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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第四十九回】 品質マネジメントシステムのトップによる評価


熊さん 「次に進んでおくんなセイ。9.3はマネジメントレビューって事になってイヤスけど、マネジメントレビューなんて普段聞き慣れない言葉と思いヤスが?」

大家さん 「言葉としてはそうなんだがな、実際にはよく行われていることなんだよ。」

熊さん 「どういうことでヤンス?」

大家さん 「大雑把に言えば、会社のトップは会社の基本的な目的と方策を決めて、その実行のため組織を作って実行をさせ、日々状況を確認させて、それを定期的に報告させて基本目的に合致してるか、基本目的を修正する必要がないか考えることが必要なんだ。大きな船の船長さんを考えてみな。」

熊さん 「ああ、なるほど、外国航路の大きな船を想像すると分かる気がしヤスね。」

大家さん 「こういった経営者の確認行為は、ボトムアップがもてはやされる日本では社員のやる気をなくさないように普通は大きな声では言われないんで特別の名前が付いてないようだけど、本来トップが指揮しないと会社の中がバラバラになってしまう心配があるんで、外国ではマネジメントレビューと言って重視されているらしいんだ。」

熊さん 「でも、なんで日本と外国で違うでヤンスか?」

大家さん 「いろいろ言われてるけど、外国は転職が多いからマネジメントの指導性が重視されるけど、日本は終身雇用が普通だから、従業員のやる気と自主性が大切に思われてきたってよく言われるようだな。でも、最近は企業の多国籍化が見られるようになったし、派遣社員が増えているように終身雇用が変わりつつあるようだから、トップの指導性が重視されるようになってきていると感じるな。」

熊さん 「なぁるほど、アッシらの仕事も作業員の定着は頭痛のタネでヤンスからね、最近は。でも、そんな事があるとしても、なんでISO9001でマネジメントレビューってことが必要なんで?マネジメントシステムがチャンとしてるかどうかは外野が四の五のいうこっちゃなく、トップが分かってりゃ良いンとちゃいますか?」

大家さん 「うん、一般的に言やそうとも言えるけどな。だけどISO9001が受注できたらちゃんと製品を提供出来る能力がありますって事のために、トップが指揮をする品質マネジメントシステムを構築するための要求を書いているって事を考えてご覧よ。」

熊さん 「はい、この通りって売り手が品質マネジメントシステムとやらを見せりゃぁ良いンではありゃセンですかい?」

大家さん 「でもな、品質不祥事を起こした事例を見ると、品質は現場の事だからとトップが普段そっぽを向いているような事例があるようだよな。だから、買い手がトップに、時々はマネジメントレビューって事をやって、その記録を取っといてくれよ、って言って、以前に遡った継続性を確認して、トップがホントに先頭に立って製品の実現に向かって品質マネジメントシステムを動かしていることを確認したいって思うのは自然なことだと思わないかなあ。」

熊さん 「そう言えば、今までの大家さんが散々言ってくれた、ISO9001の品質マネジメントシステムは売り手自身の経営改善を目指するンじゃなく、買い手の信用を得ようというのが目的だと言うことを考えりゃ、分かるような気がするなぁ。」

大家さん 「そうか、そうか。買い手の信用を得て商売ができて初めて経営の改善を考える事ができるから、買い手の信用を得ることは事業のイロハのイなんだな。」

熊さん 「そういや、アッシの親方には、信用してくれている買い手の信用を失ったら新たな買い手を開拓するのにずいぶん金がかかるから、気をつけて仕事をしてくれよな、って常々聞かされてヤス。親方自身でも仕事の実績をチェックしてるみたなことも前に聞いたし。」

大家さん 「オー、そうかい、そうかい。」

熊さん 「今聞いた話しで9.3.2を読むとなるほどなと思いヤスな。こんなインプットとISOが言ってる事をトップが自分で集めるなンてことは、小さな会社じゃぁできるかも知れねぇけど、現実には難しいンじゃありゃしませんデスカイ?」

大家さん 「そうだろうな、かといって皆を集めて聞いて見たところで個別の事象は聞けるけど品質マネジメントシステムの強さ弱さを考えるには効率が悪いし、現象の悪さがあったときは品質マネジメントシステムの強さ弱さの提案を聞きたいから、部門長や事務局的な役割担当を決めてインプットを準備させることになるだろうと思うよ。それも、報告会ではなくトップによる検討会でないと意味ないよ。」

熊さん 「『改善の機会』ってことが要求されてイヤスけど、これは品質が悪かったらよくするって事でヤンスか?」

大家さん 「いや、ここで言ってる事はISO9001が扱う品質マネジメントシステムの事だと言うことを忘れちゃいけないよ。」

熊さん 「いけねぇ。つい、製品やプロセスなどの良さ悪さの事だと考えてしまいやした。それを生じさせた仕事の仕組みの事だってぇ事でヤシたね。」

大家さん 「それとな、これは外国の人に聞いた話しだけど、改善は悪いことを改めて善くする事って日本では思っているけど、英語のインプルーブメントは悪くはないこと『グッド』を『ベターにする』つまりもっと良くすることという意味があるということなんで、英語が元の言葉のISO9001を読むときは考えておくべきだろうとワシは思っている。」

熊さん 「へーェ、グッドをベターに、でスカイ。」

大家さん 「ISO9001では事象的な間違いを正すことは、コレクション、事象的な間違いの元を正すことはコレクティブ・アクションと言って、品質マネジメントシステムを相手にするインプルーブメントと区別しているのだよ。」

熊さん 「分かりヤシた。日本の常識は世界では通用しないことがあるって事みたいでヤスな。それから、9.3.3のマネジメントレビューからのアウトプットで言っていることは今までの話しで分かるように思いヤスけど、腑に落ちねえのはアウトプットで明確になった改善しなきゃならない事をどうするかってぇ話しが見えねえ、ってこってす。」

大家さん 「ああ、それは第10条の改善に持ち越されているんだよ。」

熊さん 「そうでスカイ。じゃぁ、今日はここで打ち切らせてもらって、第10条の話しはこの次に聞かせてもらいヤス。じゃ、ありがとさんでした。ゴメンヤス。」

大家さん 「じゃ、またな。」

 (次回に続く)

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