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週刊ゲーム漂流記:第8回『Unity 1週間ゲームジャム後編』

メジャーマイナー・プラットフォーム・有料無料・新旧問わず、面白いビデオゲームなら何でも紹介していこうというコンセプトの「週刊ゲーム漂流記」。
第8回は、お題に沿って1週間でゲームを制作する『Unity 1週間ゲームジャム』特集の後編。

Unityで制作されたゲームを無料で投稿・公開できるサイトunityroomが不定期開催しているイベント、『1週間ゲームジャム』。先月で10回目を迎えた本イベントの参加作品の中から、特に私が注目した10作品を2週に渡って紹介していこうというのがこの特集だ。前回の個性豊かな5作品に負けず劣らずな残りの作品を、今回もばっちり紹介していく。

※前編の記事はこちら。

『GyRation』

自動攻撃&固定状態の自機を回転させて、迫ってくる敵を撃墜していくシューティングディフェンスゲーム。ミニマルデザインの妙が光る一作。

『GyRation』は、エリア外から押し寄せてくる敵を迎撃しながら10秒間耐え抜いて、全10Waveを制していくシューティング+タワーディンフェンスゲーム。射撃は自動で行われるので、プレイヤーはエリアの真ん中に固定された自機を回転させて敵を撃墜していくだけでいい。内容自体は極めてシンプルなのだが、そのデザインの合理性に目を見張る。例えば円型のエリア枠が時間と共に消失していくのだが、それは制限時間である10秒のカウンターとして機能しているし、BGMもちょうど10秒で終わるようになっているので、視覚と聴覚の両方から直感的にWaveの終了時間を把握できる。また、その流れで数字表記のUIは体裁だと言わんばかりに、自分の好きな位置へ移動させられるようになっている辺りも面白い。Waveごと構成にメリハリがあり、BGMでの盛り上げ方も巧みで、難易度設定も絶妙。射線が可視化されていたりするなど、遊び易さにも配慮されている。余計なものを可能な限り削ぎ落し、ジャンルの楽しさや気持ち良さのエッセンスだけを抽出することに成功している。

『GyRation』
https://unityroom.com/games/gyration

『寿司』

超極太巻き寿司をメイドさんが日本刀で豪快に叩き斬っていくゲーム。マグロの解体ショーに通じる一大エンタテインメント性を感じる。

日本刀を構えたメイドさん(眼鏡が赤アンダーリムなのが個人的にポイント高い)を操作して、超巨大な巻き寿司を10等分に斬り分けていくミニゲーム的なノリの作品。色んな世界で日本刀を振り回す達人メイドさんを見かけるが、メイドの必須スキルなのだろうか。ゲームのルールは、10秒間でいかに早く、正確に、巻き寿司を10等分できるかを競うもの。Zで任意に移動して、Xで斬っていく。残り時間と斬り分けた巻き寿司のそれぞれのスコアを合算したものが最終スコアとなるが、10等分していなくても、タイムアップや端まで到達してしまった段階で終了となるので注意が必要だ。まずは場数を踏んで、巻き寿司を斬り分ける最適な幅を感覚として身体に刻み込もう。巻き寿司を斬っていく感触が気持ち良く、テンポも速いので、ハイスコアを狙っていると止め時を失ってしまう中毒性がある。ちなみに私の最高スコアは9579点なので、抜けるものなら抜いてみろ!

『寿司』
https://unityroom.com/games/afolyte_sushi

『イチカゼロカ』

ワンクリックでゾンビを生者に戻していく世紀末ライン作業ゲーム。ワクチンの開発よりも、ネクロマンサーを国家資格にした方がゾンビ災害対策になるのではという気づきを与えてくれる。

未知のゾンビウイルスのパンデミックにより、例によってあっさり崩壊してしまった文明社会。そのヤバさに、闇の住人であるネクロマンサーの少女もドン引き。仕方がないので、本来は生者を死者へ反転させる用途の呪術で、ゾンビを生者に戻していくことに相成った。シェルターに列を成して次から次へとやってくる大量のゾンビを、ワンクリックで生者に戻して避難させていくわけだが、ゾンビの中には生者も混ざっていて、それらに間違えて反転術をかけてしまえば即ゲームオーバーだ。もちろん、ゾンビの場合はもたもたしているとシェルターに侵入されてしまいやっぱりゲームオーバー。先頭以外は姿がシルエットで表示されるが、序盤のうちははっきりと見えない段階でもゾンビと生者を見分けられるので、かなり余裕がある。しかし、シェルターへの収容人数が増えてくると、シルエット的には同じに見えるキャラクターが出現し始め、反射神経の勝負になってくるので、間違えて生者をクリックしてしまうと「お前ら一回噛まれてゾンビになってから来い!」と身も蓋もないことを考えてしまう。さらに、ネクロマンサーの少女が可愛い上によく喋るので、台詞を読んでる間にゾンビがシェルターに侵入してしまうというトラップまで仕掛けられている。相変わらず、キャラクターの立たせ方や世界観のゲームメカニクスへの落とし込みが上手く、ついつい繰り返しプレイしまう魅力に溢れたゲームだ。

『イチカゼロカ』
https://unityroom.com/games/10dead

『つりピコ』

目押しで魚を釣り上げる新感覚釣りゲー。場合によっては、とんでもない大物も釣れる。

標識風のフラットなデザインが特徴的な『つりピコ』。100分の1秒単位でカウントアップされていく数字を止めることで、様々な魚を釣り上げてスコアを稼いでいく。数字を止めた時に同じ数字が揃っているほど大物が釣れるようになっていて、例えば9.09秒と3.99秒なら、どちらも9が2つ揃った時に掛かるタカアシガニが釣れることになる。数字は0.00~9.99の10秒間をループし続けるので、狙った数字が過ぎてしまっても止めない限りは何度でもチャンスが訪れる。のんびり釣ろう。スコアは魚の種類ではなく魚の大きさで決まるが、同じ魚を釣る度にスコア倍率が上がっていくので、ハイスコアを狙うにはその辺りを意識していくと良いだろう。とはいえ、釣れる魚の種類が豊富なので、スコアに関係なく色々な数字を揃えてみるのも一興だ。プレイする度に背景色が変わるのも、地味に良い配慮。釣りゲー成分が不足して禁断症状に陥っている人は今すぐ遊ぼう。

『つりピコ』
https://unityroom.com/games/pico_fishing

『十層世界』

世界の中に隠された世界へと、深く深く潜っていく多重構造アイテム探しゲーム。相撲取りのステルス性能が恐ろしい。

一枚の絵の中に隠された絵を発見すると、その絵が拡大されて表示され、その中からまた隠された絵を探して……という風に、全10層からなる絵世界を次々にダイブしていくのがこの『十層世界』。操作はマウスとズームのみで、ズーム状態で隠された絵にカーソルを持っていくと次の絵へと移っていく。非ズーム状態からでも一応分かるようにはなっているのだが、中にはかなり巧妙に隠されている場合もある(解像度の関係で絶対分からなくなっているが、上の図にはどこかに相撲取りが隠れている)。その割に制限時間は10秒と短いのだが、突破した時点の残り時間に10秒が加算されていくようになっているので問題はない。つまり、難関にぶち当たって時間切れになってしまったとしても、そこに至るまでの答えは分かっているので、再挑戦時には前回よりもたっぷりと探す時間が与えられることになるのだ。それにより、最後までクリアしようとするモチベーションが削がれないようになっている点が素晴らしい。絵から絵へと潜っていく感覚はアーティスティックな趣があり、単なるアイテム探しゲームの枠を超えたポテンシャルを感じさせてくれる。

『十層世界』
https://unityroom.com/games/tenworld

『WHEEL OF FORTUNE』

真っ直ぐにしか進めない純情な少年を導いて、少女との運命的な出会いを果たしてあげるボーイミーツガールな誘導型パズルゲーム。

前へ前へと動き続ける少年を、赤ブロックと青ブロックをそれぞれタイミング良く切り換えながら誘導していき、少女のもとへ辿り着かせていく本作。少年は壁にぶつからない限り常に前と進み、3ブロック以上の高さから落ちてしまったり、ステージを巡回している大人と接触するとゲームオーバーになってしまう。単純に対応するブロックを切り替えて足場を作っていくだけではなく、方向転換させたり、大人と鉢合わせないように移動するタイミングをずらすなどのテクニックを用いなければクリアできないようになっている。後半は中々手ごわい部分も出てくるが、ゲームの流れを一時停止してズームアウト視点から先の地形を確認できたり、チェックポイントが設けられていたり、任意に少年の歩行スピードを上げられたりするので、ゲームプレイに関してのストレスはほとんどない。テキストこそないが、ボーイミーツガールという分かりやすいテーマと穏やかなBGMが相まって、心地よい世界観を形成している。「真っ直ぐにしか歩けない」というゲームメカニクスで、少年の純情さを表現しているところも良い。全10ステージから構成されていて、最初から全てのステージにアクセスできるのだが、最終ステージクリア後の演出が素敵なので、ぜひ最初から通してプレイしてみて欲しい。

『WHEEL OF FORTUNE』
https://unityroom.com/games/rb

紹介は以上となる。え、「前回と合わせて10作品紹介するって言ってたのに、11作品紹介している」だって? 気のせいでは。

もちろんこの他にも、良かったゲームはあるし、自分が見逃してしまっている素晴らしいゲームだってあるだろう。しかし、一人の人間に与えられた時間というものは有限なので、全部チェックできるわけもなく。

というわけなので、この特集で紹介したゲームを遊んだあとは、自分でも色々と探してみてくれ! それで面白いゲームがあったら私にも教えてくれ!

ココイチでカレー食べます。