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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第十九回】 ISO9001適合性の第三者審査-後編


熊さん 「なるほどなぁ、だけどよぅ、間違いのない評価って言うと、こりゃ簡単じゃぁありませんぜ。アッシみたいな大工の腕を間違いなく調べようとしたらキリがありゃしませんぜ。」

大家さん 「確かにな。それで、ISOでは認証機関の信用性を調査する機関、これを認定機関というンだけどな、そこのための標準を前にも言った適合性評価委員会で決めている。それでできた標準を使う認定機関ができてな、IAF、国際認定フォーラムという会議体を作って、認証機関が企業を評価する時間を企業の大きさに応じて決めて、それを守ってやった評価結果はお互いに同等になるようにしてってワケなンだ。」

熊さん 「認証機関に認定機関、ウー、ややこしいなぁ、もう。結局のところ、キリがないから決め毎の同等ってことでヤンスね。」

大家さん 「認証機関が信頼できるかはその国に認定機関があればそこが調査することになっているンだ。そして認定機関が国際的に信頼できるかをIAFが決めたルールで認定機関同士で相互評価して守ることで認証機関の国際的な信用性を確保して、結果として認証された企業の品質マネジメントシステムが国際市場で信用されるようにしているってワケなんだよ。」

熊さん 「なるほど。と言うことは認証審査ってのは特別難しいことをやってるかってぇことを審査するってわけじゃねぇンで、お客のために当たり前にやらなきゃなンねいことをやってるって事を確認する審査と考えりゃ良いンだ。」

大家さん 「もちろん、当たり前以上のことをやって買い手に気に入られることは良いことだけど、それは企業の努力でISO9001の認証審査の対象じゃぁないンだ。世間には序列を付けることを期待する声もあるようだがな、序列を付けることは国際取引の円滑化というISOの役割からは出てこないンだ。」

熊さん 「そうかぁ、国際的な取引じゃぁそうやって信用が低いところを除いて購入先の候補を絞り込んで、その上で突っ込んだ調査をして決めて行くってワケだ。」

大家さん 「そうだ。ただ、認証は取引を円滑に行う手段の一つだけど、取引を前提にしなくても第三者審査には意味があるとワシは思うよ。」

熊さん 「どういうことでヤンス?」

大家さん 「ほら、初めの頃に説明した品質不祥事、アレの原因の多くが、企業のトップの品質に対する積極的な関わりの不足が原因だったと思うと言ったね?」

熊さん 「ああ、覚えてヤスよ。」

大家さん 「その点でISO9001はトップがどうすべきか書いているし、それに、自分のところを評価するってことは優しそうで結構難しいモンで、つい自己満足的にみてしまったり、部下の批判になるようなことは控えてしまったりする事が多いから、その点、ISO9001を使った品質マネジメントシステムの第三者審査はトップとしての使い勝手もあるとワシは思うんだ。」

熊さん 「なるほど。だけどよぅ、そのためには品質は現場の問題だと言うようなことを思ってるトップがいたら頭をすげ替ぇることが必要だよな。大家さんが、品質不祥事はマネジメントシステムで防げる、って言ってたことが分かって来やしたぜ。それも第三者審査と組み合わせることが良いってことなんだ。」

大家さん 「熊さん、理解がいいな!」

熊さん 「えへへ、おほめにあずかりありがとうござんす。で、第三者認証審査ってのは一回受けりゃぁ後はそれで良いんですかい?」

大家さん 「いやいや、運転免許だって更新が必要だろう?」

熊さん 「免許更新は面倒だけど、法律の改正があったり、世の中の情勢が変わったりするから仕方ねえって思ってヤス。」

大家さん 「ISO9001の第三者認証審査も似たようなことで、事業も少しずつ変わったりするから3年に一回のフルの更新審査と間の1年毎の運用状況のチェックが行われることになってるようだね。」

熊さん 「審査した結果不合格でしたなんてことになると企業は嫌でしょうな。」

大家さん 「審査して適合となったら適合性証明書が発行されるけど、不適合証明書なんてのはなくてな、不適合なところがあれば正せば適合性証明書が発行されるンだよ。人間は完全なことはできないので、時として不完全なことはあり得る、大事なことは不完全なところがあれば正すことだというキリスト教的な考え方が背景にあるようだな。」

熊さん 「審査はどんな風に行われるンで?」

大家さん 「詳しいことは別におくとして、三つに大きく分かれた審査がされるんだ。最初に審査員が企業の実態を理解してから、品質マネジメントシステムの説明書がISO9001の要求している原則にもとづいて説明責任を買い手に果しているように書かれているかを調べるンだ。」

熊さん 「なるほど、まずは書類の調査でヤンスね。で、次は何でやんしょ。」

大家さん 「次に、トップも含めて各部署が相互の関係を明確にして仕事をしているか、仕事の手順をチェックして決めているか、決められた手順は守られているか、仕事の結果は記録して誰かがチェックしているか、おかしな結果は調べて原因に遡って是正しているか、それぞれの現場で現物を確認しながら調べるんだ。」

熊さん 「前に聞いた話を考えて見りゃ、ISOの標準に書いてある要求事項の原則から考えたその企業の実際を考えて見なけりゃなんねいンでしょうな。」

大家さん 「ああ、それで買い手の立場にたって定期的な内部監査をしているか、そして品質マネジメントシステムを手直しする必要がないかトップが定期的に確認しているかなどを、調べ評価することになっているそうナンだ。」

熊さん 「大家さんの話を聞いていると品質マネジメントシステムの説明がうまいかどうか調べられるように聞こえたンですがねぇ、そんなにうまい日本人は少ないンじゃありゃせんですか?」

大家さん 「そんな心配も以前はあったんだけどな、だけど今は実際の仕組みと実績がキチンとしているのに品質マネジメントシステムの説明が下手なときは、買い手には心配を掛けることには違いないんで、よっぽどヒドいときゃぁ別として指摘はするけど継続的な改善が必要という指摘に止めてるようナンだ。しかも、そんな条件は適合性証明書には記載されないンだ。」

熊さん 「なるほど、信用出来る仕組みがあれば市場に入れるようにしようというワケですな。」

大家さん 「そんなわけで、企業の経営者にも入学試験みたいな心配をすることなく、ISO9001と適合性証明審査を正しく理解してもらって戦略的に使って欲しいと思うンだよ。第三者審査の事はひとまずここまでにしておいて、熊さんがお望みなら次回はISO9001に戻って、重要なことをいくつか説明することにしよう。」

熊さん 「分かりやした。次また話をよろしく!」

 (次回に続く) 

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