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落語形式で考えよう; 報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第三回】 三菱電機の車両用空調機不正検査問題


熊さん 「ちわー、大家さん。
                 上がらせてもらいますよー。」

大家さん 「熊さんかい、上がんな、上がんな。よくきたね。」

熊さん 「いやー、この前聞いた日立アステモといましたっけ、あの会社で適切でねえ検査が20年も続いていた原因は現場に問題があったんじゃねえかもしれねぇ、会社の仕事のさせ方の仕組みに問題があった可能性が大きいんじゃねえかってぇ話をさ、仲間にしたらみんな「ほう!そうかい!」ってことでアッシの株が上がっちまいましてね。」

大家ん 「ハハハ、そうかい。ま、熊さんの手柄話にしておこう。」

熊さん 「そんで、別の会社で調査報告が出ている事例を聞かせてくれるってぇ話だったンで、また聞きにきやした。」

大家さん 「ああ、そんな約束をしたかな。事例に事欠かないけどな・・、ン、そうだ、あれは去年の6月29日だった、メディアが、『三菱電機が鉄道車両向けの空調機器の製造で、35年以上にわたって出荷前に必要な検査を怠って架空のデータを記入したりしていたことがわかった』とスクープ報道していたんだよ。」

熊さん 「三菱電機といや、立派な企業じゃないですかぇ!」

大家さん 「そうだ。」

熊さん 「その鉄道車両向けの空調機器ってぇのは何ですかぇ?」

大家さん 「車両の屋根に乗っけてあるエアコンの事だよ。」

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熊さん 「ああ、あの車両の上に乗っかっているヤツですかぃ。」

大家さん 「三菱電機はスクープ報道のあった次の日の6月30日に『長崎製作所が製造する鉄道車両用空調装置の一部で、購入仕様書の記載とは異なった検査の実施や検査の不実施、検査成績書への不適切な記載を行っていたことが社内調査で6 月14 日に判明した。』というプレスリリースを公表したんだ。」

熊さん 「ン、てことは、前の日のメディアのスクープ報道はこの情報をどこから手に入れて書いたってことですね。」

大家さん 「独自取材だった可能性もあって、炎上を恐れて公表を急いだ可能性もあるがな。でー、不正な検査はたまたまじゃなく、前から繰り返されていたようなンだな。」

熊さん 「ホー、そうなんですかい!じゃ何ですかい、作業してた人の悪さだけじゃなく、これも仕事をさせていた仕組みのどこかに悪いところがあったっていうことじゃねえですか!」

大家さん 「ただ、検査が不正だったけど、製品については、プレスリリースで『これまでに出荷した当該製品そのものの安全・機能・性能には問題がないことを確認している。本件に起因する事故は確認されていない。』とは書いている。」

熊さん 「またですかい?世間様をゴマカソーってフテー魂胆じゃねえんですかえ?」

大家さん 「メディアの間ではマユツバだと不信感をあらわにしているところも少なくないようだね。だけどな、熊さん、そんな一時的なゴマカシをしたって、それが嘘だと分かったらお客様から見放されてお客様を失うだけでなく、多額の賠償を請求されかねないから、怖くてゴマカシをする気になるとは思えないなぁ。」

熊さん 「ウーン、そんなもんですかねぇ?」

大家さん 「それにね、買ってくれたお客様の中には地下鉄を運営するニューヨーク州都市交通局もあってな、約2600両の車両に三菱電機の空調設備を使っているということだ。」

熊さん 「そりゃてえへんだ、ただでは済ましてくれないや!」

大家さん 「彼らは今回の内容の報告を受けて三菱電機にどこまでおかしいのか調べるから安全性や品質への具体的な影響など追加の情報をよこせ、と言ったもんで、三菱電機の中に緊張が走ったらしいンだ。」

熊さん 「そりゃそうだろう、彼らは契約違反には手厳しいし、賠償の要求額も半端じゃないってぇことは知れ渡ってますからね。」

大家さん 「うん、前に巨額の賠償を払わせたことがあるからな。ところがな、彼らは2,3ヶ月掛けて調査して、結局お咎めなしで調査終了を通告してきたという事なんだよ。」

熊さん 「へー、ニューヨークの都市交通局は肩透かしを喰らわせたんだ。」

大家さん 「だから、ウソの検査報告をしていたのは事実だけど、安全・機能・性能には問題がないという彼らの発表は一応本当らしいと考えてよさそうなんだな。」

熊さん 「ふーん。ですがね、検査はいいかげんでも製品はキチンとしていた、品質管理はよかったってことですかい?どうしていい加減な検査で期待される製品を30年以上も作り続けられていたんだろ?訳が分かんないや!」

大家さん 「お前さんのその気持ちは分かるがな、まあ今日は時間が少ないから、日を改めて話を続けようじゃないか。」

熊さん 「分かりやした。次の機会によろしく!くようにさせることに焦点を当てた性能と試験条件と検査事項をきめているって訳だ。」

熊さん 「フーン、箸の上げ下ろしは親に任せて、規格では、親は子供が喉をつかねえように気をつけろ、と言っているようなものでヤンスね。」

大家さん 「ま、そんなところだな。言ってみれば、設備本来の性能、形状は車両メーカー、空調設備メーカーごとに車両の使われ方を考えて相談してきめるのでJISでは決めないで、安全と安定について決めているって訳だ。」

熊さん 「そうなんですかぃ!設備の外観形状も決めていねえンじゃ設備はできやしねえんだ!てぇことは、そのJISは空調設備の設計するための安全規格と言うことで、製造のための規格ではねえって訳で?」

大家さん 「オ!分かりが早いね、熊さん。ワシの言おうとしたことだ。」

熊さん 「そうなんか!それでガッテンだ。」

大家さん 「じゃあ、次回は車両の空気調和装置のJISと実際の設計、商業生産のことを考えてみよう。」

熊さん 「分かりやした。次の機会によろしく!」

(次回に続く)

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