西武新宿線沿いの寂れたスナックで働く女たち

 私が働くスナックは、とっても面白い女性たちが働いております。お客は、まあ…ザ!労働者のにおいをさせた寂しいおじさんたちばかりで、都内なのに村みたいなコミュニティがそこにはあったり…する。働く女性たちはみんな出身地はバラバラで、生活も全然違うんだけど、私としては、「女」で繋がってる感じがして、とっても居心地がいい…のです。

 ショ子さん(38歳)は、そこで7年も働いている古株。風貌的には、背が低くて、黒髪ロング、よく黒い服を着ている(リップは赤!口元にほくろ、みたいなね)。カラオケで言うと、よく椎名林檎や、tinaの『magic』などをエロく歌ってる。この人が仕切っている日のお店が私は1番好きで、彼女は、発言や行動の取捨選択がとってもうまい。(日によってリーダーが違う→つまり店の雰囲気も変わる)
ほぼ全てのお客と顔見知りで、6割ぐらいの客がs子さんと外で会ったことがある、そこでは顔が広い、信頼の厚いお姉さん。そしてキングさん(キングギドラ)という体がとにかくドデカくて歯が汚くてお金がない、「グフフ」系の人にもとっても優しい、つまり基本的に慈悲深い。バランスを取るのが上手い。

 「歌手」のyみさん(35?)は、かきあげ前髪のボブでボーダーのカットソーがよく似合う。流し目と大きな口、形のいいおしりがチャームポイント。「団地妻、未亡人…。昭和の香りがする」とよく客から言われている。(ぱっと見で性欲が強そう)女性側から見たyみさんは、とにかく「いい人」。せかせかと動き回り、綺麗好きで、まあとにかく仕事をする。冬は温かいおしぼりを、夏は冷たいおしぼりを…気遣いや美意識も高い。そして彼女はどんなに態度が悪い客でも、いいところを探して、ちゃんと立てるタイプの接客をする。「そうね〜でも〇〇さんほんっとに素敵よお〜…やさしいわあ」
ただ面白いことにお酒を飲むとちょっとずつ本音が出てくる。急にお客に「めんどくせえーなあ…」とか言ったり、自論を展開してくれる。こないだは「女からはじまるの!女は海!海なのよ!」と言っていた、お客はぽかーんとしてるけど、私はキャッキャッ。(キター!)あと「女は愛嬌がありゃいいんだ」と言ったバカ客に、ぶりっこするのにも勇気がいるんだと言っていたのにもしんみりした。
 yみさんは、歌を歌う時は人が変わる。私はyみさんが歌う姿を見て「これがyみさんの生き様なんだな」と涙したこともあるくらいかっこいい!歌手なだけある!

 この2人の女性には可愛がってもらっているのだけど、なぜなのか。そう!私たち3人に共通することは、おそらく昔はめちゃくちゃメンヘラで性欲がしぬほど強い(わたしの場合は今も)と見立てている。この2人に、coccoや鬼束ちひろの話を振ると「あああ〜昔いっぱい聞いてたわあ…いいよねえ…」と遠い目をする。これぞ平成初期のメンヘラ!この2人はいまは、母なる方向に向かい、とっても慈愛に満ちたいい女だけど、鬼束ちひろを歌わせると、少し昔の顔が見えて、私はキュンキュンする。多分私たちは女としての美意識で繋がってるし、泣きながらご飯を食べたことがある人間として同志のような感覚がある、と思う…。


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