ろくのこと。
ろくが来たのは、14年前の2月の事だった。
実家の犬のクロが乳腺腫瘍で死んだ。1年ぐらいは何ともなかったが、肺に転移が見つかってその後数か月、治療を続けたが自宅でみんなに看取られながら逝った。
あまりのペットロスに僕がもらいに行こうとライフボートから雑種犬を向かい入れることにした。雑種の保護犬にしたのはクロも雑種だったからだ。妻は黒い犬を欲しがったが、僕が気に入ったのは茶色のもこもこした元気な子犬だった。妻も賛成した。その日がろくがうちに来た日だ。僕はヤクルトスワローズのファンだったから、ヤクルトの選手の名前を付けようとしたけど、反対されてクロを逆さにしてろくになった。
ろくはすごくかわいい犬だった。僕にとって犬を飼うのは初めての事だったのもあってこんなにかわいいものかと思った。
花見に公園に連れて言ったら、20人ぐらいの人が写真を撮らせてくださいと列を作った。イルミネーションを見に行ったら人だかりができて通行の邪魔になった。鎌倉の大仏は犬が入れないのに受付の人が「かわいいー!」と叫びながら通してくれた。
みんなもそうだろう。
もうろくがいない生活なんて考えられなくなった。
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