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Sabaton & Amaranthe

Sabaton - Coat of Arms (2010)

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 ヘヴィメタルの幅の広さはロック史の広さと同じくらいあると考えて良さそうだ、どころかそれ以上の深さも持ち合わせているのは間違いない。普通の音楽やロック、ポップスでは出せないであろうテーマやコンセプトや演劇性をも網羅しているから、その取り入れる幅の広さが無限なところがヘヴィメタルの懐の深さ。更にフォークメタルなどと呼ばれるバンドの存在からも明らかなように、一見あり得ない組み合わせによるボーダレスなジャンルも堂々と君臨しているし、本日紹介のSabatonなどはミリタリーメタルと、音楽ジャンルではない部分でひとつの存在感を打ち出しており、それがまたど真ん中でまかり通っているのだから面白いどころか意味不明。古い人間がヘヴィメタルと聞くとあのうるさい音のジャンルか、とだけ思い当たるだろうが、それは間違いではないものの、今のヘヴィメタルはロックを聞く、と同じようにヘヴィメタルという幅がある事を知っておきたい。自分自身もそういう感覚ないままに取り組んでいたら、全くキリの無い奥深く幅も広く、そしてまた今時点でも新しく生まれ出ているヘヴィメタルの闇に取り込まれている。ただ、その距離感は自分でも測りながら接しているのはあるので、偏ったバンドばかりを聴いている気がする。

 Sabatonの2010年リリースの5枚目のオリジナルアルバム「Coat of Arms」は素直に傑作だし、名盤だろう。そもそもサバトン自体が名バンドでその音楽性の高さとメロディの良さに加えて個性的なスタイルも持ち得た正しくシーンのトップに君臨しておかしくないレベルにあるから傑作、名盤以外はないと言い切れてしまう。これまで自分が聴いてきたサバトンのアルバムは裏切られた事はないし、必ず毎回コイツら凄い、と思う瞬間が常にあるから随分なプロフェッショナル感を抱いている。その反面メンバーチェンジが激しく、随分と入れ替わっているのもあるが、ボーカルのヨアキムとベースのパルだけは不動の存在で、この二人が楽曲もイメージも世界観もすべて作り上げているからこその存在感。そして知られているようにサバトンはミリタリーバンドと呼ばれるようにどの作品でも戦争のシーンを歌詞に持ち込み、ひとつのドラマを作り上げている、もしくは事実を歌い上げているのでかなり特殊な世界を作っている。それだけでも称賛に値するが、更に音楽性でもグリグリのメタルサウンドでありながらキャッチーで、およそイメージとは似つかわしくないが、シンフォニックな美しさとオーケストラがマッチするサウンドと荘厳なクワイヤも持ち込んだ北欧的様式美な壮大なサウンドが当然のように根付いている。ボーカルが漢なダミ声で歌われているので、その美しさよりも漢の香りが強く漂うが、それを抜きにするとかなりハイレベルでクラシカルですらあるEpicaにも負けないシンフォニックさを持っている。更にコーラスワークも秀逸で、バイキングメタル風味やフォークメタル風味、要するに民族的なメロディのエッセンスも自然に出てくるのでスウェーデンの街中だけでなくヨーロッパの森林風味も香ってくる不思議。

 そんな音楽性の幅広さに加えて先にも書いた戦争テーマの歌詞が載せられており、本アルバムでもミッドウェーの戦いや英国空中戦、ノルスク・ハイドロ重水工場破壊工作などとマニアックな史実からも引っ張られており、それだけで博学的にも見えてしまうが、実際この手の歌詞を作り上げると歌詞を覚えるのにも手間取るような気がするがどうなのだろうか。ヨアキムが好きだから問題なく覚えていられると思っていたら、実際ほとんどの歌詞を書いているのはベースのパルだそうで、ヨアキムは毎回その歌詞を覚えるのが大変らしい。なるほど聞き慣れない単語も多数飛び出してくるし、だからこそ目立ちやすいし、英語ネイティブでなくてもそう思うのだから現地からしたら妙な語呂ばかりが聴かれる事だろう。そして本作、やはり何度聴いててもどの曲も疾走感溢れるシンフォニックサウンドでダレる事なく、グサグサと心に刺さってくる楽曲ばかりで、サバトンもまたギターソロを聴かせるバンドではないのであくまでも楽曲の展開でここまで聴かせてくれる見事さ。最後に収録されている「Metal Ripper」はメタルの名曲群やバンドの曲をモチーフにした歌詞で見事にトリビュートしているようで、ところどころ自分でも苦笑いできるフレーズや歌声も聴けるのも楽しい。

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好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪