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『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』 #映画

・映画って面白くてもつまらなくても、ずっーーと全部覚えておけるかって言うと無理。個人の差はあるんだろうけど、少なくとも自分には無理だ。

・もちろん滅茶苦茶好きな映画は解像度が高いまま保持されるので、記憶に残りやすい。

・それでも好きなシーンや特に印象に残った部分とか、誰かと話して「あぁ、そういえばあったねそんなシーン!」とようやく思い出せる程度なのが大半だ。どれだけ映画が面白くても、俺の脳味噌に全部は入らない。

・なので映画は感想を書き溜めて置くに限る。

・外付けHDDに頼れ。

・ということで『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』を鑑賞しました。原作漫画をたまたま持っていたのと、アマプラでたまたま見かけたので。映画批判だ何だと小難しい事は考えず、観たままの感想文を書いて行こうと思います。

・あと事前予習として原作の読み返し、アニメ・ドラマも観たのでそっちも。


※映画の感想なのでがっつりネタバレがあります。一応注意。




鑑賞前

・元々アニメの実写化作品に対する感度を意図的に鈍くしているので、まずは映画より先にアニメ・ドラマを視聴した。

・まずアニメの方は言わずもがな。ジョジョのアニメはスタッフが全員ファンなのではないか。情熱とこだわりと納得のクオリティで出来上がっている。

・あと何回観てもコーヒーのドリッピングでサインするシーンで笑ってしまう。この一文だけでどんだけカタカナ使ってんだビックリした。

・次にドラマ。これが大正解だった。実写化における温度感を一発で掴めた。あと普通に面白くてよく出来てた。役者さんってすげえなぁ、大変だっただろうに。

・アニメ・ドラマのおかげで作品の温度感はなんとなく掴めた。最後に原作を読み返す。

・原作は大判123p程の内容なので、正直映画にするとしたら内容が少ない気がした。コマ割りも大コマが多いので、どこを膨らますんだろうか…とアレコレ考え、いざ映画を視聴。


いざ鑑賞

・初っ端から原作と時系列の違う映像が流れてきて驚いた。オークションする場面なんてあったか?と思い原作と見比べつつ、映画独自の内容であることを確認。ほうほうと観進めていく。以下時系列関係なしに思い出したところを書いていく。

・購入した黒い絵画に何か秘密があるのか…と思いきや、自宅襲撃後に助手ちゃんが森の中で取り戻した絵画を観るのだが、がっつり画面を指で直に触っていて笑ってしまった。

・それお目当ての作品じゃなかったにせよ、150万円で買った絵だよな?扱いが雑過ぎないか?仮にも編集部の人間だよね??

・そんなこんなで妙に笑いつつ、絵に何かあると踏んで再びパリへ。

・道中バスに乗ってるシーンで、マダムに場所を尋ねられる露伴先生がフランス語で会話するのだが、良い声過ぎて笑ってしまった。さっきから笑ってばかりだが、人間魅力的な物を見ると笑うものなので許して欲しい。

・回想シーン中、露伴青年の祖母の家での出来事が始まる。露伴のばーちゃんビジュアル100点満点か???どこに売ってるんだそのちいせえ黒サングラス。

・祖母の家での入居者の条件は丸々カット。まあ必要あるかと言われればない気もする。原作だとかなり厳しい条件が課されてて(喫煙・夫婦・子連れ・ペット・料理・家具持ち込みetcすべて不可)入居者なんているのかというレベル。

・今作のキーである「菜々瀬」が登場。原作と違い苗字の表記がなかった。原作だと藤倉という苗字。

・彼女に惹かれて、自身の作品を見せる露伴。ここで俺の好きなセリフが原作だとあるのだが、残念ながらそこもカットされてしまった。

「批評なんかするつもりはないわ
 ・・・・・・わたしにいいとか 悪いとか わかりっこないし 審美眼もないもの
 ただ 人がいっしょうけんめい描いている途中の絵ってどんなのか?
 見てみたかった」

 「本物の…何か特別な感じのする状態の作品を」

「岸辺露伴ルーヴルへ行く」より引用



・菜々瀬が露伴の原稿を見る時に言ったセリフだ。原作で俺はこのセリフにグッと惹かれたのだが…。これはなんでカットしたか、最後まで観たが分からなかった。いいセリフだと思うんだけどなぁ、こんなん言われてから作品が見たい、なんて。作家冥利に尽きる至極の一言だと思う。

・その後、紆余曲折あり菜々瀬が露伴の原稿をハサミで切り刻むのだが、原作はかなりザクザク切り刻んでいたが、実写は難しかったのか少し控えめになっていた。まあ握りしめたハサミじゃ穴開けるぐらいになっちゃうよな。

・その後美術館見学に行くことになった露伴一向。ここでも映画独自の展開であろう鑑定士の男が出てきて、露伴と意味深な握手を行う。メールでの問い合わせシーンなども独自の物で、絵画を調べようとしたキュレーターの男性が手すりから落下するシーンは肉迫したものがあった。

・鑑定士一行と地下の「Z-13倉庫」へ。作品などあるはずのない古びた倉庫…通称「見捨てられた倉庫」と呼ばれる場所へ向かうが、原作と違い比較的現代的な建物の廊下を通って向かう。

・鑑定士一行の悪行と、置かれた絵画に憑りつかれた男の末路が明らかとなる。同時に、この世で最も黒く邪悪な絵の真相が語られる。これらの独自の設定や登場人物は、絵画の特別な能力を説明するのに役立ったのだろう。実際、説明がかなり分かりやすくなっている。

・原作だと、映画の比ではないぐらい人があり得ない死に方をするので、マイルドになっていると感じた。(車に轢かれたような跡が出来ていたり、皮膚が裂けたりするので)

・邪悪な絵は原作だと横たわった(もしくは手を伸ばした)菜々瀬が描かれ、無数の蜘蛛がそこからザッと這い出てくる。映画だとこちらを見据えた菜々瀬の美しくも悍ましい絵が拝見できる。

・突如始まる本格的な時代劇に一瞬置いてけぼりを食らう。

・原作読んでなかったらもっと置いてかれてた。

・役柄上仕方ないのだろうが、山村仁左右衛門が露伴役の高橋一生さんなのが混乱した。ネタバレだが、彼は「藤倉菜々瀬(旧姓:岸辺菜々瀬)」の子孫であって、二人の間には子供もいないはず。

・が、どうもこの本格的なシーンは荒木先生が本編では書ききれなかった部分だったらしいので、こうも力が入っていたのかと後々納得。

・菜々瀬を通じ、黄金の精神が確かに受け継がれている演出が良かった。けど原作読んでないとなんのこっちゃでもありそう。

・女性キュレーターも生存。まあ殺す意味があるかと言われればないので、そっちの方がよりハッピーエンドな気がしてよいと思う。

・最後に露伴の呟く「人間の手に負える美術館じゃあない」というのも映画独自のものだが、凄まじくしっくりくる台詞でよかった。月並みな感想で申し訳ないが、パズルのピースが嵌る感覚。ルーヴル美術館では実際に、何百年も後に名画が見つかる珍事が起きている。歴史上で考えてもあの建物自体価値のある美術品であり、底知れない地下迷宮でもある。人の手で作られたにも関わらず、もう人の手には負えない存在になっている。なるほどこれはジョジョらしい。



鑑賞後

・振り返って考えると、良くできたミステリーであり、アニメ映画の実写化としても凄い塩梅だと思う。ジョジョを知らなくても面白いだろうし、知っていれば二度おいしい。そんな作品だ。

・たった一人の芸術家の執念でさえここまで手に負えない脅威となるのであれば、それを収めている美術館なぞ当然、さもありなん。

・時代劇パートでの山村と菜々瀬のやり取りも好ましい。妻の黒髪をどうにか表現したいと悩む画家。この構図だけで素晴らしいが、病に倒れた妻の為に破門となった家へ戻り死に物狂いで絵を描き続ける狂気も素晴らしかった。こんな感想だと気味が悪いかもしれないが、自分が画家の端くれであるなら、せめてこうありたいと思う。

・元来、何かを作る「創造」というのは、狂気染みた頭のおかしなものとされてきた。この世のあらゆる職人達は、さらにそこに命を賭けているのだから、気狂いと呼ばれるぐらいの情念があってどっこいどっこい。

・モノ書き達の執念。狂気に内包された喜びと苦しみを、人は芸術と呼んできた。確かにそこにある、そうであるべき見本の一つを本作を通じて再確認できたように思う。

・絵の中に込められた執念に生き続けた山村の様に、そんな彼を愛し食い止めるために命を賭けて時を超え続けた菜々瀬のように、受け取ったバトンにインクを染み込ませ、物語を終わらせた露伴のように。そのようになれたなら。

・これ以上はないのだと思う。

・素晴らしいアートでした。〆














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