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がん告知は突然に【甲状腺乳頭がん】

「残念ながら悪性で……」

それは突然のことだった。
2023年10月18日、本当にしれっと、がん告知を受けたのである。

このnoteでは、私が「甲状腺乳頭がん」であることがわかってから、手術を受けるまでのこと、中でも

  • 手術までにどんな準備をしたか

  • メンタル面でどんな変遷があったか

を中心に書いていきたいと思う。

当然ながら、私に医療の知識はない。

国立がん研究センターのサイトや、病院・医者が発信する情報から得たものに従って書くが、解釈や表現の段階でニュアンスの「ずれ」が生じることがあるし、あくまでも私の話(N=1)である。

他の患者から聞いた話には、正しいと言えないものもあるかもしれない。その点を了解いただき、「あくまで参考として」見ていただきたい。


私の基礎データ

1981年生まれ、女性。
がん告知を受けた2023年10月時点で42歳だった。

仕事はフリーランスのライターで、兵庫県の神戸市に住んでいる。
これまで大きな病気・手術の経験はなく、出産の経験もないので入院は人生で初めて。

18歳のときに受験と部活の両立で心身のバランスを大きく崩し、いわゆる「自律神経失調症」もち。

若いのに更年期障害のような、あらゆる不快症状が次々と出現し、病院で検査をしても「異常なし」。精神科の安定剤や、鍼灸など東洋医学の力を借りながら、調整しつつぼちぼち過ごしている。

同世代の一般的な人に比べて、持ってるパワーが7割程度で疲れやすい。月~金までフルタイム勤務がしんどいから、フリーランスをしている。

「悪い」んじゃなくて「弱い」だけなので、動きすぎないよう調整さえすれば、日常生活は普通にできる。お酒や運動にも制限はない。

  • 年間医療費が1人で10万円を超えるほど、ちょっとでも不調を感じたらすぐ病院に行く

  • 健康診断の血液検査は異常なし、タバコも吸わない

  • 乳がん・子宮頸がんの健診は毎年している

体調に自信がないからこそ、ケアやメンテナンスには気を使っている。

どうやって見つかったのか

甲状腺がんの自覚症状は、一切なかった。

上述のような体調なので、めまいやふらつきが気になり、2023年夏に脳のMRIを受けに行った。2017年以来、6年ぶり3回目である。

異常があるのではないか……というより、異常がないのを確認して安心するための自主的な検査だった。

脳は問題なかったものの、脳の血管に小さな動脈瘤(血管のこぶ)があった。この動脈瘤、6年前の検査のときにもあったので「まあそうだよね」という感じ。

にもかかわらず先生は「これから年に1回、検査を受けてください」と言う。

検査を受けたのは、6年前と同じ病院である。
え?前から動脈瘤あったけど、そんなん言わなかったやん? 
動揺して先生にいろいろ聞いていたら

「そんなに心配なら、首のエコーも撮ってみる?首には大事な血管があるから、詰まってないかどうか」

と提案してきた。健康の安心のためならお金は惜しくない私、「なんぼでもしてください!」とお願いしてエコーを受けると……

「なんか甲状腺が普通より大きいし、中もザラザラしているように思う。紹介状書くから、甲状腺に詳しい病院に行っておいで」

いま思えば、脳に動脈瘤がなければ甲状腺がんが見つかることもなかった。よかったと言うべきか、何と言うべきか。

お世話になったのは隈病院

こうして紹介されたのが、神戸市にある「隈病院(くまびょういん)」である。

名前は聞いたことがあったが、甲状腺の専門病院だとは知らなかった。っていうか甲状腺の専門って……超ニッチ。

私が神戸在住だからここを紹介されたと思っていたが、どうやら隈病院、甲状腺の治療・研究では日本でもトップクラスらしい。だから全国各地(とくに西日本)から患者がやってくる。入院中に話した人は、広島や岐阜から来ていた。

そんな病院が神戸にあるなんて……めっちゃラッキー。

のちに参加した患者どうしのおしゃべり会では、「地元の病院は自分のところで手術してほしいから、隈病院につないでもらえるまでが大変だった」「最初に隈病院を紹介してもらえたのはラッキーよ」などという声があった。

たまたま私がかかったのは脳外科専門の病院だったからスムーズに隈病院を紹介してくれたけど、総合病院だったら、そこで手術を……という話になったかもしれない。

ちなみに隈病院は、紹介状や予約がなくても新規患者の外来を受け付けている。けれど、遠方に住んでいて地元の病院に「紹介してもらうかどうか」という話になっていたら、なかなか気づかないかもしれない。

こんなにナチュラルに告知されるとは

紹介状はあったものの、初回は予約せず、都合のよいときに外来を訪れた。

もう一度、首のエコーを撮り「やはり腫瘍がありますね。これだけで良性か悪性か判断しかねるので、きょう細胞診(いわゆる生検)をしてもいいですか?」と言われる。

その日は1日空いていたので、首に針を刺して細胞を取る細胞診まで実施し、帰宅。初診+血液検査+エコー+細胞診で、8000円くらいだった。

これが、10月10日の話。
約1週間後に、結果を聞きに来てくださいと。

そして、結果を聞きに行ったのが10月18日。
あまり心配せず「おそらく良性だろう」と思っていた。

というのも、過去に乳がん&肺がん健診で引っかかり、
・乳がん……良性腫瘍
・肺がん……何もなし
という経験があるからだ。

実際に隈病院のサイトにも「甲状腺のしこりのうち、悪性腫瘍の割合は約10%」とあったので「心配ごとの9割は起こらないって言うし!」と、“勝利宣言”を聞くために出かけて行った。

指定された診察室で待っていたが、前に入った人の診察時間が長い。

60代くらいの女性で、ご主人と一緒に来ていたものの、診察室には1人で入っていった。途中でご主人が診察室に呼ばれ、そこからも長かったので「この人、悪性かもしれないな……」と思った。

いくら大らかに構えていたとはいえ、直前になると怖いし、待ち時間が長いと不安が募ってくる。「この人が悪性だったなら、10分の1の確率が2人も続くことはないだろう」と変なゲン担ぎ思考を試みた。

でも、もし悪性だったら頭が真っ白になるだろうから「悪性と言われたら、とにかく『録音してもいいですか』と聞こう」とだけ心に決めていた。

前の女性がやっと出てきて、ちょっと涙ぐんでいる。やっぱり悪性だったのかも。

ようやく私が呼ばれ、私よりも若い30代と思われる女性医師が口を開いた。

「この前、検査を受けていただいた件ですけど、残念ながら悪性で……」

「えっ」と固まった。
「うそや!」とか「ガーン」というより、「えっ」だった。

がん告知って、こんなにしれっとナチュラルに行われるものなんや。

もちろん、精密検査の結果を聞きに来ている時点で「悪性」と言われる可能性は承知している。

とはいえ、以前に肺がんの精密検査をした病院では、重大な病気のときの告知希望(告知してほしい/家族に告知してほしい/告知してほしくない)を問診票に書く欄があった。

そういうのなかったから、ちょっと心の準備が……(別に病院を責めてるんじゃないです)。

「心配ごとの9割は起こらない」じゃなかったんかい!1割が現実になってもたやないかい!5%以下の心配も、5割起こるモードで心配しがちな私が、珍しく悠長に臨んだらこれかよ。

先生が病状について説明し始めて、ふとわれに返り

「あっ、録音してもいいですか?」

こうして、私のスマホのボイスレコーダーが回り始めた。

〈続く〉

*録音の可否については、病院によって(または医師によって)違うと思います。

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