諦めるのも悪くない、って話

私はアナログからデジタルへの移行期間を生きてきた世代ですが、アナログ寄りのタイプだと思っています。スマホでスケジュール管理なんて無理で、手帳オンリーだし、電子マネーも地元ではほぼ使いません。
デジタルの利便性も知ってるし、そのうちデジタルオンリーの世の中になっていくだろうから、時代についていける程度には利用しているんですけどね。

今は都会に住んでなくても何でも手に入る時代です。地元に店舗がないブランドの洋服も買えるし、LIVEだって配信やライビュがあれば見れちゃう。TV番組を見逃しても無料で見れる。地元で放送されないラジオ番組も聞けるし、CD買わなくたってちょっと気になる程度のアーティストの曲も聞ける。自分の若い頃とは比べものにならないほど便利な世の中です。

でも、それが当たり前になっちゃったからこそ、私たちは諦めることを忘れてしまったのかもしれないな、とも思うのです。全て手に入れなければ気が済まない、というか。
「諦める」のは決してマイナスなことばかりでもないと思うんですよね。
私が高校の頃、世間では裏原ブームが起きました。でも、裏原ブランドの洋服を買えるショップなんて地元にはなかった。だからただただ憧れるだけだったし、親と東京に行ってラフォーレでX-girlの洋服を買った時は感無量だった。雑誌に載っていた洋服がお店に並んでるってだけで感動していました。

今みたいな時代だったらきっとあそこまで感動しなかっただろうなと思います。どうせ買えないと諦めていたからこそ手にした喜びが大きかったんですよね。

 LIVEもそうです。地元には大きな LIVE会場がないから、人気のアーティストなんてなかなか来ない。当時は新幹線も通ってなかったので一番近い大都市でも特急で片道3時間以上かかりました。当然お金もないし泊まりなんて年齢的に無理。ドームツアーに参戦する選択肢がなかった。
だから大学生になって、初めてドームで LIVEを見た時は本当に感動しました。B'zの20年前の渚園でのPleasureも、天候には恵まれなかったものの自分があの渚園にいることが信じられなかった。

時代が進化し、自分も大人になったことで今はいろんな願望を叶えられるようになりました。だけど、アナログ人間の私は、根本がまだ昔のまんまなのかもしれないなと最近思います。
皆そうですが、さまざまな制約があって、行きたくても行けない、欲しくても買えない、みたいなこともままあります。
推しのB'zは人気度を考えるとやっぱり地元公演はなかなかないし、あったとて会場のキャパが小さすぎて激戦でしょうし、花火大会もトレランも参加できない。会場に行かなければ手に入らないグッズもあるし、何ならお二人も登壇する…楽しそうだなぁ、行けるものなら行きたいなぁ、とは思うのですが、だからといって「関東ばっかりずるいよ!会場限定なんてずるいよ!」とは全然思いません。

むしろ会場限定だからいいんだと思います。そこに行かなければ手に入らない、見れないものがあるから会場に行くわけだし、そこに行けないから憧れられるんです。「日本最大級の巨大スクリーンってどんなだろう?さすが幕張メッセだなぁ、都会はすごいな…」と思いを馳せるのは楽しいです。そしていつか行く機会に恵まれた時に「トレランはここでやったのか!!」と感動できる。

配信やライビュがあるのは地方民にとってすごくありがたいけど、それは擬似体験でしかない。やっぱりその場所に行かなきゃわからないこと、感じられないことがあるんですよね。
お取り寄せグルメもいいけど、本場に足を運んで食べる味には敵わない。そういうものだと思います。

諦めて、憧れた分だけ、叶った時の感動は大きくなる。きっと今でこそ連戦している方も、思うように LIVEに足を運べなかった時代、欲しいグッズを買えなかった時代があるはずです。だからこそ、今が楽しい。

だから、今でも私は少しだけ気持ちをセーブして、ほどよく諦めています。たくさん憧れて、たくさん感動するために。

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