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70s UK Glam Rock #2

Slade - Slayed? (1972)

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 グラムロックなのかロックンロールバンドなのか宙ぶらりんながらもインパクトを放っているのが愛すべきスレイド。ねっちいバンドで且つダサいけど、音楽はなかなか格好良い愛すべきバンド。個人的にはなんとなくAC/DCと共通項が多い。決してスマートにカッコ良くないけどエグる良さがある。もしかしたら男にしかウケないバンドかもしれない。

 下手なベスト盤聴くならファーストアルバムの「Slayed?」を選ぼう。後にクワイエット・ライオットがカバーする「Mama Weer All Crazee Now」はもちろん収録してて、クワライが結構忠実にカバーしてるのも分かって好印象。もうひとつの「Cum On The Feel The Noize」はベスト盤になるけどこっちも良い。ジャニスの「Move Over」もあって歌はヘタウマだけどアクが強い。やはりB級だけど想い入れのある人には堪らないバンド。昔、レコードが全然見つからなくて、結局CD時代になるまで探せなかった。最近は1000円くらいで見かけるので哀しいけど、欲しかったアルバムジャケットだった。時代的にシーンとしてはグラムロックのカテゴリで売り出されたけど、後のアルバムも合わせて聴くと軽くないし、ヘビメタ系に近い。

Slade - Slayed? (Expanded Edition) (1972)

 1972年頃の英国ロックバンドの出自は皆が皆グラムロックバンドと位置付けられたのかもしれない。あまりにも一括りに出来ないルックスのバンド、音楽性のバンドが纏められてグラム・ロックとカテゴライズされているのを見る度にそう思うが、一般的にグラムロックとは綺羅びやかなメイクをした派手派手なルックスがまずありきで、音楽性はややウネリのあるようなミドルテンポのノリを中心としながらもポップなメロディでキャッチーに受けるサウンドを出すバンドと。そういう定義だとボウイですら当て嵌まらなくはなるが、ボウイやT.Rexが筆頭格、ただ、その他となるとSweetやGary Glitterあたりになり、自分的には多分そこまででしかないと今は思っている。ただ、一般論だとそこにRoxy MusicやSlade、Silverheadあたりも入ってくるので定義が曖昧になってきて果たしてそれは音楽性やファッション性だけなのか、それとも1972年前後の軽やかなロックを奏でるバンド全般なのか、と。単語に拘る必要もないが、それで損しているバンドも多いだろうと感じたので書いてみた。

 Sladeの4枚目のアルバム「Slayed?」は1972年にリリースされ、恐らくSladeの歴史の中では一番のセールスと充実度を誇る名盤だろうし、英国ロックアルバムの名盤にも数えられるほどの作品として知られている。自分もその流れから随分早い時点でアルバム探しに走ったが1980年代中頃にはどのレコード屋へ行っても見ることはなく、当然中古レコ屋で探しまくるも見当たらず、幻のアルバムとすら思っていたほどだ。タイミングがズレると70年代のロック名盤はほぼまったく手に入らなかった時期で、同じようにSilverheadもMott The Hoopleも苦労して探していたが、Sladeの場合は1980年代中頃はQuiet Riotのカバーでオリジナルバンドが持ち上げられた事もあってSladeもアルバムをリリースして再浮上していた時期だったのに以前のアルバムは入手出来ないままだった。それからも事ある毎に一応探していたが、ほぼ見る事なく、レア盤屋で5千円くらいで見かけた事あったがさすがにそこまで出すのも、と躊躇って見送り、結局CD時代になってからアルバムを手に入れた経緯がある。もっともその前にどこかの誰かにカセットテープで録音してもらったのがあって、それを聴いていたので曲は知っていたが、やはりアルバムが欲しくなるものだからしょうがない、苦労した事を思い出した。そんなアルバムも2006年にはリマスタリングが施され、ボーナストラックも追加されて再発されていたので、そちらを聴いているが、どうして70年代のこの頃のバンドの音はこんなにも元気で勢い合ってパワフルでノリノリでロックしているように聴こえるだろう。正に目の前でロックしてくれているかのように生々しく聴こえてくるサウンドが無茶苦茶心地良く、また飽きることなく聴けてしまうのはやはり英国の一捻りも二捻りも施されているギミックからだろうか。

 どの曲も3分台でキャッチーでハードロックにハードポップに、ノディ・ホルダーのしゃがれ声でシャウトする歌声がやたらと目立ち、案外ピアノでもアクセントが付けられながら、デイブ・ヒルの歪んだギターが印象的ですらあるが、決してグラムロックのそれ以上にハードにドライブしたR&Rが繰り広げられ、AC/DC直結の音、KISSの源ともなり、もちろんQuiet Riotそのままでもあり、はてはOasisのキャッチーなメロディにも繋がるバンドの最高潮が聴ける。どの曲もどの曲もマーク・ボランとはまた異なるブギ的センスもありつつのコード・カッティングが中心になったハードロック風味の作品で、パワーポップの大元とも言われる理由も分かるアルバム。その中でも一番目立つのはジャニス・ジョプリンのカバーともなる「Move Over」で、まさかジャニスのこの名曲をこの時点でカバーするとは大胆すぎると思いきや、聴いてみるとジャニスと何ら遜色ない歌声とパワフルさと魂でしっかりとロックしてくれているし、バンドのアレンジや演奏もジャニスの所よりも圧倒的にそれらしく、やはり英国風味の質感が漂っているが、また別のカッコ良さがある。これこそスレイドの実力と言わんばかりに見せつけてくれるのもスカッとする。「How d'You Ride」「The Whole World's Goin' Crazee」「I Won't Let It 'Appen Agen」「Gudbuy T'Jane」「Mama Weer All Crazee Now」とご機嫌なスレイド流のR&Rそのままが流れてくるとついついノリノリになって聴いてしまうし、スタジオ・アルバムのくせにここまでライブ感出せるのかと思うばかりのドライブ感が実に凄く、こういう録音が出来るものなのかとつくづく思う。チャス・チャンドラーの力量なのか、バンドの本質なのか、その両方だろうが、とにかくグルーブ感が凄い。一方の「Look at Last Nite」や「Gudbuy Gudbuy」「I Don' Mind 」は少々落ち着いた感触の楽曲群だが、しっかりと聴かせつつもロックしてグルーブも漂っているのだから恐れ入る。つまりこのアルバムはどれもこれも恐ろしいばかりのグルーブ感に包まれたロックアルバムで、単にグラム・ロックと片付けられるサウンドが詰め込まれているワケではなく、ロック史に燦然と輝く教科書のようなドライブ感を持つ名盤として聴くべし。最後の「Let the Good Times Roll / Feel So Fine」は彼らがそういうロックを奏でられるのは当然とばかりのカバーソングで、何ら違和感なく、この手のをやらせたら天下一品と宣言しているかのような収録で、見事にR&Rそのままを進化させたスタイル。

 2006年のリマスター盤リリース時に日本盤は「Take Me Bak 'Ome」と1973年にリリースされたシングル「Cum On Feel The Noize / Skweeze Me, Pleeze Me」が収録されていたが、英国やヨーロッパでは基本的に同時代のシングルAB面だった「My Life is Natural」「Candidate」「Wonderin' Y」「Man Who Speeks Evil」を収め、更にソノシート盤からの「Slade Talk To Melanie Readers」が収録されており、それぞれ異なっているので要注意。日本盤がそれら全部を収録しなかったのも珍しいパターンだが、リリース時期に多少の差が生じただろうか。アルバムはグイグイとドライブする楽曲群で攻め立ててきていたが、シングルの方はそこまでグルーブさせてもおらず、もう少し聴きやすいサウンドとノリに仕上げているのは意図的か、曲のせいか、それともバンドがアルバムリリース時には成長を遂げてのドライブ感だったか、なかなか深く聴いていくとその様相の違いも楽しめる。ちなみにスレイドの曲名では妙な英単語に変えられて記載されているが、労働者階級の彼らからするとごく自然な単語らしく、読み書きが得意でない連中はこうして発音通りに単語を並べて書くようで、日本語で言えば漢字分からないから平仮名で全部書くのと同じく、単語知らないから発音を頼りにローマ字並べてみた的な書き方のようだ。意図的とは言えかなり個性的に見えるインパクトはある。

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好きなロックをひたすら聴いて書いているだけながらも、聴くための出費も多くなりがちなコレクターの性は皆様もご承知の通り、少しでも応援していただければ大感謝です♪