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社員全員参加で『昇給基準』を定める

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、業績を高めるためには、昇格基準、減額基準は、部下の方たちにも参加してもらい作成するとよいそうです。なぜなら、部下の方たちが、自ら作った基準を目標に動き出すので、納得しやすいからだそうです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、部下の方たちの気持ちをまとめるには、社長に対する不満や要望を聞く機会をつくる方法があり、これによって、部下の方たちの当事者意識を高めることができ、自発的に活動するようになるということを説明しました。

これに続いて、板坂さんは、給料の基準について、従業員に決めてもらうことをお薦めしておられます。「(本書の別の章で板坂さんは)社員に参加してもらいながら経営理念を固めていく方法を紹介したが、給料でも同じことをやっていく。どんな場合に社員の給料を上げるのか、社員全員参加のミーティングを開き、売上額はもちろん、お客さんからの評価、経営理念に沿った目標など、業種業態に合わせた『昇給基準』『減給基準』を作っていく。

これをやると社員一人ひとりが、自ら作った基準を目標に動き出すので、納得しやすい。経営状態も改善する。私のクライアント先のある企業では、社員全員で『昇給基準』『減給基準』を定めたことで、赤字経営が一転して黒字化。1億円ほどあった借金が半分になったケースもある。美容業という社員一人ひとりのモチベーションがそのまま売上に直結する業種だったとはいえ、個々の社員に『自分も会社の経営に参画している』という意識が広がり、売上目標の意味が変わった。それまでの売上目標はトップダウンで押し付けられた数字であり、達成したことでボーナスが増えるのは『ご褒美として当たり前』だった。

それが、自分たちで『昇給基準』を作り、売上目標とリンクしたことで、“達成したい数字”になっていった。数字だけを見ると変わらないが、背景にある意味、解釈の変化が経営に与える影響はバカにならない。達成したことが成功体験になり、『自分はできる』『もっとできる』と思えるようになる。そうやって作った数字に対する評価や感謝として、給料やボーナスが増えていく。このサイクルができあがると、社員たちは何か仕事に迷ったときに『昇給基準』『減給基準』と、それにリンクした経営理念を見て、『そうだった』と納得して歩んでいくことができるのだ」(192ページ)

従業員の給料については、多くの中小企業経営者の方が悩んでいるようです。従業員の方のがんばりに報いて昇給してあげたいが、いったん、昇給してしまうと、業績が苦しくなったときに下げることができないので、昇給の決断がなかなかできないというものです。そこで、板坂さんがご提案しておられるように、従業員の方も参加して昇給基準や減給基準を作るという方法は、その解決策のひとつだと思います。

ただ、私は、従業員の方が参加せず、社長や幹部だけで作った昇給基準を公表するだけでも効果があると思います。なぜなら、現在の給与額に不満があるとしても、どうすれば昇給するかが明確になり、それに従って仕事に励むことができるようになるからです。要は、昇給基準によって、会社が従業員の方に求める活動が、従業員の方に伝わるわけです。さらに、会社のKGI、部門ごとのKPI、個人ごのとKPIを設定し、それに給与の一定割合を紐付けすると、やるべき活動がより明確になります。

ただし、昇給基準を明確にするという作業は、実際には労力が必要です。また、1度作成すればそれですむとは限らず、適宜、状況に応じて変更しなければなりません。このような理由から、多くの中小企業では昇給基準が明確にされていないようです。しかし、板坂さんがご指摘しておられるように、昇格基準を明確にすることは、組織力を高め、業績の向上につながります。そして、経営環境の複雑な時代だからこそ、組織力を高めるために、経営者の方は労力そ注ぐ必要があると、私は考えています。

2024/6/2 No.2727

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