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減価償却費を計上しなくても実態は同じ

[要旨]

会社が減価償却費を計上しなかった場合、決算書の利益は増加しますが、それは業績が向上したわけではありません。さらに、経営者はそれをわかっていても、表面的な利益額が増えたことで、本来、行うべき業績改善に目を向けようとしなくなりがちです。また、銀行も、表面的に利益が増えた会社に対しては、実態の利益で融資審査をするので、表面的な改善によって、銀行からの評価が高くなることはありません。

[本文]

前回に引き続き、今回も、税理士の大久保圭太さんのPodcast番組を聴いて、私が気づいたことについて説明したいと思います。前回は、もし、会社が減価償却費を計上しない場合、企業会計原則に触れることになりますが、税務署は、納税額が減らない、または増えるために、特にそれを問題視しませんが、逆に、法定耐用年数より短い期間で減価償却を行おうとすると、減価償却費が増加し、納税額が減るため、法定耐用年数で償却したときの減価償却費を超える超える部分は、益金とみなして課税されるということを説明しました。

そして、今回は、減価償却費を計上しないことについて、会計の観点以外からも問題があるということについて説明したいと思います。その問題というのは、減価償却費を計上しないことで、会社の利益額は表面的に増加しますが、それは、業績がよくなったわけではないということです。これについては、減価償却費を計上しないことを決めた会社の経営者の方も理解してはいると思うのですが、やはり、表面的とはいえ、決算書の黒字額が増加すると、安心してしまう傾向にあるようです。

このことは非論理的なのですが、いったん、本来は望ましくない方法で決算書の数値を改善させることをしてしまうと、正当な方法で事業改善をしようとする努力を怠ってしまうようになるようです。ちなみに、減価償却費を計上しないという方法以外にも、貸倒になった売掛金や受取手形を損失として計上しないままにする、販売不能になった棚卸資産を損失として計上しないままにする、故障して使えなくなったり、災害や盗難などで失ったりした固定資産を損失として計上しないままにするという方法もあります。

このようなことをすると、会社の財務諸表は会社の実態を示さないものになり、その本来の目的を果たさないものになります。そして、繰り返しになりますが、そういった方法を使ってしまうと、経営者の方は、会社の実態に目を向けず、事業改善の努力を怠ってしまう傾向にあることに注意が必要です。ちなみに、そのような表面的な決算書を作成している会社に対しては、銀行は、会社の実態で融資審査を行います。

ですから、減価償却費を計上していない会社は、もし、減価償却費を計上していたときの利益額はどれくらいになるかという、修正した状態で融資審査を行います。また、貸倒が疑われる売掛金や、販売不能が疑われる棚卸資産がある場合も同様に、それらを損失として計上した状態で融資審査を行います。したがって、大久保さんのPodcast番組のリスナーの方が経営する会社が、もし、減価償却費を計上しなかったとしても、銀行から見た評価が高くなることはありません。むしろ、きちんとした会計処理をしない会社であるという悪い印象を持たれてしまうでしょう。

2024/7/18 No.2773

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