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純粋なものたち

 アリクイがオオアリクイに道を譲るのをアリクイさがしはじっと見届けていた。戻りライオンがくるにしてはゆとりキツネが涼しい顔でいるのはうそつきザルの言うことだからに違いない。雨まち虫の子を哀れみ交じりの目でみていた犬待たせのお腹は少し大きかった。笑い杉につながれた悟り牛の背にはようなし鴉がくっついている。

「海まで行ってもアリクイさがしはいなかったよ」

 アリシラズがぼやいていたのはまだ夏のはじまりだ。
 箪笥預金を食いつぶした犯人を巡って虫々の鼻息でカーテンは揺らいでいた。金食い虫は餅食い虫とつるんで時食い虫を責め、時食い虫は床食い虫の肩を持ちつつもカーディガン食い虫の存在をほのめかすことも忘れていない。

「お前だろ」

「こんなもん食うか」

「他に食うもんないんか」

「なかったらどうなんだよ」

 食い違う主張に歪んだ空間が削り取られていくことをベランダの猫は敏感にキャッチした。

「食い虫ばっかりやな」

 猫はおじいさんの帰りを待っていた。虫わき畑に行ったきりだ。

 絶滅に向かって進むのが世界だろうか……。
 うれい狼は時計の針を気にかけている。

「どちらへ?」

「まずは吉野家まで」

 コメクイムシのリーダーは足を止めずに答えた。
 まだまだ続きがあるという様子だ。

「いい一日を!」

「そちらこそ!」

「あのものたちはいつも純粋でいいね」

 できすぎ虫のつぶやきを聞きすごすと節蝶はアリシラズを乗せて西の空へ飛び立った。

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