大株主であり、太洋物産の第三者割当増資を引き受けたランニングの代表者が星野氏(推察)=尾端氏との関連
・大規模買付行為を表明するも、のちに撤回

●主な出来事

2022/4/5  布山高士氏(NC MAX WORLD株式会社)が大量保有報告・変更報告
・2/17~3/29に市場内で1,155,000株を取得(6.89%)
・保有目的:純投資

2022/4/7 布山氏が変更報告
・3/30~4/5に市場内で株式取得 合計1,327,600株(7.91%)

2022/4/14  リ・ジェネレーション(代表:尾端友成)が大量保有報告・変更報告
・3/15~3/29 市場内で1,44,000株を取得(8.59%)
・保有目的:重要提案行為等を行うこと
・株式担保はなし

2022/4/15 
①リ・ジェネレーションが変更報告

・4/5~4/8に市場内で株式取得 合計1,670,000株(9.96%)
②布山氏が変更報告
・4/6~4/12に市場内で株式取得 合計1,508,500株(8.99%)
2022/4/22 大規模買付行為等への対応方針
・3名の個人が布山氏/リ・ジェネレーションと同時期に市場内で株式取得 3名合計1,325,200株(8.64%)
・布山氏の関係者複数名が同時期に市場内で株式取得 合計422,700株(2.76%)
・4,926,400株(32.14%)
・2022/6/29 株主総会開催
・対抗措置:非適格者(大規模買付行為者等)以外への新株予約権無償割当

2022/6/29 株主総会で大規模買付行為等への対応方針が承認

2022/8/1  マイルストーンマネジメント(代表:島﨑紀子)から、大規模買付行為等趣旨説明書の提出
・17,600株を保有
・持分法適用会社化のため、今後最大で3,833,800株(25%)を取得する意向
・島﨑氏を役員に提案

2022/9/22 布山氏が変更報告(減少)
・9/13~9/22に市場内で処分 保有合計1,327,300株(8.99→7.91%)

2022/10/17
①マイルストーンマネジメントが大規模買付行為等を撤回
②布山氏が、「ナガホリの実名公表により名誉棄損されており投資の継続が困難」との理由で、保有株の売却意向を表明

2022/11/22 リ・ジェネレーションによる臨時株主総会の招集請求
・役員の交代
・取締役候補者:尾端友成、佐藤彩奈、菅原勝治、吉澤孝明

質問・回答関係まとめ

http://www.nagahori.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/11/62_nagahori_reg_20221104_matome.pdf

※会社側と買収側とで、個々人の関連性について激しく争われているが、これは最終的には対抗措置の新株予約権無償割当の有効性や買収グループ全体の希釈化の程度の問題に繋がる

●株式情報
・発行済株式総数 16,773,000株
・役員交代に必要となる過半数 8,386,501株

【会社側】
ナガホリの同族会社・一族の持株 合計 3,078,000株(18.35%)

【買収側(※会社が買収側と判断している者)】
・リ・ジェネレーション 1,772,000株(10.56%)
・N氏 1,140,000株(6.43%) ※一部売却
・リジェネとN氏と同時期に買い集めた三名の個人  合計1,325,200 株(8.64%)
・N氏関係者 422,700 株(2.76%)
・合計 4,659,900株(28.39%)

取組状況

●参考


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