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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第三十回】 東レの不祥事の第三者調査委員会報告書を考える-後編


熊さん 「コンプライアンス意識の改善に関しては、第三者調査委員会はなにか提言しているンでガスか?」

大家さん 「東レがTHC問題で品質保証本部を新設してコンプライアンス教育を行っていることで改善が図られている、って評価しているんだ。だがな、ワシは懐疑的なんだ。なんせ、教育はのべつ行われるモノでなく、またのべつ行われたらマンネリになると思うよ。」

熊さん 「じゃぁ、大家さんはどう思うんでヤンスか?」

大家さん 「報告書を読んでいて、難燃性はお客の要求する品質仕様の一つなんだ、っていう理解が抜けていて、面倒なお客の要望だって感じがしてならないんだ。だから、品質仕様の一項目にキチンと位置づけて扱うようにさせるためのマネジメントシステムに変更させることが必要だって思うんだ。」

熊さん 「なるほど、そうすりゃぁ営業も開発も製造も検査もみんな従うことになりそうでヤンス。」

大家さん 「そして、販売は買い手との仕様確認では本社の重要な機能だし、品質仕様も本社の事業部門全体に対する事業管理機能の一つだから、品質仕様の決定権限も本社事業管理機能の一つと考えるべきじゃないかと思うんだ。これは複数事業所を一体管理する上で必要なことじゃないかな。」

熊さん 「なるほど、そうすれば第三者調査委員会報告書が実務管理を取り上げているのに対して、東レという会社責任がもっとハッキリすると言うことでヤンスネ。」

大家さん 「それとな、日本のISOマネジメント認証機関の元締めの日本適合性認定協会、つまりJABのISO9001認証組織リストを見ると、東レは工場別にISO9001認証を受けているんだ。だけど、工場は本社の指令で仕事をする場所で、ISO9001が目的としている買い手に対して正式に対面するのは本社あるいは異なる事業をやっているなら関連の事業を統括している事業部などの部署の責任だとワシは考えるんだ。」

熊さん 「ウン?あっそうか、工場の管理は本来本社が責任を持たないといけないはずでヤンスからね。」

大家さん 「だから、工場別にISO9001認証を受けることはマネジメントを内向きにするだけで、ISO審査員の所見が時には邪魔になったりして得にはならないこともあるんだよ。それで、本社、工場、開発を一体とする品質マネジメントシステムとしたISO9001認証に切り替えると、コンプライアンス問題もすっきりしてくると思うけど、どうかな。」

熊さん 「本社の事業管理をしてる部門を入れないで工場だけでISO9001認証を取ってるのは東レに限ったことでガンスか?」

大家さん 「イヤ、JABの示している認証された企業のリストを見ると、そうじゃないようだな。工場がISO9001のいう顧客要求事項の全てを本当に担当しているのならいいがな、そうでないケースは認証が適切か該当する企業は見直すべきだとワシは思うよ。」

熊さん 「うぉー、頭がこんがらがってきやした。ちょっと冷やしてかんげぇなくちゃ。ついでと言っちゃぁなんだが、THC問題についても第三者調査委員会報告が出ているんでスカイ。」

大家さん 「ああ、あの報告書も覗いてみようか。ほら、これも53ページの報告書なんだ。」

熊さん 「さっき、タイヤコードの品質検査でのデータ書き換え問題だって大家さんは言ったけど、これって品質不良の製品がタイヤメーカーなどに供給されたって、やな事件じゃないでヤンスか?大変なことじゃぁないでガスか!」

大家さん 「幸い、第三者調査委員会の調査では品質の不良につながるようではなかったようなんだ。検査機器が不調でデータを創作したって事があるけど、他のデータから問題がなかったとか、仕様に入らないデータをいじって仕様に入るように書き換えたんだけど仕様ギリギリをチョット外れた場合だったんで実害がなかったとか書いてあるんだ。」

熊さん 「報告書ではどんな原因で起こした、って言っているンでヤンス?」

大家さん 「THCのコンプライアンス意識が不足していたって書いてあって、そのため東レ全体の品質保証体制を刷新してコンプライアンス強化を図ることが必要としているんだ。」

熊さん 「何か言いたそうでヤンスね、大家さん?」

大家さん 「ウン・・・。報告書はTHCを調べてこうでしたって東レに報告しているんだけどな、THCのタイヤコードは東レの事業のために、東レのブランドのタイヤコードをTHCに外部委託しているんだ。だから、THCは東レのどこかの事業部が管理してないといけないんだ。買い手の立場で言えば、東レさん、あなたはどんな外注管理をしてくれているンですか、って言いたいと思うよね。」

熊さん 「なるほど、鉄砲の向け先が違うんじゃござせんかって言うことでヤンスネ。」

大家さん 「まだ説明してないことだがな、外部委託についてはキチンとした管理の方法を決めて、然るべき監督をしなさいっていう要求がISO9001に出てくるんだ。ISO9001認証を取得しているなら、第三者調査委員会の報告を受けてもう少しましな東レ本体の調査をするように考えて欲しいなって思うよ。」

熊さん 「第三者調査委員会ってのも所詮、お金をもらって調査してるから、経営のトップに向かってここがいかん、って言いにくいンじゃないでヤンスか?」

大家さん 「まあ、そんなソンタクも少しはあるかもしれんけど、だけど、日本では品質のマネジメント責任を正面から議論する風潮が少ないんじゃないかな。だから、逆に現場より会社トップにとってISO9001適合性認証は取り組む価値があると言えるんじゃないかな。」

熊さん 「そういや、そんな気がしヤスなぁ。」

大家さん 「さすがに東レだって思うのは、難燃樹脂にあった問題では経営責任があった事を速やかに認めて、5月13日に社長を始めとした経営トップの役員報酬の減額処分を発表してた。だけど、東レの多角経営の社内体制の立て直しは簡単ではないと思うんで、ISO9001に書いてある事を参考に、急いで欲しいな。」

熊さん 「ホントでヤスね。」

大家さん 「まあ東レの事例の話しはここまでにしておこうじゃないか。次に来たときはISO9001本文の話に戻るよ。」

熊さん 「合点承知の介だ。いけねぇ、かかあが待ってらぁ。じゃ、ゴメンヤス。」

 (次回に続く) 

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