週刊ゲーム漂流記:第5回『RPGアツマール』
メジャーマイナー・プラットフォーム・有料無料・新旧問わず、面白いビデオゲームなら何でも紹介していこうというコンセプトの「週刊ゲーム漂流記」。
第5回は、個性的な自作ゲームが集まる『RPGアツマール』特集。
『RPGアツマール』は、RPGツクールMVで作成されたゲームを投稿したり、プレイできる個人ゲーム投稿サイト。HTML5とJavascriptで動作するため、気になったゲームがあれば、PCからでもスマホからでもすぐに遊べるのが最大の利点だ。niconicoのサービスなので、ニコニコ動画や生放送と同じ感覚でコメントを流すことができ、クリエイター推奨プログラムにも対応しているため、ゲームの製作者は報奨金を得ることもできる。
RPGツクールMV内からワンクリックでゲームの投稿が可能であることも手伝って、その顔ぶれは斬新であったり実験的であったり、個性に富んでいる。また、定期的にメーカーとのコラボや自社ブランドを用いたハイクオリティな公認ゲームが発表されたりと、サービス開始2周年を間近に控え、今最も熱いブラウザゲームプラットフォームの一つといえる。
今回はそんな『RPGアツマール』に投稿されたゲームの中から、サクッと遊べる短編をいくつかピックアップして紹介していこう。
『黒い森のさくらんぼ』
可愛らしい双子を切り替えながら、黒い森のなかを進んでいくステージクリア型のパズルアドベンチャー。
各ステージにはドアが配置されていて、双子のうちどちらかが辿り着ければステージクリアとなる。なので、片方がスイッチを押して道を開いている間に、もう片方がゴールを目指すといった解法が基本になってくるわけだ。
しかし、森には危険な罠や仕掛けが設置されていて、そういった普通の方法では突破できない場合も多い。
例えば、どうしても通れそうにない針の山を越えるためには、双子のうちどちらかを串刺しにして足場にするしか方法はない。
どちらを犠牲にするかは自由だが、どちらかは必ず犠牲になる。そうしなければ、このゲームのパズルは解けないよう設計されている。
なんとも心苦しいことだが、幸い(?)にも、実はこの双子は悪魔という設定なので、何度死んでも次のステージでは何事もなかったかのようにケロッとした顔で復活している。また、二人は大変な仲良しで、どっちが犠牲になったとかそんなことで関係が悪化したりすることもない。たぶん。
本作はα版であり、ステージ数は11月16日現在で8つまで実装されている。全てクリアしても数分ほどで終わるボリュームだ。今後は定期的に新規ステージが追加され、またユーザーによるフィードバックが内容に反映されていくかもしれないとのこと。
愛らしいビジュアルと童話的な世界観のなかに、静かな狂気の片鱗を覗かせている。今後の拡張に期待のパズルアドベンチャーだ。
ゲームプレイは上記からどうぞ。
『JKパンチ』
女子空手チャンピオンの女子高生みさきちゃんが、通学路に現れる痴漢野郎を撃退するファミコン風アクションゲーム。
ゲームを起動してまず驚くのが、軽快なノリのチップチューンに乗って動きまくるタイトル画面。まだ何も始めてもいないのに、もう既になんだか幸せな気分になってくる。
ゲーム内容はシンプルな横画面アクションで、移動は奥行きなしの左右のみ。空手による突きと蹴りを駆使して痴漢のライフをゼロにすればクリアだ。
突きは間合いが狭く、威力も弱いが、発生が速いので連続で叩き込める。逆に蹴りは間合いが広く、威力も強いが、発生がやや遅い。またどちらの攻撃にも気絶値が設定されていて、一定値蓄積させると相手は気絶する。この時に攻撃すると強力なマウント攻撃が発生し、特大ダメージを与えることができる。敵のライフはこちらの倍以上もあり、しかもガードしてくるので、このマウント攻撃を活用していかなければ勝機はないだろう。
しかし、相手もマウント攻撃を多用してくる上に、蓄積させた気絶値と減らしたライフは時間と共に緩やかに回復していくので、守りに入っているとジリ貧になってしまう。だからここはアグレッシブに、再起不能にするくらいの勢いで痴漢をボコボコにしていくのが望ましい。
というか、この痴漢が全体的におかしい。女子高生とはいえ空手チャンピオンの蹴りを完璧に防ぐだけでなく、ガードと同時に流れるような動きで後退して蹴りの威力を殺したり、隙の無い構えから鋭い蹴りを放ったりと、痴漢なんてやってないで今すぐ格闘技やれよと突っ込みたくなる逸材である。ちょうど見た目的にもムエタイ選手っぽいし。
コツが分かればあっさりクリアできてしまうが、アクションにもパターン違いがあったりと、細かな部分の作りにも感心する。痴漢を撃退した後のみさきちゃんの決めカットは必見。5分くらいで終わると思うのでぜひ挑戦してみて欲しい。
ゲームプレイは上記からどうぞ。
『Anon』
見るからに緑っぽい女の子の話を聞くだけのワンウェイ・コミュニケーションゲーム。本当にただ話を聞くだけで、選択肢が出てくるわけでもないし、好感度が上がって物語が進行したりするわけでもない。クリックするごとに76パターンあるテキストからランダムに台詞が吐き出される。一応メニュー画面から話しかけるコマンドは選択できるのだが、現在対応しているのは天候に関する4つのワードだけ。聞いたことのある台詞が記録されたりするのだが、全て聞いても特に何も起こったりはしない。
でも好き。このゲームなんか好き。
「ほっぺたが結構伸びる」とか「変な味のお菓子を見つけるとつい買っちゃう」とか、素朴すぎる話題しかしない亜音(あのん)ちゃんを見ていると、とても心が落ち着く。大きな音やフラッシュの演出が苦手だと相談すると、なんとかするよう頼んでくれるくだりも、とても好き。
作者的に、本作は「非ゲーム」という位置づけらしい。実験作品なので気まぐれで消してしまうかもと告知しているので、もし気になるなら今からでも彼女に会いに行ってみよう。
ゲームプレイは上記からどうぞ。
『サラダポーカー』
ここまで可愛い女の子たちを見てきたが、最期の締めはもちろん。そう、サラダですね。
本作は、老若男女誰でも知っているサラダポーカーを題材にしている。ほとんどのプレイヤーはルールを最初から理解しているので、ゲームプレイへの没入が瞬く間に行われるという点がまず強い。
サラダポーカーの役については、いまさら説明するまでもないので割愛させて頂くが、本作は「ツナサラダ」や「ハムサラダ」といった定番中の定番に加え、「一品サラダ」などのハイリスクハイリターンな玄人向けの役にまで対応している。さすがは闇のゲームを謳うだけのことはある。
本作は、この世界に数多に存在するサラダポーカーゲームと比較して特筆すべき点は見受けられないが、人生において何度も発作的に訪れるサラダポーカー欲を満たすための選択肢はいくつあっても無駄にはならない。ぜひ有効活用して頂きたい。そして私は今無性にシーザーサラダが食べたい。
ゲームプレイは上記からどうぞ。
今回は以上。しかし『RPGアツマール』には、まだまだ貴方の知らないゲームが多数存在している。時間のある時に、ゆったりと散策してみるのもいいだろう。
ココイチでカレー食べます。