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[要旨]

阪神佐藤興産の社長の佐藤さんは、下請を脱して元請になるために、多くの会社を訪問し、小さな案件を受注しました。このようなことを繰り返して行くうちに、相手との信頼関係が深まり、大規模な工事の情報も入るようになりました。すなわち、鉄砲の弾を売ることを繰り返すうちに、鉄砲も売れるようになったと考えるようになったそうです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、阪神佐藤興産の社長の、佐藤祐一郎さんのご著書、「小さくても勝てる!~行列のできる会社・人のつくり方」を読んで、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、阪神佐藤興産は、かつては、下請会社として、塗料販売と塗装工事を営んできましたが、佐藤さんは、元請会社の指示通りにしか仕事をすることができないなどの理由から、「下請体質を脱しない限りは本当の成長は得られない」と感じ、下請体質から脱して元請会社になりたいと考えるようになということを説明しました。

そして、佐藤さんは、元請会社になるために、受注先の新規開拓に尽力したことをご説明しておられます。「お客様の訪問を繰り返す中で、小さな修繕工事を御用聞きに対応するようにやっていきました。本音のところは、改修工事のような大きな案件を受注したい。ところが、修繕工事のような仕事は、細々としていますが、頻繁にある。従来はそこで終わっていた仕事も、続けるとお客様の信頼につながり、別のお客様をご紹介いただけることも増えてきました。

鉄砲と弾でいうと、鉄砲は塗装と防水で、小さな修繕工事は弾ということができます。弾を繰り返し買っていただくことによって、やがて、少しずつ評価をいただき、鉄砲、さらに大砲の販売につながることも起こるようになったのです。このような小さな修繕工事の依頼は、大規模改修工事の、“穴を埋める貢献”もしてくれました。大規模改修工事は、通常、15年に1回、行われますすると、その間は、大規模改修工事がないことになります。

その15年の間を、ちょっとした改修工事や、数多くの改善工事で埋めることもできるのです。鉄砲を売る間に、小さな弾も売れる。誰でも入手できる、大規模改修工事という大きな情報だけを追っていると、そこで受注しても、まったく儲かりません。しかし、小さな修繕工事の情報を、細かくチェック・入手していけば、より、お客様との絆を強化することができます。加えて、他の大規模改修工事の情報も、他社に先んじて入手できることもあり、ビジネスの好循環が始まるのです」

この、佐藤さんのような、小さな受注から大きな案件につなげるという手法は、多くの方が、「そのような方法は正攻法だ」と感じると思います。その一方で、「それは分かっているけれど、なかなか実を結ばない」と考える方も多いと思います。私が銀行で渉外係として働いていた時も、多くの会社を訪問したにもかかわらず、なかなか、大口案件に接することはできませんでした。フリーランスの現在も、多くの経営者と接しても、なかなか顧問契約につながりません。

しかし、現在は、価格は安くて当たり前、商品の品質も高くて当たり前という時代です。そうなると、人間関係、信頼関係が成約の決め手になります。そうであれば、規模の小さな会社は、地道ではあるものの、多くの見込み客と接触をする以外に方法はないでしょう。そして、これを佐藤さんは実践し、売上を伸ばしていったわけです。やはり、素直に、基本に忠実な営業を実践することが王道なのでしょう。

2023/12/12 No.2554

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