街中華の味方
「お好きな席へどうぞ」
言われる前におじいさんは席に着いてメニューを開いていた。カンカンと鍋が鳴る中で火をつけたショートホープをくゆらせると、たちまち煙は不愉快な輪となりカウンターに広がって、取り込み中の箸を拘束してしまう。餃子を食べる客の手が、チャンポンを食べる客の手が、冷やし中華を食べる客の手が、ニラレバ炒めを食べる客の手が、天津飯を食べる客の手が、フライ麺を食べる客の手が、すべて止まって、衰えをみせない煙は忌まわしい猫となって料理人の冠にとりついて右脳を支配し始めた。優雅にまわっていた鍋は完全に運動をやめて、じりじりとチャーハンが焦げ付いていく。ただ一人銀のリングを持つ男だけが煙の影響から逃れ、頃はよしと立ち上がった。
「街中華営業妨害の現行犯で逮捕する!」
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