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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第五十二回】 品質マネジメントシステムの改善-後編


熊さん 「そういや総合電機メーカーで品質検査の不祥事が頻発しているらしく、第三者調査委員会を設置して調査してるって公表したって報道がありやしたが、あの会社のいずれの製作所でも大なり小なり不適切な検査報告書が確認されたってぇじゃないですか!」

大家さん 「おお、よく知ってるな。全部で22の製作所があるらしいが、内8製作所の調査が終わったって中間報告を出してたよな。その8製作所それぞれで問題が確認されていて、今まで合計148件の不適切行為が確認されているってことだ。残り14製作所の調査が終わったらどれだけに膨らむんだろう。ただ、今んところは買い手からの製品や、製品を組み付けた買い手の製品の回収までは起こってないようだ。それが正しければ、製品を作る能力に問題があったわけではなさそうだけど、買い手をバカにした話しだよ。」

熊さん 「不適切行為の中身は不適切な検査が全てでヤンスか?」

大家さん 「大部分はそうらしいけど、中には設計で社内基準を無視していたと言うようなものや、前にも説明したことのあるULの難燃性認証審査の不適切対応などもあったようだ。」

熊さん 「へー、だけどよぅ、検査報告書が本当じゃぁないってぇのに、買い手からの回収要求がないってぇ、チョット変じゃねぇでスカイ?」

大家さん 「そこなんだが、設計へのパフォーマンス品質要求を守って開発して製造部門に引き渡したから生産された製品には問題が出ていなかったんじゃないかと思っているんだ。ただ、設計・開発部門としてはパフォーマンス要求品質基準を製品の製造のための基準としての製造仕様に変換して検査部門や検査部門に引き渡さなきゃならないのに、パフォーマンス要求品質基準をそのまま製品検査基準にしたりしていたんじゃないかって疑っていてな、そこに切り込んで製品基準の決定過程と製品仕様を買い手と合意するときの協議のやり方が適切だったか調べて見ることも必要じゃなかったかって気もするなあ。」

熊さん 「でも、22製作所の中の8製作所を調べて似たような問題があるとすりゃぁ、個別の製作所の問題というより、会社全体の共通的問題、ISO9001の考え方で言い換えりゃ、会社の品質マネジメントシステムに問題があるということになりそうでヤスが、違いヤスか?」

大家さん 「ワシもそう思ってるよ。この間出た第三報では、直接的にはそれぞれの製作所の問題としながら、まずは拠点単位の内向きな組織風土、次に独立性の高い事業本部制、最後に経営陣の本気度の度合い、という組織風土上の問題を挙げていた。」

熊さん 「歴史のある会社でヤンスから技術には自信があるけど、逆に自信がありすぎて事業の上では大事な買い手の存在を軽視している、ってな感じがしヤスね。」

大家さん 「そんな感じがするね。改革のために会社ガバナンスを変えなきゃならんと言っているんだが、いちばん反省をして変わらなきゃならんのはトップだとワシは思うんだ。だけど、その本気度が伝わってこないんだ。もっとも、報告書は第三者調査委員会の報告書だからそこまで期待するのは無理だとは思うが、第三者調査委員会の報告があったという会社の報告にはそこに言及して欲しいね。」

熊さん 「トップがISO9001の品質マネジメントシステムなんて知らないんじゃぁありゃセンでスカイ?」

大家さん 「ウーン、どうかな。一部の製作所は品質マネジメントシステム認証を得ていると言うことだから、トップは知らんわけはないと思うけど。ただ、製作所単位で認証を取っていることに問題があるとワシは思うよ。」

熊さん 「どうしてでヤンスか?」

大家さん 「だってな、組織図をみりゃぁ分かるけど、各事業の事業部とか営業部とかは本社にあってな、各製造所は文字通りの製作機能だけで、買い手に対する品質保証の説明責任は本社を含めないと完結しないと思わないかい?現実に、この品質不祥事は本社が表に立って説明しているんだから。」

熊さん 「そういやそうでヤンス。」

大家さん 「そうすると、トップの責任の在り方も変わらざるを得ないと思うよ。」

熊さん 「なるほど、ガッテンだ。第三者調査委員会の調査が終了した時にどういう是正処置が打ち出されるか見ものでヤンスね。」

大家さん 「そうだな、トップが責任を取って辞めるなんて意味の薄い対策じゃない、顧客の信頼回復ができる説明責任を果たす対策を見せて欲しいよな。」

 (次回に続く)

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