見出し画像

落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第九回】 品質管理では定評のある日本でなぜ?(後編)


大家さん 「話を戻すとな、第二次大戦後、日本は経済の復興が必要だったンだ。けど、製品は安かろう悪かろうと外国から言われてたンだ。」

熊さん 「へー、今とずい分違いやすね。」

大家さん 「国も企業もこれでは経済を立て直せないということでな、現場の品質管理を良くしようと言うことで、GHQの助けもあって戦勝国のアメリカを見習って、米軍が戦中に密かに勧めてきた統計的品質管理っていう技術を学ぶことを企業がやってきたんだよ。」

熊さん 「GHQってなんですかぃ?」

大家さん 「連合国軍総司令部と言ってな、敗戦後の占領政策のために連合国が置いた機関だよ。」

熊さん 「マッカーサーさんって人が総司令官をやっていたところで?」

大家さん 「そうだ。話を元に戻すよ。とくにデミングさんという人が紹介されて日本に来ていろいろ指導してくれたっていう話なんだ。聞くところによると、デミングさんは会社の上の人が積極的に引っ張っていくことが大切だということを考えていたんだ。だけど、会社の上の人は現場を何とかしてくれと熱心なので、会社の上の人たちの指導は横に置いておいて、現場の取り組みを優先して指導してくれたって話なんだ。」

熊さん 「ってことは、その結果、会社の上の取り組みが放っておかれた、ってことでぇ?」

大家さん 「後から考えたらそう言えるだろうな。」

熊さん 「当時は、早く安かろう悪かろうの見られ方を変えたかったンだなぁ。」

大家さん 「そうだ、思い出した。昭和24年に、製品の種類、材料、形状、品質、寸法などを標準化するためのJISに関係する工業標準化法が制定されたのだけどな、」

熊さん 「産業の復興を早く進めよう、ってわけですな。」

大家さん 「この法律の目的としてはな、標準に最も関係がある『取引の単純公正化及び使用又は消費の合理化』てぇ企業の外との信頼関係に貢献することよりも、『鉱工業品の品質の改善、生産能率の増進その他生産の合理化』ってぇ企業自身の改善に貢献することが優先して書かれていて、産業の競争力向上を誘導しようとする国の姿勢が読み取れっちまうンだ。」

熊さん 「ほー、標準は本来ならお客との売り買いのためだけど、そんなことよりまず製造者の自身のレベルを上げることが先、ってことみたいですな。」

大家さん 「そうなんだな。」

熊さん 「それに、品質の改善なんて言われるてぇと、品質が悪いってことを自ら認めているみてぇで、標準ということと合っていねえみたいにアッシには聞こえっちまいまっさ。」

大家さん 「熊さん、突っ込みが鋭いね。たしかに品質の管理といやぁ品質を標準に合わすように努力することを意味するンで、ちょっと妙だよな。」

熊さん 「ま、いろいろあるけど、日本では現場に注目して改善を狙った品質管理を進めてきたってわけですかい?」

大家さん 「これの推進には、日本人の勤勉さや、終身雇用の慣習なんかも後押ししたって言われているけどな。」

熊さん 「それでジャパン・アズ・ナンバーワンといわれるようになった訳ですな。」

大家さん 「そうなんだ。品質管理は英語ではキューシー、QCと言われてな、シーのコントロールは一定になるように努力する意味で、改善とは縁遠いと思うんだがな、ま、日本では現場が検査を中心にした生産技術の改善を進めてきて、効果があったんだ。」

熊さん 「だけど、さっきの話じゃないけど、キャッチアップで進んで経済も世界の先頭に立つようになってきたンで、現場中心の品質管理だけでは追っつかなくなってきた・・・。あ、そうか、だからマネジメントがしっかりしなくっちゃ、ってわけですな?」

大家さん 「よくわかったな、熊さん!そうなんだ。」

熊さん 「だけどよぅ、マネジメントって正直よくわからねぇんだけど・・・。」

大家さん 「ああ、そうだねぇ、マネジメントと同じ意味を持つ日本語って探すのが難しくってな、ある時は経営ということばが引っ張り出されるのだけど、抽象的でピンとこないんだよ。」

熊さん 「経営といやぁ、事業目的を達成するために社長さんらがどう金を使うか決めることみたいなことになるので、大家さんがこれまで言ってきたことと違うみたいだな。」

大家さん 「事業目的と言やぁ、投資家などの企業の外の人に説明して約束したことだ。だから、経営は企業の外の人に約束した事業目的を達成するように企業を運営していく活動を意味しているンだな。」

熊さん 「経営管理って言葉を聞いたことがありまっせ。」

大家さん 「うんそうだね。管理は狙いを達成するように、企業内部の部門や部署の人たちが活動することを意味しているンだ。だから、経営は企業の経営者達による外に開かれた企業の運営活動で、管理はその運営活動に基づいた実務を担当する人たちの活動でコントロールとも言われるンだよ。」

熊さん 「ふーん、なんか難しいねぇ。」

大家さん 「それでな、経営層による経営活動と実務層による管理活動という活動の二階層の理解は民主的でないと戦後の民主主義を目指す社会に嫌われる傾向があってな、経営活動をつたえる別の日本語を探していたんだが、最近では諦めて、マネジメントというカタカナをあてることが多くなっているンだよ。」

熊さん 「ふーん、なんか難しいねぇ。」

大家さん 「それでな、経営層による経営活動と実務層による管理活動という活動の二階層の理解は民主的でないと戦後の民主主義を目指す社会に嫌われる傾向があってな」

熊さん 「それでかぁ。品質管理ってぇ言葉はよく聞くけどよぅ、品質管理活動を実行させる経営層の活動なんて事はアッシは今まで聞いたことなかったように思うなァ。」

大家さん 「経営活動を意味する別の日本語を探していたンだが、最近では諦めて、マネジメントというカタカナを当てることが多くなっているンだよ。」

大家さん 「それでな、経営層による経営活動と実務層による管理活動という活動の二階層の理解は民主的でないと戦後の民主主義を目指す社会に嫌われた感じがあってな、経営活動をつたえる別の日本語を探していたんだが、最近では諦めて、必要に迫られてマネジメントというカタカナをあてることが多くなっているンだよ。」

熊さん 「だけどぉ、それじゃぁマネジメントとはどういうことかという説明にはなっていねぇよ。」

 (次回に続く)

 < シリーズのホームページへ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?