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落語形式で考えよう;報道されてる品質不祥事はマネジメントシステムで防げるってホント?

【第五回】 三菱電機の車両用空調機不正検査問題のホントの問題-その2


大家さん 「JIS E6602は車両用空調機の設計のための安全、安定の側面についての規格だからさ、本当の設備の設計のための仕様は、JISをベースに車両メーカーと空調設備メーカーが話し合って作んなきゃなんないってことだ。」

熊さん 「なるほど!」

大家さん 「設計が終了すると、普通は試作品を使って検査して車両メーカーのOKをもらわんと実際の取引ための製造に移れないよな。この検査のことを形式検査と言ってな、英語ではタイプテストと言っているンだ。」

熊さん 「設計された製品が実際にどんな性能を持っているかを確認するための検査で、納品される一つひとつの空調設備の検査じゃないということでガスね。」

大家さん 「言ってみれば、設計段階で選んだ材料や部品と作り方で作ったモノが不具合なく目的の品質になっていることをお客様や規制官庁が確認することが目的なんだ。」

熊さん 「フーン、なるほど-・・・、製品はまだ造ってないので、納める製品の品質を確認する検査じゃなく、どんな性能の製品を設計したかを確認する、って訳ですかぃ。」

大家さん 「ただし、材料みたいな製品ではな、お客の方で材料を使って作るものの詳しい性能はマル秘にすることが多いから、試作した材料を提供させてお客が独自に適性の検査をすることが多いから、メーカーに形式検査を要求することは余りないようなんだ。」

熊さん 「製品の種類で違うモンでゲスねぇ。」

大家さん 「うん。これに対して、形式検査などでお客様の確認を得た後は、生産設備を整えて実際の取引のための生産をすることになる。だから、製造部門が設計部門から引き継いで、設計部門が選んだ材料、部品や作り方が守られているかを確認しながら生産を行い、いよいよ納品しようと言うことになると最終の検査することになる、これをそのJISの中で引渡検査と呼んでいるのだ。」

熊さん 「ややこしいや、形式検査と引き渡し検査は性格が違うてことだよな!」

大家さん 「それでな、設計段階では部品、材料、組み立て方なぞ、幅の広い中から品質を選ぶことになるので、JIS規格の検査はちゃんとやらないといけないけれど、設計でそんなことが決まった後に行う製造では品質がばらつく要素が少なくなるだろう?」

熊さん 「そりゃそうだ!アッシ達だって、材の選定の時に杉を使うか檜を使うかちゃんと確認して選ばなきゃなんないけど、檜を使うと決められたら材の注文書で分かるんで一々検査なんてやってらンないや。」

大家さん 「JIS E6602は『検査は,形式検査と受渡検査とに区分し,一般的には表に示す検査項目について行うが、実際に適用する項目は,受渡当事者間の協議によって決めて良い』という趣旨の規定があるのだよ。」

熊さん 「おや、『一般的には』とか『受渡当事者間の協議によって決めて良い』とか、標準という割には、決めてるのか決めてないのか分かんねぇ曖昧な書きぶりだねぇ。」

大家さん 「三菱電機の発表をみると下の表になっていてな、多分営業部門が設計部門の支援を受けてお客様と交わしたと思うンだけど、型式検査はJISで決められた検査条件を使う事は当然だろうけど、契約では受渡検査でもJISで決められている検査条件がほぼそのまま指定されてンだ。」

検査規格_edited

熊さん 「それがどうかしたんで?」

大家さん 「上の表の右の欄を見てもらうと、製造部門の検査担当が実際におこなっていた状況が書かれているだろう?例えば①や②の検査では、契約では真ん中の欄に書かれているようにJISで指定された温、湿度に調節して検査を行うようになってるけどな、実際には特別の調節のない通常の室内で検査をやっていたと書いてある。」

熊さん 「なんで、受渡検査ではJISで指定された温・湿度を使うようにはなってなかったンですかい?」

大家さん 「これはワシの推定だがな、製品の空調設備は結構大きいだろう、設計部門の検査室としてはJISに指定されている条件を確保しなけりゃ材料、部品の選定もできないからJISの検査ができる条件がそろってなけりゃいけないけどな、設計で条件の選定が決まってしまうと温度、湿度のコントロールが必要な標準条件を使わないでも普通の室内の条件がばらついたぐらいでは影響は大きくないんじゃないかな。」

熊さん 「えーと、かかあを選ぶときは選んだかかあによって作ってくれるおまんまは変わるけど、一旦選んでしまうと毎日のおまんまはあんまり変わんねえみたいな話しですかぃ?」

大家さん 「変なたとえだな。まあ、当たらずといえども遠からずと行っておこうかね。」

熊さん 「カカアに言っちゃダメですよ、大家さん。」

大家さん 「で、検査条件が少々違ってもその影響はデータをとれば標準条件の結果への換算が可能だと設計部門は考えたンじゃないか。それで、設計部門の検査設備の場所は他の設計業務に使うようになって使えなくなったし、検査部門に標準条件の整った設備を用意させていないので、右欄のような簡易な検査の手順を書いて製造部門に移管したのだろうって思ってるンだよ。」

熊さん 「大体から、設計、開発部門と製造部門じゃぁ場所も違ってるだろうでンで一緒に使うなんてこたぁ出来ねえんじゃねぇけい?」

(次回に続く) 

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