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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第三十九回】  設計と開発の狙いとマネジメント-後編


熊さん 「アレ、言っているウチに変な事に気がつきヤシた。普通、素材は見本で評価するものとすると、売り手で見本品が既にできているって事でヤンスから、ホラ、見本品を提供出来るって事は設計・開発がもう終わってるってぇ事でヤンス!」

大家さん 「そう、そこなんだよ。機械などの受注契約製品と違って、素材などの量産品の場合は8.2の製品、サービスの要求事項の明確化を終えたら、8.3を飛ばして8.4の事に行って良いはずなんだ。」

熊さん 「でも、よく考えないと、うっかり設計・開発の説明責任ってぇのも必要だって誤解をしそうに思いヤスねぇ。」

大家さん 「そうだね。それとな、企業のエライさんのなかにはISO9001が取り上げている設計・開発の活動が顧客の要求をもとにした設計・開発の活動の要求という現実的な認識が薄くてな、自分のトコの中長期の成長のための研究・開発と混同している事があるようだな。また、研究・開発の生産性向上がISO9001に取り組む事で図れるという期待をしていることもあるようだな。また、そんな事をあおっているコンサルタントもいるという話しも聞くよ。」

熊さん 「そうですかぃ。買い手を大事にしようという狙いを、自分の役にたつ事を大事にしようという狙いにすげ替えるってぇのでは、ISO9001を有効に使う事にはならねぇでしょうねぇ。」

大家さん 「本来、買い手の要求にあわせた設計・開発は要らないんだけど、売り手が市場調査などを行って設計・開発のテーマを決め、新商品を開発して顧客開拓活動を行っている事を仕組みとして明確にする事は、顧客開拓活動の折の説明に取り込めるんで、ISO9001対応として無駄ではないだろうと思うな。
だから、設計・開発を認証範囲に含めることがあっても良いがな、その時は前に言ったような自分で決めた要求事項を自分で進めていくような、客観性の欠けた自己満足のシステムにしないようにして欲しいと思うな。」

熊さん 「そうでヤンスね。で、8.3.2に書いてある設計・開発の計画ってことの中で幾つか説明して欲しい事があるんでガスが・・・、」

大家さん 「ああ良いよ。」

熊さん 「b)に、要求されるプロセス段階、ってぇ書いてありヤスが、これ、よく分からないんでヤンス。」

大家さん 「これは『要求される』って事がキーになっていると思うな。誰が要求する事か考えると、設計・開発は第1条のいう顧客要求事項に関係するプロセスの一つだから買い手が要求することだ。で、何を要求するかと言えば設計・開発のプロセスのなかの段階で、何をするための段階かと言えば設計・開発のレビューをするための必要な段階だよ。逆に言えば、買い手は設計・開発のプロセスのなかで段階を指定して、設計・開発のレビューをしてくれと要求しているので、これを計画して実行してくれ、という事だな。」

熊さん 「たとえば?」

大家さん 「実際には色々あって一概には言えないけどな、例えば、機械製品であれば、概念設計段階、基本設計段階、詳細設計段階、試作段階などだろうし、素材製品であればビーカースケール段階、ベンチスケール段階、パイロットスケ-ル段階、実プラントスケール段階みたいな段階を設けてレビューして報告を保存しておいてくれ、あるいは、聞かせてくれと言ってると思うよ。」

熊さん 「c)の設計・開発の検証及び妥当性確認活動、って書いてありヤスが、この二つはどう区別をしてるんでヤンス?」

大家さん 「ほら、8.2.1で顧客が規定した要求事項、組織が規定した要求事項って表現が書いてあったろう?設計・開発に関係して言えば顧客が規定した要求事項ってのは性能要求事項で8.2.3で設計・開発のインプットになる事項で、組織が規定した要求事項ってぇのはインプットした性能要求事項から導き出した設計仕様のことで、8.3.4で検証を求められている事項だと思うよ。」

熊さん 「その他のことは、何とか分かると思いヤス。8.3.3、8.3.4も書いてある言葉はややこしいけど、何とかなりそうでヤンス。」

大家さん 「おや、そうかい。それなら詳しい説明はいらないね。」

熊さん 「へぃ、そうでがす。エーと、次は8.3.5のアウトプットに関してでヤンスが、『組織は,設計・開発からのアウトプットが,次のとおりであることを確実にしなければならない』ってありヤスが、確実にしなければならないってぇことはどうしろと言ってんでヤンスか?」

大家さん 「これは設計・開発部門だけでOKとするんではなく、関係部門も確認した上でトップマネジメントも責任を持つ事を暗に求めているんだと思うよ。大体、設計・開発が終わったら後は現業部門でよろしくって言えるほど設計・開発は簡単でないんでな、現業に移した後もしばらくは設計・開発部門が関与し、現業部門が安心して操業ができるまでフォローする態勢を敷いていないと、現業部門は責任を以て引き受けられないハズだ。このような移管の判断もあるので、トップマネジメントの関与が求められるハズだよ。」

熊さん 「なるほど、そう聞くとb)で言っている事も分かりヤス。」

大家さん 「監視、測定の要求事項,合否判定基準もアウトプットに含まれると言う事は、監視、測定法の決定も合否判定基準も決定権は性能要求を熟知している設計・開発部門にあるべきと言う事を意味してるから、現業部門に移った後もこれらの変更に対して設計・開発部門が関与する事を暗に求めているということだと思うよ。だけど、品質不祥事を起こした事例をみると、変更しようするときの品質マネジメントシステムが8.3.6が要求しているようにはなってないために役に立たなかったと思う事例があったよな。」

熊さん 「そうでしたなぁ。次は8.4の事でヤンスが、一休みしやしょう、疲れやした。」

大家さん 「そうしよう,そうしよう。」

 (次回に続く)

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