ドント・クライ プリティ・ガールズ!
1970年/ハンガリー/原題:Szep leanyok, ne sirjatok!/89分
監督:メーサーロシュ・マールタ
出演:ヤロスラヴァ・シャレロヴァ、ザラ・マールク
早稲田松竹のレイトショーにて。これでやっとメーサーロシュ・マールタ監督特集を制覇できた。ハンガリーにおけるブリティッシュ・インヴェイジョンを下敷きにした青春風俗映画かなと軽い気持ちで観たけど、メーサーロシュ・マールタらしいユニークな観点が入っていて面白かった。
冒頭でカフェのガラス越しに映る少女たちや、自転車で移動する集団のショットから素晴らしい。強い雨のシーンが2回ぐらい出てくるけど、これは『アダプション』や『マリとユリ』でヒロインがシャワーを浴びる場面に相当するのかも。後半でステージの他は何もない原野での空撮が数回出てくる場面がかっこ良くて、青山真治かよと思わず突っ込みを入れたくなる。撮影監督はケンデ・ヤーノシュ。
マールタの他の作品だと昔の日活みたいにベタなサントラが何度も流れてきて少しげんなりさせられるけれど、この映画は例外的に音楽の活用が上手い。ヒッピー的な要素だったりプログレや自国の詩人の詩を歌にしたりと、その後のソ連による統制が入る直前の束の間の自由の雰囲気が出ている。パンフレットの村尾泰郎氏の解説のお陰で、ある程度この映画に登場するミュージシャンの音源を調べることができた。
Illés / Élünk És Meghalunk
Kex Együttes / Család
Sarolta Zalatnay / Lányok, Ne Sírjatok
Tolcsvay Trio / Évek Óta Úton Vagyok※
※Tolcsvay Testvérek, Tolcsvay Bélaのフォークデュオの音源は見つからなかったので、参考までにその後のトリオの曲を。
『闇のバイブル 聖少女の詩』で有名なヤロスラヴァ・シャレロヴァはヌーヴェル・ヴァーグ的なミューズの位置づけだけど、他方でユリという役名からもその後の作品へ続く一貫した女性像も感じさせる。ただし、この作品ではマールタらしい主題は未だそれほど深掘りはされておらず、問題提起の水準なのは否めない。やはりユリというキャラクターが本領を発揮するのはモノリ・リリにおいてであろう。
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