Goto読書で想像旅行を⑤ー施設部門ー  背景を知ってから、出かけてみよう。

こんばんは、robin1101と申します。

今回は、Goto読書シリーズ第5弾 施設部門5作品を紹介します。

何も知らないまま、ふらっと訪ねるよりも背景に何があったのか知ってから訪ねることで、より味わい深く楽しめるかと思います。

結果として、東京が多数になってしまいましたが、ぜひお楽しみください。

美しき愚かものたちのタブロー/原田マハ(国立西洋美術館)

日本に美術館を創りたい。
ただ、その夢ひとつのために生涯を懸けた不世出の実業家・松方幸次郎。
戦時下のフランスで絵画コレクションを守り抜いた孤独な飛行機乗り・日置釭三郎。
そして、敗戦国・日本にアートとプライドを取り戻した男たち――。
奇跡が積み重なった、国立西洋美術館の誕生秘話。
原田マハにしか書けない日本と西洋アートの巡りあいの物語!
日本人のほとんどが本物の西洋絵画を見たことのない時代に、ロンドンとパリで絵画を買い集めた松方は、実はそもそもは「審美眼」を持ち合わせない男だった。
絵画収集の道先案内人となった美術史家の卵・田代との出会い、クロード・モネとの親交、何よりゴッホやルノアールといった近代美術の傑作の数々によって美に目覚めていく松方だが、戦争へと突き進む日本国内では経済が悪化、破産の憂き目に晒される。道半ばで帰国した松方に代わって、戦火が迫るフランスに単身残り、絵画の疎開を果たしたのは謎多き元軍人の日置だったが、日本の敗戦とともにコレクションはフランス政府に接収されてしまう。だが、講和に向けて多忙を極める首相・吉田茂の元に、コレクション返還の可能性につながる一報が入り――。
世界でも有数の「美術館好き」と言われる日本人の、アートへの探究心の礎を築いた男たち。美しい理想と不屈の信念で、無謀とも思える絵画の帰還を実現させた「愚かものたち」の冒険が胸に迫る。

1作目は、東京の上野にある国立西洋美術館が舞台です。原田さんは、主に美術をテーマにした作品を多く書いています。

ちなみにこの作品は第161回直木賞候補にもなりました。

国立西洋美術館の史実を元にした小説ですが、ほとんど実在の人物が登場しているため、これが本当なんじゃないかと思うくらい、リアリティがありました。まるで、「奇跡体験アンビリバボー」を見ているような構成になっていて、惹きつけられました。

上野にある国立西洋美術館は、読んだ当時はまだ来館したことはなかったのですが、ちょっと行ってみようかなとさせてくれました。

今回は画家にスポットが当てられているのではなく、収集家に当てられています。神戸の川崎造船所(今の川崎重工業)の社長で実業家でもあった松方幸次郎を主軸にそれに影響された人たちが主です。松方が遺した絵画がパリにあったため、それを日本に返還しようと奔走しています。

一つ一つの絵画にそこまで心を動かされるとは、自分はあまり美術に詳しくないですが、分かる人には分かるんですねぇ。そこまで奔走する姿には、熱量や感動が伝わりました。一人一人の人物に歴史ありということで、史実を基にここまで話が広がるとは、原田さんの凄さにも感動がありました。そんなに素晴らしい絵画なのか実際に自分も見てみたいなと心が揺り動かされました。

個人的には、後半のフランスとの交渉シーンも詳細に語って欲しかったです。サラッと綴られていたので、消化不良のような感じになってしまいました。

ちなみに、当時この本を読んだ後に美術館で「松方コレクション展」というものが開催されていたので行きました。フィクションであるにしろ、背景を知ってから絵画を拝見したので、とても楽しめました。

現在は一部ですが、展示されているのもありますので、落ち着きましたら、ぜひ訪ねてみてはいかがでしょうか。


いつの空にも星が出ていた/佐藤多佳子(横浜スタジアム)

好きなチームといる喜び。
光輝くスタジアムの幸せ。
本屋大賞受賞作『一瞬の風になれ』の著者が描く
どこまでも熱くて、かぎりなく純粋な、人生と応援の物語!
物静かな高校の先生。
予備校に通う女子高生。
家業の電気店を継いだ若者。
少年野球のピッチャー、洋食店のシェフーー
一見なんのつながりもない人たちを結んでいる、
強くてまっすぐな気持ち!
「何かのために見るんじゃない。見たいから見るんだ」
なにかを心から「好き」でいる、
すべての人へ贈る爽快な感動!

2作目は神奈川県にある横浜スタジアムが舞台です。佐藤さんは「一瞬の風になれ」や「明るい夜に出かけて」など主に若者を主人公にした作品を多く書いています。

横浜ベイスターズ戦の特に印象深かった出来事を背景に、自分自身の人生と向き合いながら、ベイスターズを応援し続けるファンを描いた短編集です。

横浜ベイスターズファンや横浜に詳しい方には、馴染み深い出来事や地名が登場するので、親近感が湧くかと思います。
全4話で、短編ものから中編ものまで、時代は変われども、応援するファン達の情熱は変わらず、熱さや勢いさは伝わってきました。

実際に起きたベイスターズの試合の描写は、もちろん凄いのですが、それに匹敵するくらいそれぞれのエピソードが、ドラマチックに描かれていて、爽やかな風が流れているような青春さを感じました。

ここでは横浜ベイスターズについてですが、野球だけでなく、何かに熱中している人たちを見ると、普段見なかった一面を見ることができるかと思います。
静かだった人がその時だけ大きな声を出したり、暴れたりと本来の純粋さが現れるかと思います。

この作品でも、様々なベイスターズファンが、野球観戦を機に「好き」であるがゆえに応援しています。
その姿は、真っ直ぐで熱心で純粋な人に見えました。

佐藤さんの作品は若者を多く描いていますが、それだけでなく大人の描き方も心は「若者」のような熱心さや爽やかさがあり、全体として青春小説のような読後感がありました。

ベイスターズは、どっちかというと強くないというイメージが個人的にはあったのですが、勝つも負けるも今まで居続けられたのは、地元愛や応援し続けるファンがあるからこそだということをこの作品を通じて感じました。


東京、はじまる/門井慶喜(東京駅、日本銀行)

この男がいなければ、今日の東京の風景は、なかったかもしれない。
日本銀行、東京駅、国会議事堂……経済、交通、そして民主政治という近代国家を象徴する建物を次々と設計した明治の建築家・辰野金吾。理想の首都「東京」を作り上げようとする辰野はまさに維新期ならではの超人だった。しかし、超人であるがゆえの破天荒さは周囲を振り回し……。
下級武士から身を立てるべく学問に励み、洋行して列強諸国と日本の差に焦り、恩師ジョサイア・コンドルを蹴落としてでも日本人建築家による首都作りを目指した男の一代記は、今日の風景が生まれるに至った「東京のはじまり」の物語でもあった。
今日誰もが見慣れた建築物の向こう側に秘められたドラマを知ると、東京を歩くのが楽しくなること間違いなし!
『家康、江戸を建てる』の著者だからこそ書けた、「江戸」を壊して近代「東京」の街づくりを志した日本人初の建築家・辰野金吾の熱い生涯。

3作目は、建築家・辰野金吾の生涯を彼が手掛けた東京駅と日本銀行本店を中心に描かれています。

門井さんは、『銀河鉄道の父』で直木賞を受賞されています。

名前しか存じ上げなかったのですが、読んでみると想像したよりも我が強いといいましょうか、熱心すぎる性格に驚きました。

歴史小説ということで、最初はなかなか言葉や文章が固く難しく、苦戦してしまいました。が、段々と慣れていき、辰野氏の信念を貫く姿、建築物が完成されるまでの度重なる困難、恩師や友人の存在などを知ることができました。

現在でも周りの建物・風景と比較すると異彩を放っているので、当時にしてみたら、それ以上だったと思います。
東京駅を見るのは、何回かありますが、この本を読んで、改めて見ようかなと思いました。

最後は、ウィルスとの戦いということで、この時世と相まって、考えさせられる部分もありました。


歌舞伎座の怪紳士/近藤史恵(歌舞伎座)

祖母にもらった一枚のチケットが
私の人生を変えた
岩居久澄、27歳。
無職。家事手伝い。
将来がちょっと不安ーー。
心のどこかに鬱屈を抱えながら
過ごしていた久澄のもとに、
奇妙なアルバイトが舞い込んだ。
祖母の代わりに芝居を観に行き、感想を伝える。
ただそれだけで一回五千円もらえるという。
二つ返事で了承した久澄は、
初めての経験に戸惑いながら
徐々に芝居の世界にのめり込んでいく。
歌舞伎、オペラ、演劇……。
どれも楽しい。
けれど、久澄には疑問があった。
劇場でいつも会う親切な老紳士。
私が行く芝居に必ず「彼」がいるのは、
なぜだろう?

4作目は東京に歌舞伎座が舞台です。作者は「サクリファイス」を書いた近藤史恵さんです。

「劇場型ミステリー」と表示されていますが、自分の想像とは違い、壮大さはありませんでした。ちょっとしたほんわかミステリーに仕上がっていると思いました。

主人公の成長物語としても楽しめるかと思います。
主人公がなぜ、現在に至ったのか、観劇をしていくうちに少しずつ明かされていきます。

歌舞伎は、高校の時に観ましたが、途中でわけがわからなく、眠ってしまったという記憶があります。なかなか取っつきにくい分野ですが、ここでは、歌舞伎やオペラについて、初めてのイロハが描かれているので、そんなに難しくありませんでした。

観ているときの描写は、作者自身が感じたことをそのまま書いたと思うくらい、詳細でリアル感がありました。

また、全体を通して、一つ一つの文章が、パラパラ漫画のように動きが滑らかで、次に来る行動が的確に描かれていました。そのため、スーッと頭の中で想像しやすかったです。

劇をみるごとに何かしらの事件・出来事が起きます。もしかして伏線?と思いながら、読んでいましたが、特になかったので、ちょっと肩透かし感がありました。

それよりも老紳士のアドバイスにグッと胸に響きました。主人公が友人のことで落ち込みます。そのことを老紳士に言った際の会話が、不意打ちで考えさせられました。発言には気をつけたいと思います。

最後のラストシーンは、暖かい気持ちになりました。最後の一文のその先が気になります。
ミステリーだけでなく、ヒューマンドラマとしても楽しめた作品でした。


空を飛んだペンギンは次にどこへ向かうのか サンシャイン水族館を復活させた現場/小坂義生(サンシャイン水族館)

サンシャイン水族館がV字回復できた理由を現場の声を集めて徹底解明! !
来館者数が低迷し、全館休館という決断を経て2011年に第1次リニューアルオープンした「サンシャイン水族館」。2017年には第2次リニューアルを実施し、過去最高となる来館者数197万人を記録した。サンシャイン水族館がV字回復した背景には、リニューアルだけにとどまらない組織体制を一新した現場改革があった。水族館として生き物の魅力を提供するだけでなく、アミューズメント施設としてエンターテインメント性を追求し、常に新たな企画に挑戦し続ける組織へと生まれ変わったサンシャイン水族館の変革を読み解く。

5作目は、東京の池袋にあるサンシャイン水族館が舞台です。こちらは小説ではなく、ドキュメントとして書かれています。

以前、水族館プロデューサーの中村元さんがテレビやラジオでサンシャイン水族館について語っていて、書籍ではどう語っているのか興味がありましたので購入してみました。

この本では、サンシャイン水族館側から見た今に至るまでのことが述べられています。
最近の会社では、外部の方から招き入れて、プロジェクトに参加している傾向にあります。サンシャイン水族館でも同じ傾向です。ただ、素直に受け入れるはずもなく、現場の人との対立が語られています。

長年現場にいるからこその考えもありますが、その現場での経験が浅いからこその考えも魅力があります。これからの社会、外部の方を積極的に取り入れた方が良いなと、この本を通して思いました。

また、それをきっかけに展示の見せ方・制度の見直し・新たな挑戦など色々な改革が語られていて、参考になるところもあり、面白かったです。

都会やビルの上など条件が特殊だからこそ、成功できたという面もありますが、表面的な変化だけでは何も変わりません。社員同士が共有し、全員が同じベクトルを向くことが大切であることがわかりました。

この本をキッカケにちょっと水族館行ってみようかなと思わせてくれました。


なかなか、このご時世、旅行するのは大変かと思います。なので、事前にこうした作品を読むことで、楽しみが増えるのではないかと思いますし、行った気分にもなるのではと思います。

最後まで、ご覧いただき、ありがとうございました。


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