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コケながらコケ方を知っていくこと

[要旨]

経営コンサルタントの板坂裕治郎さんによれば、成功している経営者の方は、イケイケドンドンのタイプと、石橋を叩きながら橋を渡るタイプの2つのタイプがあるそうですが、両者に共通していることは、失敗から多くを学ぶ姿勢を持っているということです。前者は、成功も失敗も大きく、後者は、成功も失敗も小さいという差はありますが、両者ともコケながらコケ方を知っていくという点で共通しているそうです。

[本文]

今回も、前回に引き続き、経営コンサルタントの板坂裕治郎さんのご著書、「2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則」を読んで、私が気づいたことについて述べたいと思います。前回は、板坂さんによれば、中小企業がよい人材を得るには、自社で育成するしかないいので、若手や新人にどんどん仕事を任せ、社長や幹部は、若手たちの失敗のフォローに徹することが大切ということを説明しました。

これに続いて、板坂さんは、経営者自身が成長するには、失敗することと、それから学びを得ることが大切ということについて述べておられます。「事業を軌道に乗せ、立派な経営者として長年、会社を経営している社長さんは、大きく分けると、2タイプいる。一方は、イケイケドンドンで、根拠のない自信に従って勝負に出るタイプ。もう一方は、慎重派で石橋を叩きながら渡るタイプだ。正反対のタイプが、違うルートを通って成功者となっている。だが、どちらのタイプにも共通しているのが、失敗から多くを学ぶ姿勢を持っていることだ。

私も含めてイケイケドンドンで突き進むタイプは、コケるときもズッてーんといく。振り子の原理と同じで、大きく振った分、成功も失敗も大きくなる。そして、1回のでかい失敗から多くを学ぶのだ。一方、石橋を叩きながら渡るタイプは、成功に向けて1段ずつ階段を上がっていく。彼らの失敗は、階段を1段、2段踏み外す位の規模で収まる。イケイケドンドンのタイプからすると、小さなつまづきだ。それでも慎重派は、小さな失敗から教訓を得て、また1段ずつ階段を上がっていく。そして、時々、踏み外す。つまり、1回の失敗は小さいが、回数を重ねて多くのことを学んでいくわけだ。

いちばん大事なことは、コケないことじゃなく、コケながらコケ方を知っていくことだ。コケないように予防線を張っていたら、小ぢんまりとした、挑戦もしない人生になってしまう。これでは独立した意味がない。絶えず挑戦は続ける。そして失敗もする。ユニクロの柳井正社長も、『失敗から学ぶこと。僕は『一勝九敗』という本を書いたが、本当は一勝三十九敗ぐらいだ』と言っていた。成功者は行動して失敗して、失敗から学ぶから成功しているのだ」(215ページ)

多くの方は、「失敗は成功の母」という言葉をご存知だと思います。しかし、意外にも、失敗を避けることを優先する会社経営者の方は多いと、私は感じています。板坂さんは、成功している経営者には、イケイケドンドンタイプと、石橋を叩きながら渡るタイプがいると述べておられますが、2つのタイプとも、失敗することは避けていません。だから、両者はスピードに差があるとしても、学びが多く、成長もするということでしょう。

一方、失敗しなければ学びはないことは当然なのですが、その失敗を避ける経営者というのは、そもそも、新しいことをしようとしません。そのような経営者の方は、恐らく、防衛反応が強く、無意識のうちに新しいことをすることから逃げているのだと思います。そのような経営者の方は、本当は、経営環境が変わっているのに、事業のやり方を変えていないから、業績が下がっていることに、うすうす気付いているのに、「経営環境が悪化したから業績が下がっているのであって、自分に責任はない」と、口にしたりします。

このような経営者の方は、「新しいことをやってみて、もし、失敗してしまうと、自分の能力があまり高くないことが証明されてしまう」と考えているのだと思います。もちろん、頭の中では、失敗は成功の母ということは理解していても、なかなか、新しいことに踏み切る決断は難しい人も多いようであり、私は、その決断ができるかできないかが、業績の大きな分かれ目になっていると感じています。

2024/6/5 No.2730

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