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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第四回】 三菱電機の車両用空調機不正検査問題のホントの問題-その1

熊さん 「ちわー。この前の話の続きを聞きに来きやした」

大家さん 「あー上がんな、待ってたよ。えーと、どこまで話したっけな。そうそう、ものづくりと検査の関係だったな。
お前さんも知っての通り、ものを作るためには、決めた部品や材料を手配して、検査しながら製造・組み立てを行って、お客様と決めた取引仕様に合うことを確認してお客様に納めるよな。」

熊さん 「アッシらの大工仕事でも親方はそんなことをしてまっさぁ。」

大家さん 「お前さんの親方は施主のお客様と『こんな建物をこの納期でこの代金で作って提供します。』と仕様を含む契約を交わし、それを元にお前さん達が作る部材や部材同士の組み合わせについての作業仕様をお前さん達に渡すと思うんだ。」

熊さん 「親方でもないのによく分かるなぁ、大家さん。」

大家さん 「それでさ、完成したときにまず親方とお前さん達がちゃんと建物ができたかどうかの最終検査を行ってお客さんに確認してもらうだろう?」

熊さん 「それでー?」

大家さん 「もし、お前さん達が行う完成検査の方法とお客さんに示す最終検査の方法が違っていたらどうなると思う?」

熊さん 「どうなるってぇ?そりゃ方法が違ってりゃぁ、同じ検査項目でも見かけ上結果は違うってことになるのはあったり前のことだぁ、普通はありえねえことじゃねぇですかい!」

大家さん 「そうだ、だけど、あったら二つの違った結果が出て混乱する事になるよな。」

熊さん 「実際にはどうだったんでぃ?」

大家さん 「三菱電機は車両用空調設備の仕様にJIS E6602と言うのを使ったと言っているんだ。」

熊さん 「ああ、日本工業標準のことだな。」

大家さん 「規格が工業だけでなく、広く産業一般を対象に広がってきたんでな、法律を改正して令和元年から日本語の呼び名を日本産業標準に変えたんだけど。」

熊さん 「JIS規格で決まっているなら、どうして混乱が起きたんですかい?訳が分かんねえや!」

大家さん 「普通、規格というと、対象のモノを規定しているので、規格に従って作って試験すれば良いようになっていると思いがちだけどな・・・。」

熊さん 「違うんで?」

大家さん 「そのJISは車両用の空調機仕様そのものを決めてるように思うかも知れないけど、実は原則を決めているだけなんだよ。」

熊さん 「そうなんですかい!で、そのJISってヤツではどんなふうなことを決めているんですかい?」

大家さん 「細かい事は別にして、大事な空調能力は発注者、つまり車両メーカーの事だよな、彼らが決めることになっていて、JISは空調設備メーカーに発注者が指定した空調能力などを持った設備が安全で安定的に働くようにさせることに焦点を当てた性能と試験条件と検査事項をきめているって訳だ。」

熊さん 「フーン、箸の上げ下ろしは親に任せて、規格では、親は子供が喉をつかねえように気をつけろ、と言っているようなものでヤンスね。」

大家さん 「ま、そんなところだな。言ってみれば、設備本来の性能、形状は車両メーカー、空調設備メーカーごとに車両の使われ方を考えて相談してきめるのでJISでは決めないで、安全と安定について決めているって訳だ。」

熊さん 「そうなんですかぃ!設備の外観形状も決めていねえンじゃ設備はできやしねえんだ!てぇことは、そのJISは空調設備の設計するための安全規格と言うことで、製造のための規格ではねえって訳で?」

大家さん 「オ!分かりが早いね、熊さん。ワシの言おうとしたことだ。」

熊さん 「そうなんか!それでガッテンだ。」

大家さん 「じゃあ、次回はJIS E6602と実際の設計、商業生産のことを考えてみよう。」

熊さん 「なんかムツカシそうな話になりそうな気もしやすねぇ。オー、ブルブル、アッシの歯が折れねえように願いますよ!」

(次回に続く)

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