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ロコたろうと思い出

 小雨がパラつくどよんと重たい空。風は少し冷たくて、長そでのシャツを半そでの上に羽織って、大きなカバンを持って乗り込んだ鈍行列車。行き先は大阪。目的地はちゃんと決まっているのに、どうやって行けばいいのか調べてプリントアウトしたのは、5日前。その次の日に友達とチャットしていて判明した、私の乗り換え設定が「う~ん、その乗り換えはたぶんしないよ・・・」という事実。だって、名前のちがう駅で乗り換えできてつながっているだなんて、訳わかんないし・・・。
 
 この旅行を決めたのは、8月の末。確か、全国高等学校野球選手権の決勝で早稲田実業と駒大苫小牧が当たって、8月20日に決着がつかなかったんだ。この年の8月20日は、記憶が正しければ日曜日。誰だったかが、「甲子園すごいことになってる!」って騒いでいて、それで知ったんだ。
 別に甲子園は関係ないけれど、あのとき周りのノリと勢いで、
「今度遊びに行ってもいい?」
と言ったのがきっかけ。遊びに行くと言った手前、いつもなら行く行く詐欺で終わるところ、今回は口だけではなく実際に行動に移そうと思った。それが、2006年の10月6日、実行されたわけです。
 
 初めての一人旅。初めての大阪。自分で電車を調べ、切符も自分で買う。普段利用する鉄道の切符は買ったことはあるけれど、なれない交通機関の切符はドキドキする。
 
 地下ホームから出発した電車はすぐに地上に出て、大きな川を渡り、車窓に高い煙突が何本か見え、途中後発の特急などに抜かれながら、最初の乗り換え駅。乗り継ぎは2分だけど、ホームは離れているから急いで乗り換えなきゃ。
 無事乗り換え完了。ところが今乗ってきたのと同じ方向へ電車は進む。えっ、間違って乗っちゃった? と思ったけれど、すぐにさっき乗ってきたのとはちがう方向へ分岐していった。
 山間は、しばらく各駅に停まっていき、ドアが開くたびに冷たい風が車内に流れこんできて。風景はだんだんと街になっていき、降りた駅では焼肉のいいにおい。ここから、さらに2駅乗って、地下鉄に乗り換えも無事にでき、駅から目的地までは、あらかじめプリントしておいたものを見ながら・・・。無事に着いた。

あれから○年

 以上が、初めての一人旅の思い出。切符を自分で買ったりルートを調べたりの旅行はこれ以前にもしたことはあるけれど、必ず誰かが一緒だった。完全一人は初めて・・・だったと思う。

 近鉄名古屋駅から急行に乗って、途中木曽三川を渡り、四日市を過ぎたら煙突が見え、その先伊勢若松駅だっただろうか、で、追い越されるための退避。さらに進んで伊勢中川駅で、今度は大阪方面の急行に乗り換え。実はこの乗り換えのとき、名古屋から来た急行と大阪方面の急行の間には、別の電車が停まっていて、その車両内を通過していけば、わざわざ階段をのぼりおりしなくても行けた。それなら、乗り継ぎ時間2分でもあせることはなかった。
 伊勢中川から数駅を通過したら、しばらく各駅に停まっていき、この駅は山間なので、ドアが開くたびに冷たい風が入ってくる。
 
 というのが、先述のものを少し詳しくしたもの。もうしばらく続けると、急行は恐らく上本町行きだったけれど、私は鶴橋駅で降りた。事前情報で「ホームで焼肉のにおいがする」と知っていて、あ、ホントだ! とうれしくなった。
 目的地は大阪の北のほう。地下鉄谷町線沿い。その谷町線に乗るために、私は鶴橋からさらに乗り換えて、さっきまでの急行の終着駅である上本町を過ぎ、日本橋で長い近鉄の旅は終わり。ここで地下鉄堺筋線に乗って、谷町線に乗り換えることができる南森町へ、という流れ。
 
 今ではわかる。この乗り換えが「普通はしないかな」と言われた乗り換え。鶴橋までは近鉄で行くつもりだよ、と友人とチャットしていたら、この友人が鉄道網に詳しくて、
「鶴橋で乗り換えるなら、大阪環状線にのって京橋で乗り換えて・・・」
と言い出した。待って! 私が調べたのとちがう! と、軽くパニックになる。ここで、上本町と地下鉄の谷町九丁目駅が、名前はちがうけれどつながっている駅だということが判明。近鉄で上本町まで行ってしまえば、谷町線に乗りっぱなしでよかったのに。でももう、一度調べたルートから変更する余力はなくて、わざわざ日本橋まで行って地下鉄に乗る、という方法で、何とか到着。
 
 こんな、訳のわからない移動をした私だけど、他人から見たら「旅慣れしているように見えた」らしい。え~っ、そ、そんな(笑)
 
 これがあったのが2006年だから、見出しで「あれから○年」としているにも関わらず計算すればばれてしまう・・・、ので、もうはっきりと。あの一人旅から、もう17年! あのとき感じた「関西って私にとって雰囲気がいいな」という思いは譲れず、気がつけば今はすっかり関西在住の身。いまだに関西弁をネイティブレベルに操るのは無理で、だから私は「エセ関西人」と自称している。
 この旅行をしたのが、17年前の明日。今日と同じようにちょっとひんやりする風が吹く、どよんとした空、時々雨がパラつく日。
 もうあれから17年経っちゃったのか、という事実に気づいて、この17年、私は何をしていたっけ。何をしてきたっけ。

思い出の曲

 この道中、iPodで1曲リピートで聴いていたのは、コブクロの「note」。この後私は何度か名古屋~大阪を移動することになるのだけど、紅く色づいていく山を眺めながら、いつもnoteを聴いていたので、今もこの思い出をだらだらとつづる中で頭の中ではnoteが流れていて。
 
 iPodかあ。これも時代だなぁ・・・。17年って言ったら、もう一時代前、とも言えるのかな。
 
 どよんとした空、パラつく雨、冷たい風。北陸の実家では、こんな天気になると冬が近づいてきているなって思ったもの。今は雪ではなく空っ風の冬にすっかり慣れてしまったけど、これから私の大好きな冬がやってくる!!

 



 





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