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2020J1第32節 サンフレッチェ広島vs横浜F・マリノス@ビッグアーチ


8月15日より長らく続いてきた22連戦、その最後の試合となった広島戦は、1-3というなんともほろ苦い結果に終わりました。

この試合の敗因を挙げるならば、「先に点を取られてしまったこと」です。特に相手が広島である場合には、先制点の行方が何よりも大きく試合を決めてしまうことになります。

前半33分の失点、これによって試合の趨勢が決まってしまったと言っても過言ではないです。広島に勝つ、ということを考えるならば、マリノスが最優先事項としてやらなければならなかったのは、「点を取ること」よりも「点を取られないこと」でした。それは自陣に引いてやり過ごすことではなく、押し込んで攻めながらリスクを管理して失点をしない、ということです。

これがいつも以上に大事である理由は、広島が徹底して自陣深くにブロックを組んで強固に守ってくるからです。彼らに焦りを生じさせ、前に引きずり出すには試合のスコアを優位に進めることが非常に重要な意味を持ちます。

しかし、この試合ではそれができませんでした。結局最後の最後まで広島の強固なブロック守備と向き合うことを余儀なくされました。

そこで今回は、そのブロック守備に対する崩しの局面でマリノスに何ができていたかを検証するレビューにしたいと思います。

構成は以下の通りです。

⑴広島のブロック守備の約束事
⑵マリノスの試行錯誤
⑶まとめ・考察

では、始めます。


【Starting Lineup】

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■横浜F・マリノス
 ◇基本システムは4-3-3
 ◇前節からスタメン6人変更(高丘、小池、チアゴ、和田、渡辺、天野)
 ◇前節から中3日
 ◇GK高丘はデビュー戦
■サンフレッチェ広島
 ◇基本システムは5-4-1
 ◇前節からスタメン3人変更
 ◇前節から中3日


【広島のブロック守備の約束事】

では、まずは広島がどのように強固なブロックを形成していたかについて述べます。

ざっくり言うと、"ボックス内に人数をかける"という非常にシンプルなものです。

フィールドプレイヤーの9人がボックス付近に密集し、相手にスペースを与えないことを主眼に守ります。

少し細かい論点に目を向けると、縦と横、それぞれの方向について守備の約束事を見出すことができます。

まずは””について。

ここでは、バイタルエリアのケアを重視します。つまり、DFとMFのラインの間のスペースです。
このライン間でボールを受けるマリノスの選手に対して、HV(両脇のCB)が前へ出る、もしくはボランチがついていくなどして、徹底した管理を行っていました。

続いて””について。

ここでは、ボールサイドにスライドして数的優位を確保します。特にボールサイドに人数をかけて攻撃するマリノスに対し、数的不利にならないよう人数をかけて守り、横方向のスライドを欠かさず行なっていました。


このように、よく整備されたブロックを構築していたことがわかります。


【マリノスの試行錯誤】

では、マリノスはこのブロックに対してどのようにボールを動かし、攻撃していたのでしょうか。

広島のブロックを攻略するにあたって、大まかな約束ごとが一つありました。それは、広島のHVが前に出てくる性質を利用してスペースを作り出すことです。

象徴的なのが27分のシーン。

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右サイドから左サイドへボールを動かしつつ、ティーラトンから前田へのスルーパスが開通し、ボックス内への侵入に成功した場面です。

絶妙なスルーパスを出したティーラトンも、最高のタイミングで裏に走った前田も素晴らしいのですが、ポイントとなったのはジュニオール・サントスのポジショニングでした。

彼がハーフスペースにいることで広島のHV野上を喰いつかせることができ、それによって背後のスペースが空いたことが分かります。

選手のポジショニングによって使いたいスペースを創り出し、そこを使う。この試合の前半では、こうしたロジカルな攻撃ができていました。前半の立ち上がりに攻勢に出ているように見えたのは、自分たちでうまくスペースを作って使うことが恒常的にできていたからだと思います。


しかしその一方で試合全体を見通したときに、こうしたスペースメイクを織り交ぜた攻撃の回数は多くありませんでした。むしろ連戦による疲労からかパスのテンポがなかなか上がらず、広島を振り回すことができていませんでした。

もしもこうした攻撃の回数を継続的にもっと増やすことができていれば、流れの中から点を取ることはできていたかもしれません。


【まとめ・考察】

今回の論点をまとめると以下のようになります。

■広島のブロック守備について
 ◇5-4-1でゴール前を固める
  ▼ボックス内に9人が入ることも
  ▼点を取ることよりも取られないことに主眼
  ⇒絶対に先に点を取らせてはいけない相手
 ◇縦横にスペース管理
  ▼ボールサイドに人数かける
■マリノスの崩しについて
 ◇約束ごと
  ⑴広島のHVを引き出す
  ⑵その裏のスペースを使う
  ⇒ロジカルなスペースメイク
 ◇試行錯誤
  ▼しかし…回数少なし
  ▼もっと回数を増やしたかった

以上のようになります。


22連戦がようやく終わりを迎えました。思い返せば8月15日のアウェイ大分戦からずっと週2で試合があったのですね。

その大分戦で前田大然とジュニオール・サントスはデビューを飾りました。

あのときと今を比べてみると、彼らがいかに成長したか、いかにフィットしたかが分かります。前田大然は最近になってようやくこのサッカーの中で自身のスピードを活かすことができるようになりましたし、ジュニオールサントスはこの試合で背後から楔のパスを受けるなどただのフィジカルモンスターではない、技巧派CFとしての顔も覗かせるようになりました。

2人ともまだまだ課題はありますし、それにはこれからも取り組んでほしいです。でも、彼らがこのチームのなかで一定以上のクオリティをもって動けるようになったことは、間違いなくこの22連戦の産物としてあります。

他にも渡辺皓太や和田拓也など、今まであまり出場機会を得られなかった選手がチームに欠かせない存在と言えるくらいに活躍している状況も、間違いなく連戦によって得られたものです。

そうした戦力の底上げという意味で、この連戦を経てマリノスは間違いなく強くなっているので、その先に待つアジアの舞台で存分に発揮してほしいですよね!

身体と頭をしっかりとリフレッシュさせた上で勝負の11月に臨んでほしいと思います。


(過密日程を乗りきった私も万葉の湯にでも行ってリフレッシュしようかなと思ってます、、笑)





10/28 Wed. 19:00K.O. J1第32節 広島3-1横浜




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