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【リスクとの向き合い方】Monthly Review 2021 Vol.2

こんにちは、ロッドです。

春がだいぶ深まってきましたが、我らがマリノスは依然として好調をキープしております。なんと、開幕戦で川崎に負けて以降、公式戦13試合負けなし。1試合平均勝ち点では川崎、名古屋に次いで3位と順調なスタートを決めています。

さあそれでは今月もマンスリーレビューを書いていきます。

どうぞ最後までお付き合いください。


【対象試合】

▼試合数:5試合
▼成績:3勝2分け 10得点2失点


vs湘南(Home) 1-1(Draw)


vsC大阪(Home) 1-0(Win)


vs仙台(Away) 0-0(Draw)


vs札幌(Away) 3-1(Win)


vsえふしー(Home) 5-0(Win)


《概観》
無敗!ルヴァンも含めて負け知らずで4月を終えました。素晴らしい以外の何物でもありません。今年のマリノスは負けません。

しかし気になるのは湘南、仙台との2試合で得点を取り切れずに勝ち点2をそれぞれ失っている部分ですかね。下位チームにやや取りこぼしがちなのが懸念点かなといったところです。強いチームは取りこぼしをしませんので、ここは要改善です。


【成果】

まずは今月の成果についてです。

今月の成果は、リーグ6試合で喫した失点数がわずか2という点に尽きますね。

過去3年のマリノスには考えられなかった数字、なぜこんなに堅いのか、それを見ていきましょう。

マリノスがこんなに失点が少ない理由、それは、リスクヘッジをしっかりしているからです。無謀なリスクは冒さず、かといってリスクテイクをしてチャレンジする姿勢はあくまでも崩さない。

試合によりけりですが、このバランスが絶妙に噛み合っています。

では、リスクヘッジとは具体的に何をしているのでしょうか?
ボール保持と非保持に切り分けて考えてみます。

■ボール保持→リスク回避志向
  ◇動きすぎないポジショニング
   (SBの立ち位置が好例)
  ◇無闇に縦に急がない
   (横パス多め)

■ボール非保持→的確かつ高強度のプレッシング
  ◇相手の強みを消すプレッシング
   (札幌戦では相手のキーマン福森にエウベルをべったり付けてロングボールを封殺)
  ◇前線の献身的なプレッシング
   (前田大然のプレスバックが好例)

以上のような要素が挙げられます。今季のマリノスを見ていると、「リスク」というものとの向き合い方にすごく気を遣っているように見受けられます。これは良くも悪くもです。
当然ながら「リスク」を冒さなければ点を取ることはできませんし、それが過ぎれば失点につながります。

そのバランスが非常に難しくて、ボス4年目にしてマリノスはようやくそこに向き合っています。

状況によってリスクテイクorリスクヘッジのどちらを重視するかを判断できるようになることをゴールとするならば、現状ではリスクヘッジを重視した戦い方を「引き出し」としてできるようになっている段階です。あとは「いつどこでリスクを冒すか」の使い分けをできるようになる部分が次のステップになります。

そう、実はリスク回避重視の戦いはこのチームが身につけた一つの型であり、引き出しにすぎないのかもしれません。


【課題】

では今月見えてきた課題についてです。

それは、失点数の少なさとは裏腹に、自慢の攻撃の爆発力が鳴りを潜める試合が特に4月上旬に続いたことです。

湘南、セレッソ、仙台、この3試合では得点がわずか2点と得点力不足を感じさせる形になってしまいました。

その後の札幌、えふしー戦では2試合で8得点と持ち直してはいますが、この2試合は相手の出方を含めてオープンになりやすかったことは考慮すべきです。よって、私は4月前半の3試合の課題は依然として残存し続けていると捉えています。

これは余談ですが、「相手を見る」今季のマリノスのやり方に照らして考えると、相手の出方や戦術の影響を非常に受けやすいんですよね。だからこそ、試合ごとにその様相が変わってくるので、同じ文脈で語れない試合が多いです。なので、出た課題は忘れずにキープしておくことが必要になります。

本題に戻ります。なぜ思うように点が取れない試合が続いたのか。これも前項にて述べたリスクとの向き合い方の話に関わってくるのかなと。

今季は立ち上がりからリスクを冒してガンガンフルスロットルで入ることが少ないです。それは試合を安定させることにも繋がりますが、一方でリスクテイクできずにジリ貧状態が続くことにもなりかねません。

例えば2019年であれば、キックオフと同時にフルスピードで入っていました。その迫力に相手も圧倒され、前半のうちに2点ないしは3点を取ってしまう試合も多々ありました。

この点、試合の入りを落ち着かせることは、爆発力や迫力とはトレードオフの関係になってしまいます。

しかし、これが今季のマリノスのやり方なので否定のしようがありません。これでやるんです。

となると次に考えるべきなのは、大きくリスクを冒さない時間に何をすべきか、ということ。一番楽に試合を進められるのは、リスクを冒さない状態でリードを奪うことなので、安定して勝ち星を拾っていくためにここはかなり大事なポイントです。

リスクを冒さない時間に何をすべきか、それは、リスクを冒さない枠組みのなかで少しでもゴールの可能性を高めること。ゴールの確率を高めること。

至極当たり前のことですが、これに尽きます。

ではゴールの確率を高めるために何をすべきか。ここでは3つを挙げておきます。これを読んでいただいた皆さんもぜひ考えてみてください。問いは、「リスクを冒さずにゴールの確率を上げるためには何をすべきか」です。

⑴単一の攻め方に固執しない
⑵トランジション局面に持ち込む
⑶セットプレーのチャンスを活かす

⑴についてですが、今のマリノスは相手を押し込んだ後にアーリークロスを連発する傾向にあります。もちろんある面ではこれも有効なのですが、これに固執しすぎるとゴールの確率をあげることにはなりません。相手も同じやり方であれば対応しやすいですしね。相手の頭と身体に負荷を与えるために、ありとあらゆる糸口で攻めにかかることによって、餌を撒くことも必要なのです。

⑵は、ACL・水原戦の成功体験が参考になります。
あの水原戦も同じように堅い守備の前に手をこまねいていました。そんなときにどうやって点を取ったか、それはトランジションです。

相手CKのときのカウンターやふとしたミスから生まれる速攻をゴールにつなげる、そんな強かさがあると良いですね。もちろん行ったり来たりする展開にはせずに、です。

⑶のセットプレーは、やはりサッカーにおける大事な要素です。マリノスには優秀なキッカーがいますし、今季は昨季までと比べてショートコーナーをするよりもセンタリングをあげる機会が多くなっています。中にオナイウがいることで高さ的にも強さを身につけ、その結果チャンスも作れています。均衡する試合であればあるほどセットプレーの重みは増すので、今後も研究に研究を重ねて効率よく得点を積み重ねてほしいものです。マリノスには優秀なキッカーがそろっていますからね。


よって帰結としては、リスクを重視するのは大事なことだが、それでも星を落とさないように、やれることはあるんじゃないか、ってところです。
あとはリスクを冒して攻めにかかるタイミングを外さないことも大事ですね。ここはピッチ内での選手による判断も必要になってくる部分です。


【なぜリスク重視の戦い方をしているのか?】

そもそもなぜ今季のマリノスはリスクとこんなに向き合っているのでしょうか?

それは、いまのレギュレーションのなかで結果を出すために必要なことだからです。

このコロナ禍で、

・過密日程
・5枚交代制
・飲水タイム

など、様々な部分でいつもと違うレギュレーションのなかでやらなければなりません。
要は、今までやっていたことがそのままできない環境に置かれたわけです。過密日程のなかで高いインテンシティを維持して毎試合打ち合いを演じるのは難しいですし、5枚交代制では相手チームが疲弊してくれません。

安定して勝ち星を積むために、毎試合波がなくパフォーマンスを維持すること、それが今季あらゆるコメントでボスが言っていることであり、それを突き詰めた結果がこのやり方に行きついているのでしょう。


【まとめ・考察】

リスクとの向き合い方は日に日にうまくなっていると感じています。
例えば、ホームアウェイという分け方ですね。ホームでは相手が引き気味で来る分、思いきってリスクを冒してやる反面、アウェイではリスク重視で相手を伺ってみたり。

今シーズンの試合を見ていると、その試合ごとのあらゆる文脈や背景を拾いながらチームで対応をしているのが顕著です。

これに関しては、監督やコーチ陣だけでなく選手が自分たちで判断をしている部分も大きいです。いまはチャントがない分、ピッチ内の声などが聞こえてきますが、かなり印象的だったワンシーンを取り上げます。


それは、4/16のアウェイ札幌戦のこと。

私は現地で見ていたのですが、非常に興味深いシーンを見ることができました。

前半のゴールキックの場面、GK高丘は前線にロングボールを放ることを決め助走を取っていました。すると、チアゴと畠中がスルスルと降りてきてショートパスを受けようとします。それに対して高丘はあくまでも「上がれ」という指示。

この押し問答が2,3回続いていたのが少し示唆的だと考えたのであえて取り上げてみました。

このシーン、もし監督であるボスが「ゴールキックは繋げ」と指示をしていたとしたら、高丘とチアゴ・畠中は共通理解のもと、スムーズにリスタートをしていたでしょう。その逆も然りです。しかし、ここまで意図が食い違うということは、彼らは明確な指示を与えられず、自分たちでどうするのが正解かを考えながらやっていることになります。

状況を考えて前に大きく蹴るのが得策だと考えた高丘と、繋ぐのが得策だと考えたチアゴ・畠中。

類似したシーンは、今シーズン試合を見ていくなかで何度か目にしています。試合の中でもお互いの意図を伝えあい、試行錯誤をしながらやっているんですよね。

相手を見て考えつつそれをチームに主体的に伝播させていくこと、これができれば常勝軍団になれます。

5月は力のあるチームとの試合が組まれています。正直、正念場です。





写真提供:ゆかさん

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