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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第四十六回】  製品引き渡しと不適合品の処置のマネジメントシステムは


熊さん 「コンチハー、大家さん」

大家さん 「アー熊さん、少々お疲れのようだね。」

熊さん 「へぇ、チョット仕事が立て込んでヤシてね。そらそうと、ISO9001の話しの方は前回、生産活動が終わっていよいよ出荷にたどり着いたようでヤンしたね。」

大家さん 「ああ、そうだったな、8.6の製品及びサービスのリリースって処だね、ホラよっと。」

熊さん 「でもなんですねぇ、リリースなんてアッシらには珍しいイキな言葉を使ってイヤスね?」

大家さん 「イヤ、粋を狙ったわけじゃあないと思うよ。日本の品質管理はもの作りに焦点を当てていたので完成品の蔵入れまでの管理を主に考えて来た感じがあったようだ。けどな、ISO9001の品質マネジメントシステムの考え方は買い手に対する説明責任を目的にしてるんで、製品の所有権が売り手から買い手に移転される時点までの事を考えなくてはならないんだ。出荷という言い方は所有権が移転するという意味を持たないんでどうしようか考えたけど、適切な訳語が見当たらなかったと言うことだろなあ、リリースというカタカナ言葉を使うことにしたってことだと思うよ。」

熊さん 「へー、そうなんで・・・。なんかしっくりこないんでヤンスけど、たしか8.5.1のc)でプロセスのアウトプットの監視と測定をさせろってぇ要求があったと思いヤスが、なんかダブっていやせんでスカイ?」

大家さん 「ああ、いいとこに気がついたな、熊さん。8.5.1 c)でそんな要求をしていたのは確かだがな、それはプロセスのアウトプットの管理基準への検証という目的のための行動の要求で、最終の引き渡しのための買い手の要求事項への検証を要求したワケではなかったんだ。で、最終的にリリースの前になって、買い手の要求事項への検証のための行動が完了していることが必要になると言うわけだ。」

熊さん 「てぇ事は、始めに大家さんが言ったことを思い出すってぇと、ISO9001は買い手の要求事項を基本にして製品を作り引き渡すってぇ契約型の商売を考えて作られているんで、そうするってぇと、建売住宅みたいに売り手が今どきの流行りを考えて作った製品を、買い手が選ぶという標準量産型の商売にはそのままで当てはめるワケには行かねえ、ってぇ言うことでヤンスかね?」

大家さん 「そうなんだ。だから、ISO9001は適用に当たって必要な調整を認める『標準』で、そのまま当てはめなきゃならん『規格』ではないんだ。それで、買い手の要求事項への検証って言ってもな、最終段階の検査だけと言うわけじゃあなく、場合によって生産プロセスの進行の途中で行う測定や、買い手の手許で行う試運転の結果なども入れた何段階かの監視や測定の結果で結論が引き出されることもあるんだ。」

熊さん 「だから、どうするか買い手と予め取決めをして計画をしておかねぇとなんねいってワケですか。」

大家さん 「そうなんだ。監視や測定をするのは実務レベルの仕事だけど、検証は会社レベルの仕事で、引き渡す買い手が持っているだろう懸念を考えて公正に監視や測定の結果をレビューして確認出来る人を当てないと買い手は安心出来ないだろうな。」

熊さん 「品質不祥事を起こした企業のエライさんには煎じて飲ませたい話しでヤンス。で・・・、後でいつでも確認出来るように、結果を証拠として記録しておかなきゃならんてぇのは、こりゃよく分かりヤス。」

大家さん 「うん、そうだろうな。お前さんのトコロだって、親方が建築の完成図面や文書としていろんな検査結果を保存してるよな。これは、契約型の仕事でなくても、似たことが必要なんだ。」

熊さん 「よーく分かりヤシた。ありがとうござんした。
じゃぁ、8.7の不適合なアウトプットの管理って事に移っておくんなさい。」

大家さん 「ああ、良いよ。」

熊さん 「あのぅ、なんで不適合な製品と書かず、アウトプットなんでヤンス?」

大家さん 「これはワシの推定だがな、不適合であれば製品に分類しちゃいけないと言うことじゃないかな。」

熊さん 「そうでスカイ。で・・・、この始めに、要求事項に適合しないアウトプットが誤って使用されること又は引き渡されることを防ぐために識別し、管理することが必要だって書いてヤスけど、当たり前の事でガス。なんで今更、って思いヤスけど?」

大家さん 「ここで大切なことは『確実にしなければならない』ってことだよ。一人ひとりに注意しろって呼びかけたって、一人ひとりのやり方が違ってはうまくいくはずがないから、上の方でやり方をキチンと決めて製品の記録票や移動票などを用意しなくちゃならんと思うよ。」

熊さん 「そう言えばそうでヤンスねぇ。」

大家さん 「不適合品は不適合なんで、修正したって再度検証せずにそのままリリースしちゃならんし、無断で引き渡ししてはならんのだよ。不適合なアウトプットとして四つが示されているけど、どれもc)の顧客への通知をすることが原則だろうな。」

熊さん 「勝手に特別採用ルールを作って買い手に無断で不適合アウトプットを引き渡した事例が不祥事の事例にあったようでヤンスが?」

大家さん 「もっての外の事だろう。特別採用が正しいと思うなら、キチンと買い手に説明して納得してもらう事が必要だ。ただ、買い手の方も冷静に説明を聞くだけの度量も持ってもらいたいと思うけどな。」

熊さん 「8.7.2に書いてある記録の保持の要求は買い手への説明責任として考えればよく分かりやす。」

大家さん 「じゃあ、今日はここまでにしようじゃないか。

熊さん 「ありがとさんでヤンした。この次は第9条のパフォーマンス評価からでヤンスね。」

 (次回に続く)

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