German & Spanish 嬢 Metal
Beyond The Black - Horizons (2020)
Beyond The Blackは2015年にアルバムデビューして今に至るが、その頃のボーカリスト=バンドのキーパーソンであるジェニファー・ハーベンは当時20歳前後で、その才能を早くも周囲に出しまくって、あのWackenフェスティバルに早々に参加したり、大物バンドやプロデューサー、アーティストからも評価されて充実した活動を行い、更に近年ではタレント的にボーカリストと幅広く活動している才女。自分が彼女の凄さを実感したのはここ最近で、YouTubeであれこれ探している時にSabatonの「To Hell And Back」をアコースティックバージョンでカバーしている動画を見たから。これ自体はそうかという程度だったが、他にも類似した動画を見ると彼女がピアノも弾きチェロも弾き、ギターも弾き、フルートまで吹き、歌っている姿を見て、もしかしたらとんでもない才女かと気になった。どうやらかなりの英才音楽教育を受けた経歴があるらしいが、とある時にメタルに衝撃を受けて、そっちにシフトして目立つ才能を開花させたらしい。だから歌も巧いし楽曲もどこかの何かに似てはいるもののその隙間を縫ったニッチながらも個性的な世界観を展開しているとはアルバムを聴いて気づいた。
アルバム「Horizons」は2020年にリリースされているが、既に5枚目のアルバム。まだ以前のアルバムを聞けていないので本作を聴いた印象だが、単純に聴きやすくキャッチーでメロディアスながらも民族的旋律も持ち込んでいる節も見受けられ、ヘヴィメタルと言いつつもWithin Temptationで聴ける歌謡メロディチックな柔らかさを持っている。この手の作風も既にゴシック・メタル、シンフォニックメタルから飛び出して、ひとつの女性ボーカルメタルと括られるが、中でも楽曲のセンスと出来映え、飽きさせない音作りで起伏に富んだ音楽性が突出しているから、久々にこの手の音にハマった。初めてゴシック・メタル系の世界を聴いた時以来、この手の作品はどれを聴いても結局は同じような作風が続くから飽きてしまったが、Beyond The Blackはそこに民謡のセンスが入っているからSabatonのセンスに近い。しかもBeyond The Blackはドイツ出身のバンドと言うから驚く。大抵のドイツのバンドならもっと硬質感がある印象だが、そのニュアンスが微塵も感じられず、こなれた抜けの良いメロディが飛び出してきて、アレンジも堅苦しくないから自分の感覚の古さを感じる、または彼女が新しいのか。加えて書けば幾つかの曲では近年この界隈で出て来ている80sユーロビートとの融合リズムも取り入れているし、アマランサのエリーザ嬢とのジョイントも果たしているので、若さもあって新しいものをどんどんと取り入れて自分の音楽性を広げている姿が聴ける。こうなると過去のアルバムを順番に聴いてその遍歴を味わいたくなる。以前のアルバムを眺めているとジャケットは見た事あったが、メタルに寄せたデザインだったからほぼ意識しなかった。今作の目一杯ジェニファー・ハーベン主役を打ち出した扱いに切り替えての売り出しは、この方が分かりやすい。ただバンドメンバーは少々複雑な想いになるだろうと勝手な想像。
アルバム冒頭からキャッチーな曲で始まり、歌謡メロディ、ユーロビート系にメロディのはっきりしたバラードチックなスタイル、ストリングスと融合したシンフォニックスタイルのメタルに勢い良く元気で快活なヘヴィサウンド、似たような曲に思われつつも実は全てが異なるバリエーション豊か、どころか相当幅広いサウンドアレンジを施した曲が詰め込まれているので飽きない。恐ろしい事に中盤以降もそのメリハリ感が凄くてダレる事なく一気に楽しめるばかりではなく、もう一度聴きたくなるし、どういう骨格で作られてるかも気になり、結局はジェニファー・ハーベンの歌声の円やかさと歌の巧さが惹き付けていると気付き、今度はどこが良いのか、コーラスの使い方やはっきりした声質と歌声も当然ながら、究極はセンスの良さと。この手のサウンドに割と飽き飽きしていたが、こういう本物、少なくとも自分にマッチするバンドや歌手が出てくるのは面白いし、色々聴き漁ってて嬉しくなる出会い。女性歌もの好きな方、オススメです。
好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪